【男2：女2】夜明（兄妹版）
男2：女2／時間目安50分
【題名】
夜明
（よあけ）
【登場人物】
エドガー：ライラの兄
ライラ：エドガーの妹
アリエル：アルバ大聖堂の司教
ラクウェル：アルバ聖騎士団の団長
（以下をコピーしてお使い下さい）
『夜明』作者：なる
https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/32865848
エドガー(男)：
ライラ(女)：
アリエル(女)：
ラクウェル(男)：
001 ライラ：『今から１０００年前、太陽の神ソルと月の神ルナは大きな大きな喧嘩をしました。その喧嘩は生き物全てを巻き込んでの世界戦争へと発展し、長きに渡る大戦は、ソルがルナの胸を一突きした事で終戦。その後、ソルを筆頭に平和な世の中が訪れました。』
002 エドガー：しかし今から１００年ほど前、復活したルナがソルを暗殺した事で世界は真っ暗な闇に包まれ、夜は開けなくなりました、とさ。
003 ライラ：お兄さま。
004 エドガー：建国記なんて読んでどうしたんだ？
005 ライラ：そこの机に置いてあったの。ただの暇潰し。
006 エドガー：そうか。……この話懐かしい。子供の頃よく読んだなぁ。
007 ライラ：この国に住む人なら誰でも知ってる話だもの。
008 エドガー：好きだったなぁ。この太陽の神がかっこよくてさ。
009 ライラ：私はこの話なんか残酷で好きじゃないけどな。
010 ラクウェル：あんまり大声でそういうことを言うんじゃない。反逆者に間違われるぞ。
011 エドガー：父さん！
012 ラクウェル：２人とも揃ってるな。
013 ライラ：お父さまが１番最後だよ。こんな埃まみれの倉庫部屋に呼び出してどうしたの？
014 ラクウェル：２人は大聖堂からお告げが出た事は聞いたか？
015 エドガー：噂程度は。
016 ライラ：『太陽と月の神子（みこ）がこの闇を終わらせる。』だっけ？
017 ラクウェル：あぁ、そうだ。
018 エドガー：それについて俺達は呼ばれたと……。
019 ラクウェル：その通り。今度その、神子を選ぶ選定会を執り行うことになってな。２人には護衛を取り仕切ってもらいたい。
020 エドガー：何故それをここで俺達に？いつも通り呼び出せばよかったんじゃ？
021 ラクウェル：あそこは盗聴の可能性があるからな……。
022 ライラ：どういうこと？
023 ラクウェル：その選定会、少し嫌な感じがするんだ。根拠はないが、何が良くないことが起きる気がする。
024 エドガー：良くないこと……。
025 ラクウェル：とりあえず２人は太陽と月の選定会の護衛を頼む。何が起きても対処出来るようにしておいてくれ。
026 エドガー：了解。
027 ライラ：誰をどこに配置するかは追って話しましょう、お兄さま。
028 エドガー：そうだね。どっちがどっちの護衛を担当するかだけ決めておこうか。
029 ライラ：お兄さまはどっちがいい？
030 エドガー：うーん、どっちでも。
031 ラクウェル：太陽の神子は男子が多くなりそうだと聞いているからエドガーが太陽を担当する方がいいかもしれないな。
032 エドガー：了解、じゃあ俺が太陽で、ライラが月だね。
033 ライラ：了解。
034 ラクウェル：選定会に参加する候補者が決まったら連絡を貰う手筈になっている。それまでに護衛につくメンバーも決めておいてくれ。……また追って連絡する。
035 アリエル：ラクウェル。
036 ラクウェル：……なんだよ、ノックくらいしろ。
037 アリエル：いること気付いてたくせに。
038 ラクウェル：（ため息）……何の用だ。
039 アリエル：選定会の事で。……教皇様が神からのお告げを民衆にも分かるようにして下さったのであなた方にも。
040 ラクウェル：司教のお前がわざわざこれを？
041 アリエル：ええ。
042 ラクウェル：どうせこちらの状況を偵察しに来たんだろ。
043 アリエル：そんなことは無いわ。
044 ラクウェル：こちらから出せる情報はもう提出済みだ。お前の大好きな教皇様が今頃書類を確認中だろうよ。
045 アリエル：そう。……護衛の指揮は誰が取るのかしら？
