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NHK経営委員会の同意人事について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

2022.03.17 05:04

 国会は酷かい?浜田議員の委員会での質疑が3日連続のようです。国会は残酷っかい?

というわけで昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり日本放送協会の経営委員会の同意人事案について検討しました。

 その前に日本放送協会経営委員会とは何かを簡単に説明します。日本放送協会経営委員会とは放送法第28条の規定により日本放送協会(以下、NHKという)に置かれる期間です。主にNHKの経営方針や役員の職務執行の監督を行います。令和3年度の経営委員の主な職務は令和4年度の収支予算や事業計画、資金計画の決定、令和2年度の業務報告書や財務諸表の監査などです。現在の委員長は3期目になる森下俊三氏で既に77歳ですから、任期満了の令和6年には79歳です。選挙で選ばれた政治家ではないのですから、準公職とも言えるNHK経営委員に高齢過ぎる人物が3期も任命されて、さらには委員長を務めるというのは聊か疑問に思いますし、心配にもなります。森下氏は元NTT西日本の社長で阪神高速道路会長です。令和元年にかんぽ生命保険の不適切販売問題を報じたNHK番組をめぐり、日本郵政側の抗議を受けてNHK経営委員会が上田良一会長を厳重注意した問題に関して、野党が国会で森下経営委員会委員長代理にヒアリングを行いました。その際に野党側が上田会長を厳重注意にした際の経営委員会の議事録の開示を求めた際に森下氏は「内規によって非公開にしている」という回答に終始し、そのことが物議を醸しました。NHKの情報公開委員会においても経営委員会の議事録を公開するべきだとの結論に至ったのですが、森下氏は「自由な意見や発言に支障をきたす」という意味不明な主張を押し通し議事録の公開には至りませんでした。この問題の背景には経営委員会によるかんぽ生命問題に関する番組内容への編集に干渉する発言があり、それを隠蔽し、委員会メンバーを擁護したのだという憶測が専らでした。このことをマスコミに問題視されながらもその褒賞としてその後の3期目には委員長に就任したのではないかと言われています。そういえば、森友学園事件の際に財務省理財局長の佐川氏が当時の安倍総理と昭恵夫人の関与を明確に否定し続けた後に国税庁長官に昇進しました。後に財務省近畿財務局による多数の公文書の改ざんが明らかになりました。隠蔽行為が評価され昇進に繋がるなどと言うことなかれ、天網恢恢疎にして漏らさず、そうは上手くはいかないのが世の常です。

 随分と本題から逸れてしまいました。ちなみにNHK経営委員会の歴代委員長は国営企業や公社、公営企業の出身者ばかりです。つまり、同類達で受け継がれています。森下氏は電電公社、その前の石原進氏は国鉄、その前の大橋氏は日本銀行、その前の上野氏は電電公社です。NHK経営委員会委員長というポストは身内意識が芽生えた国営企業出身者に対して受け継がれている既得権益なのでしょう。

下記:NHKホームページより

 経営委員会は12名で組織することが放送法第30条で規定されています。任期は3年ですが、12名のうちの5名が今国会の同意人事の採決の対象となっています。5名のうち3名が再任予定者で2名が新規就任予定者です。それでは各人の錚々たる経歴を見てみます。


村田晃嗣(2期中)57歳、委員長職代行者、報酬557万円

親米の国際政治学者です。常勤の同志社大学法学部教授で政治学博士です。芦屋大学の理事でもあります。この方は民間企業への勤務歴は無く、広島大講師を皮切りに現在に至るまで一貫して学術分野での活動をされています。テレビ朝日の「朝まで生テレビ」にも時々出演されていました。NHK経営委員に就任する前には衆議院や参議院の憲法調査会の参考人にも抜擢されていました。また、防衛庁の参与にも任命された実績があります。政治学が専門なだけあって世渡り上手な経歴が見て取れます。というのは、専門分野ではないにも関わらず憲法調査会の参考人になったりしているからです。42歳で同志社大学の学長にも就任したことがあります。政治的な立ち振る舞いの成果だったのではと思います。アメリカの政治の研究家であって、経営実績もなく、経営に携わることもないにも関わらずNHKの経営委員会でどういう役割を担うのか甚だ疑問です。これまでは国際放送の推進とインターネットの活用について発言しているようです。国際放送はNHKではなく政府の管掌だと思います。インターネットの活用はNHK職員にもっと明るい人材がいるでしょう。


