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A recollection with you

言葉の海 編

2017.11.23 06:55

最近どうにも、納得がいかない。

納得がいかないというよりは、僕の言葉が塩気を含んでいるような気がしてしまって、満足いかないのだ。

もちろん、美味しいコーヒーを淹れるためには、心のバランスが崩れてはならない。

自分でも気付かないようにしていた、つもりだった。


「祐月さん、コーヒー淹れてください」

「え?」

「今日は淹れて欲しい気分なんですー」


そう言ったのは、詩歩だった。


「どれが良い?」

「祐月さんのおススメで♪」

「いつもの、の間違いだろう…」


若干呆れつつ言ってみる。

すると彼女は、意地悪そうに笑った。


「じゃあ、少し待っててね」


僕が取り出したのは、グアテマラ-豆は中深煎り-。

中挽きしてドリップしてから、牛乳にスチームをかけてフォームドミルクをつくった。

最後に、コーヒーとミルクを魔法の配分でコップに注ぐ。


「はい、詩歩」

「いただきまーす」


僕が手渡したのは、カフェオレ。

飲んで一言、彼女はこう言い放った。


「祐月さんが、どこにもいない」

「えっ…」


何も返せなかった。

コーヒーは、嘘をつけない。


あたし、気づいてましたよ。

そう彼女の目が訴えかけてくる。いつから、と聞くのは愚問のように思えた。


「祐月さん。もっとしゃんとしてください!

みんな、祐月さんのコーヒーだから飲むんです。元気になるんです。あたしも、そのひとりなんですから…」


言いながら詩歩は、目に涙を浮かべていた。

やっぱり、言葉を返すことが出来なかったけど、僕が何を言いたいかは伝わったらしく、彼女はそれきり、ゆっくりカフェオレを飲んでいった。


「そう、だよな。僕も、人間だもんな」

「そうですよ」


ボソッと返してくる。

少しだけ塩気がした、気がした。