046 ラクウェル：帰って確認しろ。既に連絡してある。
047 アリエル：いいじゃない、そのくらい。私達の仲じゃない。
048 ラクウェル：二度手間は嫌いだ。
049 アリエル：人の名前を言うのも面倒ってどういう事よ。それでよく団長が務まるわね。
050 ラクウェル：これでも仕事は出来るんでな。
051 アリエル：はぁ……ねぇ、教えて頂戴。指揮官は誰？
052 ラクウェル：何故そんなに知りたい？邪魔でもする気か？
053 アリエル：まさか。選定会の成功はこの世界を闇から救う為に絶対必要なもの……教皇様も神子に会えるのを楽しみにしてるし、壊すようなことはしないわ。
054 ラクウェル：なら帰って教皇様に聞くんだな。
055 アリエル：（ため息）……ねぇラクウェル、どうしてそんなに冷たくするの。私が何をしたと言うのよ。
056 ラクウェル：……何もしてないと？
057 アリエル：えぇ。少なくとも貴方には。
058 ラクウェル：……帰ってくれ。お前とはもう話したくない。
059 アリエル：何よ。私達仲が良かったじゃない。……これをジゼルが知ったら……（※被せ）
060 ラクウェル：（※被せ）お前がその名を口にするな！！！
061 アリエル：ふふ。
062 ラクウェル：何がおかしい。
063 アリエル：熱くなっちゃって。まだ愛してるのね、ジゼルの事。
064 ラクウェル：……。
065 アリエル：残念だったものね……まさか……。
066 ラクウェル：うるさい！出て行け！！！
067 アリエル：そんなに声を荒らげなくても聞こえるわよ。じゃあね。
068 エドガー：ねぇライラー。
069 ライラ：何？
070 エドガー：俺達が見てきた空の色が変わるなんて信じられる？
071 ライラ：うーん。まだ半信半疑かなぁ。
072 エドガー：今まで生きてきて、空の色が変わる日が来るなんて思いもしなかった。
073 ライラ：そうだね。私も。
074 エドガー：どんな色だと思う？
075 ライラ：うーん、お兄さまはどう思う？
076 エドガー：俺は白だと思う。
077 ライラ：どうして？
078 エドガー：黒の反対は白だろ？
079 ライラ：あはは！なるほどね。お兄さまらしい。
080 エドガー：じゃあライラは何色だと思う？
081 ライラ：私は青色だと思う。
082 エドガー：どうして？
083 ライラ：童話の挿絵の空はいつでも青色だから。
084 エドガー：たしかに。それはそうだね。
085 ライラ：童話は私達が生まれるよりもっと、ずっと前に書かれてるものばかり。中にはまだ夜が明けていた頃に書かれたものもあるんじゃないかな。
086 エドガー：ふふ。
087 ライラ：何か面白い事言った？
088 エドガー：いや。俺の妹は頭がいいなって。兄さまは誇らしいぞ、このこの！
089 ライラ：うわっ！ちょっと！やめてよ！
090 エドガー：おりゃおりゃ〜！！
091 ライラ：ちょっと、お兄さま！やめてよ！……もう、おしまい。
092 エドガー：……ごめんね。髪ぐちゃぐちゃにしちゃった。
093 ライラ：ほんとよ。もうしないでね。
094 エドガー：ごめんごめん。
095 ライラ：お兄さまがそう言うなら許す。
096 エドガー：ライラのそういうところ、直した方がいいと思う。
097 ライラ：どういうところ？
098 エドガー：優しすぎるところ。
099 ライラ：そんな事ないよ。
100 エドガー：あるから言ってる。兄さまの言う事が信じられない？
101 ライラ：そういうわけじゃないけど。
102 エドガー：ほら、そういうところ。
103 ライラ：今日のお兄さまはイジワルね。
104 エドガー：そう？気のせいだよ。……あの丸い月が見えなくなるのかぁ。ちょっと寂しいかも。
105 ライラ：もし本当に夜が明けるなら、この世界はどうなっていくんだろうね。
106 エドガー：電力問題とか解決するかもな！
107 ライラ：今よりも快適になるかもしれないね。
108 エドガー：でも太陽の光に人間は耐えられるのかな？
109 ライラ：陽の光で人間が溶けるとでも？
110 エドガー：分からないだろ！陽の光がどれだけ強いかも分からないのに！
111 ライラ：まぁそれはそうね。