大草透(初任予定)66歳、常勤、報酬2206万円

東京大学法学部卒、昭和55年から41年間三菱地所に勤務したエリートサラリーマンの鏡です。主に経理畑を歩いて来たようです。執行役員時は経理部長で、取締役常務執行役員の時も経理部と広報部を管轄していたようです。その後、取締役常勤監査委員を務め昨年に退任したようです。平成25年から平成28年までは公益財団法人財務会計基準機構の理事も務めています。NHKの予算計画を策定するには適任の人物だと思います。ただし、大草氏は常勤での任命予定です。NHKの経営委員会に常勤の委員は必要なのでしょうか。委員会自体は例年23回程度しか開かれていません。実務に携わらない経営委員が毎日出勤して何をするのでしょう。事務方が数名いれば十分に足りるのではないでしょうか。非常勤の会計監査の責任者としての任用が良いと思いました。


明石伸子(1期目中)66歳、非常勤、報酬495万円

日本航空入社後、複数の民間企業を経て独立。社員研修やCS向上のコンサルタント事業を行っているようです。併せて、特定非営利活動法人日本マナー・プロトコル協会の設立に携わり現在は理事長を務めています。NHK経営委員会では人事制度や経営全般、ESG経営についての発言実績があるようです。率直に思いますのは、マナーの専門が巨大企業であるNHKの経営に関わることの意義がわかりません。マナーやCSや人事制度などはもっと現場に近い部署で取り組めばよいことだと思います。「公共放送機関の経営の最高意思決定機関とマナー」というテーマで明石氏の見解を聞かせて頂きたいものです。明石氏は吉野家ホールディングスの社外取締役も務めています。経営ではなく国民の生活向上に関わる活動分野にて手腕を期待したいと思います。


堰八義博(2期目中)67歳、非常勤、報酬495万円

地元の北海道の名家の出身で北海道の経済界を代表する一人です。北海道銀行と破綻した北海道拓殖銀行の合併を主導し、48歳で頭取に就任した逸材です。その後、北陸銀行とも経営統合しほくほくファイナンシャルグループの副社長に就任しました。2010年には財務省北海道財務局国有財産北海道地方審議会会長も務めました。現在は北海道銀行顧問、北海道空港の監査役を務めています。NHKの経営委員会では経費削減やグループ経営の在り方についての発言を行っています。堰八氏は素晴らしいカリスマ経営者の一人だと思いますが、経営委員を既に6年を務めていますので3期目の就任には疑問を抱きます。NHKの経費の削減やグループ企業の統廃合も十分とは言えません。堰八氏は橋本内閣、小泉内閣下での金融ビッグバン以後、銀行持ち株会社の解禁、銀行同士の合併、グループの再編において手腕を発揮した人物です。北海道のカリスマ経営者と呼ばれている堰八氏の6年間の成果としては物足りなさを感じます。出来れば若手経営者にその責を譲って頂きたかったと思います。


