今月の輝く!リフォームセールス~不動産価値も上げるリノベーションを提案します
今回登場するのは、マンション専門でリノベーション営業を担当する薄葉和久さん。マンションならではのポイントを抑えた提案と、施主の表情まで汲み取る丁寧なヒアリングで、多くの受注を勝ち取っている。
▲リノステージ(東京都文京区)リノベ事業部 課長 薄葉 和久さん(40)
デザイン事務所で店舗設計に従事した後、30歳の時に、中古マンション買取再販事業などを手掛ける「エフステージ」に入社。その後、マンションリノベーション専門の「リノステージ」設立の時、営業職に転身。二級建築士、インテリアコーディネーター。
さりげない仕草や言葉を見逃さない気配り大事に
都内でマンション専門のリノベーションブランド「ARISE(アライズ)」を展開している、リノステージ。
アライズは広さに応じて費用が決まる定額制のリノベーションで、北欧スタイルの「ネオコンフォートヒュッゲ」や、高い機能性や洗練された雰囲気の「アーバンスタイル」など、5つのスタイルから選ぶことができる。
薄葉和久さんは同社に入社する前は店舗の設計をしていた経歴の持ち主。様々なスタイルにマンションを生まれ変わらせるリノベーションにひかれ、エフステージに入社。プランナーとして働いていた。エフステージの施工会社として「リノステージ」が設立された時に異動し、営業職に転身した。
薄葉さんは施主との打ち合わせの時、「お客様がさらっと言った一言」や「さりげない仕草」を見逃さないように気を付けている。
「ちょっと語尾が上がるといった、イントネーションの変化も見逃さないことが、後々重要になってくることがあります」と話す。
例えば、施主夫婦との打ち合わせで、リビングを広くしたいという要望が出たケース。薄葉さんは「キッチンよりもリビングを広く」と夫が言った瞬間の、妻の表情をそっと見ている。万が一、妻の表情が曇り、キッチンが手狭になってしまうことに納得していないように見受けられたら、「リビングを広くというよりも、キッチンをメインにして、リビングを広くするのはいかがですか」とさっと提案内容を変更する。
すると、夫婦二人が納得する形になり、うまく話を進めることができると言う。
▲薄葉さんが手掛けたリノベーション。アーチ型の開口部、ヘリンボーン柄の床など施主のこだわりが詰まった、個性的なデザイン
▲玄関近くにシューズクローゼット(手前)を設置。奥はウォークインクローゼットになっている
「本当に望んでいることは?」 ヒアリングで深堀り
薄葉さんがとても大切にしているのは、初回の打ち合わせだ。施主によっては2〜3時間かけてみっちり話を聞く。
施主のリクエストを聞き出すと、薄葉さんは優先順位を付けていく。「この優先順位の裏を探ることが、プラスアルファの提案につながります」と話す。
ある施主は、ピクチャーレールを付けたいと希望していた。ピクチャーレールは壁面に時計や絵画を飾るのに便利だが、ワイヤーが気になる人もいる。ピクチャーレールを付けたい理由をさらに聞き出すと、壁に時計を掛けたいことがわかった。
「時計を掛けるにしても、マグネットパネルを利用する方法ならワイヤーを使いません。そこで、時計を掛けるいくつかの方法をご提案しました」」と薄葉さん。本当は何をしたいのか。ヒアリングによって深掘りしていくことが、顧客の満足度を上げるキーとなる。
最近は、機能性はもちろんだが、掃除のしやすさを重要視する施主も増えている。
「今、レンジフードの外フレームの折り返しを気にされるお客様が多いですね。ここに油が溜まると、掃除が大変になるからなんです。ですので、そうしたディテールも含めて、丁寧にヒアリングをしてから提案するようにしています」
▲レンジフードの外フレームの折り返し部分
眺望まで気を配り不動産価値を上げる
薄葉さんはリノベ提案をする上で、「眺望」にも気を配っている。マンションも築年数が経っていると、周囲の建物の状況も変わってくるからだ。
新築当時は見通しの良かったリビングでも、近くに建物が建ってしまい、以前のような眺望ではなくなってしまうこともある。
「そうしたケースは思い切って、リビングを書斎にし、別の場所にリビングを移す提案もします。眺望は不動産価値にも関係してきますので、注意するようにしています」
▲夫婦が好きなアンティーク家具に合わせて、リノベーションした例。既存のキッチンに合わせて全体を茶系に統一した
▲上が白系、下は青系のツートンカラーにした寝室。壁紙を決めてから収納家具を購入し、まとまりのある部屋づくりができた
現場調査ではサッシの部品まで確認
定額制リノベを謳っている同社。工事が始まってから変更や追加の工事の発生しないよう、現場調査をきっちり行っている。特に気を付けているのは、パイプシャフトの位置と梁の位置。天井に隠れて見えない中間梁の位置など、細かく確認する。その他、サッシのカギやゴムパッキンの部品についてもチェックし、汚れていたり傷んでいたら交換を提案する。マンションの場合、サッシは共有部扱いになり、取り替えることができない。リノベーションをしてもサッシはそのままになる。
「せっかくリノベーションしたのに、サッシのゴムパッキンにカビが生えていたりしたら、お客様はがっかりされてしまいます。サッシそのものは交換できなくても、戸車を変えるだけでも、サッシの開きがよくなり、使いやすくなります。そうした気遣いが快適に住んでいただくためには大切だと考えています」と薄葉さんは話す。
▲こちらは白系でまとめたリノベーション。床や家具を淡い木目で統一したことで、白が映えるすっきりとしたデザインになった
マンションリノベの総合企業をアピール
薄葉さんの年間の売り上げ目標は2億1000万円。この数字をクリアするために薄葉さんが目指しているのは、相見積もりを勝ち抜き「成約率」を上げることだ。
それには「会社の良さ」を知ってもらうことが有効だと、薄葉さんは考える。「アライズは定額制ですが、間取りを自由に変えることができるのが特徴です。それに自社で工事を行なっており、希望すれば工事の様子をいつでも見ていただけます。10年保証やカスタマー相談室もあるなど、独自の取り組みをしています」
時々施主から『これ、できますか』と、他社のプランを提示されることもある薄葉さん。「中には構造的に実現不可能なプランの場合もありますね。お客様も相見積もりを取りながら『どの会社が本当に信用できるのか』と悩まれています。私達はグループ全体としてこれまで6000戸ものリノベマンションを販売してきたノウハウがあるリノベーション総合企業。それを知ってもらうことが、強みとなっていると感じています」
薄葉さんは「当社を選んで本当に良かったと言っていただけるよう、これまで以上に努力したいです」と話している。
▲薄葉さんの愛用のアイテム。メジャーと三角スケール、そして、リノステージのガイドブックと実例集。これを見てもらい、リノベ後の完成図をイメージしてもらう
リフォマガ2022年1月号掲載