112 エドガー：光が強すぎたら世界は真っ白になるかもしれないな。その時はどうしよう、ちゃんと生活できるのかな。
113 ライラ：……ふふ。
114 エドガー：何笑ってんだよ。
115 ライラ：いや、お兄さまにしか出来ないね、その発想は。
116 エドガー：そんな事ない。
117 ライラ：ある。
118 エドガー：ない。
119 ライラ：いや、ある。
120 エドガー：なーい！
121 ライラ：あるよ。ある。『陽の光が強すぎたらどうしよう！』なんて今から考えてる人はほとんどいないよ。
122 エドガー：だって。
123 ライラ：だって何？
124 エドガー：分からないだろ。何が起きるのか。
125 ライラ：そうだね。私にも分からない。この世界の誰も、まだ分からないよ。
126 エドガー：……ねぇ、ライラはどう思う？
127 ライラ：さぁね。……私はどっちでもいいかな。お兄さまと一緒なら何でも。
128 エドガー：何だそれ。……父さんも入れてあげないと、後でいじけるぞ。
129 ライラ：そうね。お兄さまと、それからお父さまと。2人がいれば私は何でもいい。
130 エドガー：そう。とても、ライラらしい。……さーて、そろそろ本部に戻ろうか。
131 ライラ：うん。少しは気が晴れた？
132 エドガー：とっても。
133 ラクウェル：さて、選定会は明日な訳だが……。
134 エドガー：顔が暗いけど何かあった？
135 ラクウェル：大聖堂のやつら、歴史を繰り返す気でいるらしい。
136 エドガー：どういう意味？
137 ライラ：まだ私達が小さい頃に同じような事があったの覚えてない？
138 エドガー：そんなことあったな……確か、その時に選ばれた神子は2人ともまだ幼かったよね？
139 ラクウェル：これは表に出ていない話だが……その時に神子は教皇が勝手に決めたらしいんだ。
140 ライラ：神に選ばれたわけではない、と。
141 ラクウェル：あぁ。神からのお言葉は頂けず、致し方なかったと。
142 エドガー：その子供達の御家族はなんと？
143 ラクウェル：身分の低い家の子供だったから、適当に言いくるめたんだろうな。
144 エドガー：そんな……酷い。
145 ライラ：今回もそうなる可能性があるって言うの？
146 ラクウェル：分からない。反応を見ている限りお告げがあったのは本当らしい。が、選定会で選ばれる神子が本物の神子なのかは分からない。
147 エドガー：それをどう見分ける？
148 ラクウェル：どうやら、神子には太陽と月の紋様（もんよう）が現れるらしい。どこにどう出るかは知らないがな。
149 ライラ：前任の神子にはその紋様は出なかったんだよね、その辺はどうしたの？
150 ラクウェル：聞きたいか？
151 エドガー：その聞き方、凄く嫌な感じ。
152 ラクウェル：その方法が最悪だからな。……焼印をしたんだと。
153 ライラ：っ……！
154 エドガー：最悪。
155 ラクウェル：諜報部からの情報だから間違いはないだろう。
156 エドガー：そんな事絶対止めないと……！
157 ライラ：でも、選定会の進行は大聖堂がやる事になってるよね。もしそうなったとしても私たちが確認する時間はないんじゃ？
158 エドガー：確かに……。分かりやすく光りでもしてくれたらいいのに。
159 ライラ：光る？
160 エドガー：こう、天から光が指すみたいな。
161 ラクウェル：それはたしかに分かりやすくていいが……。
162 エドガー：本にそう書いてあったんだよ！
163 ライラ：……お兄さまそれどこの本で見たの？
164 エドガー：ライラまでバカにするのか！2人とも酷いなぁ。
165 ライラ：いや、真面目に聞いてるの。それどこで見た？
166 エドガー：絵本だったと思うけど。絵で見た、と思う。
167 ライラ：うーん。
168 ラクウェル：まぁ絵本だから、信憑性は薄いだろうな。
169 ライラ：紋様が浮かぶっていうのも本当かどうか……。
170 エドガー：まぁ明日になってみれば分かるでしょ！……父さん、明日、本当に夜が明けるの？
171 ラクウェル：どうかなぁ……。
172 ライラ：父さん？
173 ラクウェル：……お前達とこの真っ黒な空が明けるのを見るのが楽しみだよ。