榊原一夫(初任予定)63歳、非常勤、報酬495万円

東京大学法学卒の検事。昭和57年から令和3年まで39年間検事を務めてきた刑事裁判のエキスパートです。福岡高等検察庁と大阪高等検察庁の検事長を歴任しています。NHKの刑法に関わる不祥事などは民間企業に比べて決して多く多くありません。委託先企業の不祥事はあるにせよNHK本体に関わる刑事裁判などはごく僅かです。榊原氏は素晴らしい経歴の持ち主ですが、なぜNHKの経営委員会に任命するのか意図が分かりません。経営実績はなく、民間企業での勤務歴もありません。任官公務員の立場で職務を長年遂行してきたに過ぎないのですから経営委員会での役割がまったく見えてきません。令和3年に大阪高等検察庁の検事長を辞職後はアンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問を務めていますが、まだたったの4か月しか経っていません。NHKの事業計画、資金計画などに寄与するとは思えません。弁護士としての実績はなく危機管理等の面での法務的助言についても手腕は未知数だと思います。事業体の経営に利すると思われるふさわしい法律家は他にいると思われます。刑事畑一筋の榊原氏を経営委員とすることには聊か疑問に思います。


 以上、NHK経営委員会の任命候補を見てきました。政府の案ですので与党は賛成、恐らく野党のほとんども賛成するのでこのまま任命されるでしょう。そうはいうものの、後ろ盾は想像がついても、任命の根拠がまるで不明な方もいます。それはNHK経営委員会の委員のみならず多くの公的な委嘱委員に当てはまることです。政治的な動きは政治家の特権ではなく、官僚、学者、経営者などが権益を求めて蠢いているのでしょう。政府案がそのまま進むことも政治的な力学に従ってのことですから止むを得ませんが、余程の案件が残されない限り、出来れば多期に渡る任命は避けた方が良いと思います。1期で結果を求めていく緊張感が必要だと思うからです。経営委員は原則1期にし、委員候補者は公募制にすればよいのではないでしょうか。

 また、NHK経営陣やNHK経営委員会のメンバーや会長が安倍晋三元首相の応援団組織と言われる「四季の会」のメンバーに偏っていると指摘する報道もあります。元NHK経営委員会会長で富士フィルムHDの小森重隆氏や元NHK会長でJR東海社長の松本正之氏、元NHK会長でアサヒビール相談役の福地茂雄氏、現NHK会長でみずほホールディングス出身の前田晃伸氏も四季の会の会員です。前田氏は2008年にNHK経営委員の同意人事の採決で否決された過去があります。当時は衆参で与野党がねじれていましたので否決されました。否決の理由としては前田氏がNHKのメインバンクであるみずほ銀行の頭取であったという関係が懸念されたということでした。悪い意味ではなくそろそろ安倍元首相の流れを一新する時期なのかもしれません。

 さて、NHK党の立花孝志党首はNHKでの勤務も長く、放送法にも明るいことからNHKの最高意思決定機関である経営委員にふさわしいのではと考える人が少なくありません。しかし、放送法第31条にて政党の役員は委員となることが出来ないと規定されています。さらに、禁固以上の刑に処せられた者は委員となることが出来ないと明記されています。立花氏は未だ控訴中であり、刑が確定しているわけではありませんが、いずれにせよ、政党党首である以上は任命の資格要件を満たしてはいませんので経営委員会のメンバーになることは法規上無理なのです。

 有罪判決を受けてしまうとほとんどの公的資格は剥奪、または停止になります。国家公務員や地方公務員でも処分対象となります。医師や弁護士、税理士、教師など多くの仕業で前科が欠格事由となっており業務の制限や免許が取り消されます。ましてや実刑判決を受けると会社の取締役や監査役や執行役の欠格事由になってしまいます。資格や免許を得て業務を行う者や公務員は、資格を得る前提、雇用される前提として法を遵守することが求められます。当然と言えば当然です。法によって社会生活や経済活動などあらゆる生業が成り立っているのです。破っても良い法律などありません。法に疑義や異論があれば法律を遵守した上で立法府において所定の段階を経て改正するか、新たに立法するしかありません。そうであるからこその法治国家なのです。政治家こそが立法に携わる専門家なのです。政治家には最も高い遵法意識が求められることは至極当然のことと言えます。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考:NHKホームページ、経営委員会

https://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/index.html