174 エドガーＮ：選定会当日。教皇の名の元に集められた子供達が太陽の間（ま）と月の間に揃っていた。奇妙にも、太陽の間には金の、そして月の間には黒の髪を持つ子供が集められていた。
（間）
175 アリエル：聖騎士団長。
176 ラクウェル：あ？なんだぁ、見て分からないのか俺は……はぁ、お前か。
177 アリエル：そんな反応しなくてもいいじゃない。
178 ラクウェル：うるさい。何の用だ。
179 アリエル：聖騎士団の様子を見てこいと。
180 ラクウェル：お前達みたいに暇じゃないんでな。こちらは問題ない。持ち場に戻れ。
181 アリエル：相変わらず冷たいわね。……聞いたわよ。エドガーとライラが指揮を執るらしいじゃない。……ふふ、結局、あの子と同じ道を辿るのね。
182 ラクウェル：あぁ。あいつらは俺の右腕だ。ジゼルと同じように優秀な騎士だよ。
183 アリエル：ジゼルが聞いたらきっと泣いて喜ぶわよ。あの子、騎士のくせに涙脆いから。すーぐ泣いてたものね。
184 ラクウェル：……司教様。
185 アリエル：魔物を前にして怖い〜って泣いてたりもしてたかしら。それでもってとても感情的。生き物全てを愛してた。
186 ラクウェル：……アリエル。
187 アリエル：……なに？ふふ。
188 ラクウェル：……ここでお前を怒鳴りつけたくはない。
189 アリエル：そんな怖い顔しないで。今日はおめでたい日なのよ。その眉間のシワを無くす努力くらいしてほしいものだわ。
190 ラクウェル：お前が煽って来なければこうはなっていない。
191 アリエル：あら、そうだったの。それは失礼。教皇様には問題なく進んでいるとお伝えしておくわ。じゃあね。
（間）
192 ラクウェル：エドガー、ライラ。どんな様子だ？
193 エドガー：今のところ太陽の間は問題なし。
194 ライラ：月の間も同じく。
195 ラクウェル：何かあったら直ぐに伝えてくれ。
196 ライラ：了解。
197 エドガー：選ばれた神子は俺達が保護者と一緒に教皇様の元に連れていくのでいいんだよね？
198 ラクウェル：そういう手筈になっている。
199 ライラ：その間に保護者に紋様を確認してもらうと。
200 ラクウェル：その通り。
201 エドガー：……何事も起きなければいいけど。
202 ライラ：きっと大丈夫。
203 ラクウェル：そのために我々がいるからな。……さ、時間だ。
（間）
204 ライラＮ：選定会が始まり、何事もなく予定通り進んでいた。教皇が神に祈りを捧げ、そこで聞こえたお告げを皆に伝える……はずだった。
205 アリエル：（小声）さぁ、神子はだれ？
206 ライラＮ：闇に染った空が、赤く光り出したのだ。
207 エドガー：ちょっと……何、あれ。
208 ライラ：空が赤い……。
209 ラクウェル：お告げは本当だったってことか？どうなってんだ。
210 ライラＮ：誰も叫ばず、誰も動かず、皆（みな）ただ唖然と空を眺めていた。
211 アリエル：さぁ、誰が神子なの……！
212 ライラＮ：赤く染った空から、２つの光の線が伸びた。その先にいたのは。
213 ラクウェル：エドガー！ライラ！
214 エドガー：何これ、なんで、光って……？
215 ライラ：お兄さま！
216 エドガー：ライラ！……くっ……！
217 ライラ：痛っ……！
218 アリエル：ふふ……あはは……！あの子達が本物の神子！
219 ラクウェル：聖騎士団に告ぐ。子供達を皆両親の元に無事届けろ。指揮権は全て副団長に。……エドガーとライラは別室に。……（副団長に向けて）すまない、あとは頼む。
（間）
220 ライラ：お兄さま！大丈夫？
221 ラクウェル：ライラ。お前もちょっとじっとしてろ。
222 エドガー：そうだぞ、ライラ。あと、頭に響くから叫ばないで。
223 ライラ：ご、ごめんなさい。
224 ラクウェル：それで、２人とも調子はどうなんだ？
225 エドガー：まだ目の奥が痛い気がするけどそれ以外は平気！今からでも訓練できる。
226 ライラ：私はもう何とも。
227 エドガー：強がっちゃって。
228 ライラ：何よ。
229 エドガー：本当はまだ痛いくせに。
230 ライラ：私は大丈夫だって、
231 エドガー：手、さすってる。
232 ライラ：あっ、これは、その。
233 ラクウェル：まぁ２人とも今日のところはこの辺にしておけ。今週は安静にな。任務からも外す。
234 エドガー：いや、と言いたいところだけど、俺が任務に就いたら絶対にどこかの誰かさんもついてきちゃうだろうし。
235 ライラ：そんな言い方しなくてもいいじゃん。
236 エドガー：いい機会だし、街にでも行こうかなー。
237 ライラ：私も行っていい？
238 エドガー：いいよ。
＜アリエルがドアをノックする＞
239 アリエル：……ふふ。失礼します。
240 ラクウェル：司教様が何の用だ。
241 アリエル：私は神子様に会いに来たまで。それが仕事、ですので。
242 ラクウェル：それで？要件は。
243 アリエル：まずは、神に選ばれたお二人にお会い出来光栄です。私はアルバ大聖堂司教のアリエルと申します。以後お見知り置きを。
244 ライラ：え、えぇ。
245 エドガー：もうご存知かもしれませんが、俺はエドガー。こちらは妹のライラ。……よろしくお願いします、アリエルさん。
246 アリエル：ふふ、ソル様はご立派でいらっしゃいますね。それに比べてルナ様は……ふふ。今後お二人には神子として、儀式のためのお勉強をして頂きます。私が担当致しますので何かございましたらお申し付けくださいませ。授業の開始時期はまた追ってお伝え致します。
247 エドガー：ちょっと待ってください。俺達には騎士としての任務があります。それは……。
248アリエル：儀式以上に大切な事がございますか？
249 エドガー：え？
250 アリエル：世界を救うための儀式以上に大切な事はこの世にございません。正しく儀式を行うために必要な知識をお教え致します。……納得はしていないようですね。
251 エドガー：……まぁ。
252 アリエル：そうですね……聖騎士団のお仕事は民を魔物から守る事、そして街の治安を守る事でしょう？授業はこの国、いいえ、この世界の人々を救う任務とお考え下さいませ。
253 ライラ：いい様に言ってるだけじゃない。
254 アリエル：そんなことはございませんよ。
255 ライラ：夜が明けるのはいいけれど、その後はどうするの？どうなるかも分からないのにどうして救う事と言いきれるのかしら。
256 アリエル：……はぁ？何を仰っているのかよくわかりませんね、ルナ様。貴方は神子。我々の言う通りになさったら宜しいのです。エドガー様……いえ、ソル様。これからよろしくお願い致しますね。それでは。
＜アリエルが部屋を出る＞
257エドガー：……はぁ？何だあれ！感じ悪！
258 ライラ：お父さま、あの人何者？
259 ラクウェル：あいつは元々聖騎士団に所属していてな、俺の同期なんだ。大聖堂に入ってからあいつはおかしくなっちまった。
260 エドガー：教皇に洗脳でもされたんじゃないか。
261 ラクウェル：かもな。お前たち、あいつには気をつけろよ。何を吹き込んでくるか分かったものじゃない。
262 ライラ：私は大丈夫だけど、お兄さま気をつけてね。
263 エドガー：俺だって大丈夫だ。
264 ライラ：どうだか。
265 ラクウェル：２人ともそこまでにしておけ。ほら、部屋に戻ってゆっくり休め。
266 エドガー：父さんは？
267 ラクウェル：俺はまだやらないといけないがあるからな。もう少し頑張ってくるよ。
268 ライラ：私手伝おうか？
269 ラクウェル：いや、今のお前の仕事は休む事だ。兄さんを頼んだ。
270 ライラ：了解。お兄さま行きましょ。
271 エドガーＮ：その後、神子であるエドガーとライラは会う事を禁じられ、司教達による儀式のための授業が始まった。ほんの少し顔を合わせるだけでも、という２人の願いが聞き入れられる事は無く、早半年が経とうとしていた。
（間）
272 アリエル：さて……それでは最後の授業を始めていきましょうか。
273 ライラ：案外あっという間ですね。
274 アリエル：ルナ様は覚えがいいですから、予定よりも早く終わったのですよ。
275 ライラ：そう。いい加減ライラって呼んでくれない？
276 アリエル：貴方様は月の神に選ばれし神子。早く元の名はお捨て下さい。
277 ライラ：いやよ。……それで、最近お兄さまは？
278 アリエル：ソル様はそれはもう太陽の神子に相応しい立派なお方ですよ。ちょっと時間がかかってはおりますが、立派に儀式をこなしてくれると信じております。
279 ライラ：お兄さまの事だから仕事は立派にこなすに決まってるでしょう。……いい加減会わせてくれないかしら？
280 アリエル：それはなりません。ソル様とルナ様は相容れぬ神達。儀式を正しく行う為に、お２人は会ってはいけないのです。
281 ライラ：はぁ……そればっかり。
282 アリエル：ルナ様は未だ神の決定に納得がいっていないようですね。
283 ライラ：当たり前でしょう。
284 アリエル：そうですか。……この左手の紋様、美しいですね……こんなに美しいというのに納得がいかないだなんて……ワガママだ事。
285 ライラ：は？
286 アリエル：ふふ。すぐカッとなるところもそっくりだとは。……まぁ納得がいっていようがいまいが、我々には関係がない事ですので。
287 ライラ：皆（みな）を救う場所である大聖堂の名が聞いて呆れる。
288 アリエル：まぁ、怖い。……さぁ、本日の授業は儀式についてお話致しますね。儀式について以前少しお伝えしたと思うのですが、それは覚えていらっしゃる？
289 ライラ：勇気を持って凶悪な敵に立ち向かい、今なおこの国に住む人々に勇気を与え続ける偉大なる太陽神ソルの名の元にルナを封じる事、でしたっけ？
290 アリエル：素晴らしいですね。歴代の月の神子はルナの様に聡明な方が多かったそうですから、貴女様はやはりルナの名を継ぐのに相応しいお方なのかもしれませんね。
291 ライラ：はいはい。司教様にお褒め頂き光栄ですわ。それで？儀式について教えて下さるんでしょう？
292 アリエル：ええ。先程ルナ様が仰った通りです。我々は太陽神の代わりにこの夜を終わらせなければならないのです。……そうですね、まずは過去の儀式についてお話致しましょうか。前回の儀式は……確か１０年前でしたかね。その時もお告げがあり、今回のように選定会が行われました。そこで選ばれたのはまだ幼い子供達。教育に長い時間がかかってしまいましてね。儀式が行えたのはそれから２年後の事でした。
293 ライラ：その神子達はどうなったんです？
294 アリエル：地方の聖堂に送られたと聞いていますがそれからはさっぱり。
295 ライラ：紋様はどこに出ていました？
296 アリエル：ソル様は左手、ルナ様は背中に。
297 ライラ：貴女達がそこに紋様を入れた、の間違いでしょう。
298 アリエル：……はい？
299 ライラ：前任の神子に紋様はなかった。そこで貴女達は選んだ子供達を神子にするために焼印をした。……違いますか？
300 アリエル：……はぁ。ご存知でしたか。
301 ライラ：これでも聖騎士団の中ではそれなりに偉いもので。
302 アリエル：今回はソル様もルナ様も紋様が既にありますから……焼かずに済みますね。
303 ライラ：焼印は光らないものね。
304 アリエル：本物の紋様を見た事がある人間などこの世にいないですから。我々がそうだといえば、たとえ偽りだとしてもそれは本物になるのですよ。
305 ライラ：最低ですね。
306 アリエル：なんとでも。……話を戻しますと、前任の神子は建国記を再現する「振り」をしました。言わばただの演劇でした。
307 ライラ：そんなに勿体ぶらないで下さい。
308 アリエル：そうですか。では言葉を選ばずはっきり申し上げます。ルナ様、貴女には死んで頂きます。月の神と同じ道を辿ってこの世界をお救い下さい。
309 ライラ：……え？
310 アリエル：貴女様は、兄であるソル様にこの胸を一突きされて死ぬんです。
311 ライラ：お兄さまに？……私が？
312 アリエル：ええ。その通りです。
313 ライラ：そこまでする必要はあるの？
314 アリエル：前回は殺す振りをして頂いたのですが、この通り夜は明けておりません。今回は前回と違い紋様が浮かび上がった……神の代わりとなるあなた方が神と同じ行動を取れば、この闇を終わらせられると我々は信じております。
315 ライラ：……馬鹿げてる。
316 アリエル：ルナ様。……多少の犠牲は付き物、ですよ。騎士団でもそう教わったでしょう？
317 ライラ：……そんなの教わらないわ。そんな犠牲、あってはいけない。
318 アリエル：ふふ。貴女様がどう思っても、未来は変わりませんから。
319 ライラ：そんな事が許されると思わないで。
320アリエル：教皇様の言うことは絶対、ですよ。
◇
＜扉を勢いよく開ける＞
321 ラクウェル：アリエル！
322 アリエル：どうしたの？そんなに大きな声で。眉間にシワがよってるわよ。
323 ラクウェル：ライラから聞いた。歴史に則って儀式を行うなんて、おかしいと思わないのか？
324 アリエル：なんの事かしら。
325 ラクウェル：エドガーにライラを殺すよう指示したんだろう？
326 アリエル：その言い方は酷いんじゃない？私は、狂った月の神を封印するのはソル様のお役目です、とお伝えしただけ。
327 ラクウェル：それが、ライラを殺すという意味だろう。
328 アリエル：はぁ……だったら何だって言うの？
329 ラクウェル：お前……殺すまでしなくていいだろう。
330 アリエル：そうね。……それでこの夜が明けるのなら。
331 ラクウェル：ライラの犠牲で夜が明ける保証は？
332 アリエル：そんなものは無いわ。
333 ラクウェル：では……！
334 アリエル：この夜が明けないことで人間が窮地に晒されているの。疫病はどんどん拡がり、免疫力は下がり続けている。それも全てこの月明かりのせいだと言うのに！
335 ラクウェル：全てを月のせいにするには都合が良すぎないか？
336 アリエル：教皇様がそう仰っているのよ？疑う必要があって？
337 ラクウェル：お前は教皇が人を殺せといえば殺すのか。
338 アリエル：ええ。
339 ラクウェル：正気か？
340 アリエル：教皇様の仰ることだもの。何か意味があってのこと。……それなら私は教皇様の言う通りにする。
341 ラクウェル：お前はそんなではなかったはずなのにな。
342 アリエル：そう？そんなに変わらないと思うわ。……昔から、ジゼルの事は嫌いよ。
343 ラクウェル：なぜ突然ジゼルが……。
344 アリエル：今のルナ……そう、ライラ。あの子、ジゼルの子でしょう？どこかで見たことがある目だなと思ったのよ。
345 ラクウェル：何故それを。
346 アリエル：ただの勘よ。まぁ、今の貴方の反応で私の勘が当たっていた事が分かったわけだけど。
347 ラクウェル：それを知って何になる。
348 アリエル：私達の意思は変わらない。といえば伝わる？
349 ラクウェル：お前なのか。
350 アリエル：ふふ。
351 ラクウェル：教皇に、儀式は歴史通りにと進言したのは、お前だったんだな。
352 アリエル：大正解。知ってたの？
353 ラクウェル：教皇にそう進言した司教がいた事は聞いた。が、誰かまでは特定が出来なくてな。
354 アリエル：ふふ。だって考えてみて？貴方の息子がソル様に選ばれ、ジゼルの娘がルナ様に選ばれた。貴方の息子が、ジゼルの娘を殺す事で、この長い長い夜が明ける。……最高のシナリオじゃない？
355 ラクウェル：そこまでジゼルが嫌いか。
356 アリエル：ええ、嫌いよ。大嫌い。……でも、今は感謝してるわ。あの子が産んだ実の娘が、私達……いや、教皇様の願いを叶えて下さるんだもの。きっとあの子も喜ぶわよ。人の役に立つのが大好きだったじゃない？
357 ラクウェル：……あぁ、そうだったな。
358 アリエル：それで命まで差し出したものね。……親友の貴女を守れてよかった、って。いい顔しちゃって。
359 ラクウェル：なぜお前を護ったのか。ジゼルに聞きたいものだな。
360 アリエル：そうよね、貴方はジゼルが大好きだったものね。……ほんと残念。
361 ラクウェル：……本当に、儀式の内容を変えるつもりはないんだな。
362 アリエル：えぇ、変えない。
363 ラクウェル：そうか。……騎士団長として、教皇様に儀式の内容を変えるよう申立てをさせてもらう。
364 アリエル：お好きなように。
365 ラクウェル：……生き残ったのがお前では無くジゼルだったら良かったのに。
◇
366 エドガー：父さん！俺、どうしたらいいんだよ！
367 ラクウェル：すまない、エドガー。俺の力がもっとあれば……。
368 エドガー：俺本当にライラを……そんな事出来るわけないだろう！
369 ラクウェル：どうにか回避出来る方法を探そう。だから……。
370 エドガー：司教様に言われたんだ！ちゃんと儀式を行わないと夜は明けないって。そうしないと……どっちみちみんな死んでしまうって。前の神子は儀式の後、殺されたから。
371 ラクウェル：エドガー……。
372 エドガー：俺も死にたくはない……でも、だからってライラを殺すなんて！……そんな事出来ない……。
373 ライラ：……お兄さま？
374 エドガー：ライラ……どうして……？
375 ライラ：２人の声が聞こえたから来ただけだけど……。
376 エドガー：会うのは禁じられてるはずじゃ……。
377 ライラ：あぁ……最後だろうから会ってもいいって。
378 エドガー：……そう……ごめん、ちょっと頭冷やしてくる。
＜エドガーが部屋から出ていく＞
379 ライラ：あ、ちょっと、お兄さま！
380 ラクウェル：……ライラ、ちゃんと話してこい。
381 ライラ：……うん。
（間）
382 ライラ：……お兄さま？
383 エドガー：何？
384 ライラ：こっち向いて。
385 エドガー：今ダメ。
386 ライラ：泣いてるから？
387 エドガー：顔ぐちゃぐちゃだから。
388 ライラ：今更でしょ。ほら、こっち向いて。……あはは、本当にぐちゃぐちゃ。
389 エドガー：だからそう言ったじゃん。
390 ライラ：ごめんね。ほら、涙拭いて。
391 エドガー：うん……。
392 ライラ：凄い、お兄さまの紋様綺麗だね。ちゃんと見たの初めてかも。
393 エドガー：ライラの紋様もキラキラしてて綺麗。……なんで俺達だったんだろう。
394 ライラ：なんでだろうね。
395 エドガー：せめて、ルナに選ばれたのがライラじゃなかったら……。
396 ライラ：今更そんな話をしても変わらないよ。
397 エドガー：だって。俺お前を……！
398 ライラ：ねぇお兄さま。前にここで空について話したの、覚えてる？
399 エドガー：う、うん。
400 ライラ：その時はさ、月が無くなるの寂しいって言ってたじゃない？……今は？
401 エドガー：月なんてどうでもいい。月も太陽も、なんでもいい。
402 ライラ：私はね、結構楽しみなんだ。
403 エドガー：……え？
404 ライラ：だって、私だけがこの月を沈めることが出来るかもしれないんだよ？……それってさ、ある意味英雄じゃない。
405 エドガー：……そうだね。
406 ライラ：月が沈んだ空も、夜が明けた空も、私は見れないんだけどね。
407 エドガー：……そんな事言うなよ。
408 ライラ：あはは、ごめんね、泣かせてばっかりだ。
409 エドガー：嫌だな。
410 ライラ：正直だね。お兄さまらしい。
411 エドガー：どうしてライラはそんなに割りきれてるんだ？
412 ライラ：仕方ないかなって。そういう運命だったのよ。私も、お兄さまも。それに、神子に選ばれたって事は、私達本当に神様の血を引いてるのかもしれないよ。
413 エドガー：時々子供っぽくなるよね。
414 ライラ：そう？お兄さまの前だけよ。
415 エドガー：そういうところも、ライラらしい。……本当に神の血を引いてるなら、俺達が神になれたら良かったのに。
416 ライラ：どういうこと？
417 エドガー：俺達なら、世界をこんなふうにしないだろ。俺達仲良いし。
418 ライラ：そうかもしれないね。……でもさ、結局、ソルもルナもなんで喧嘩したかなんて今の私達には分からないじゃない？だから、私達が神になっても状況は変わらないかもしれないよ。
419 エドガー：……そっか。そんな考え方もできるんだね。
420 ライラ：そう。物は考えようだよ。
421 エドガー：……怖くはない？
422 ライラ：怖くないと言ったら嘘になる。でも、それより。
423 エドガー：うん？
424 ライラ：変わった世界に立ち向かっていくお兄さまが見れないのが残念。
425 エドガー：ちゃんと見てて。
426 ライラ：うん。
427 エドガー：見ててくれなきゃ怒るから。
428 ライラ：うん。
429 エドガー：……一緒に見たかったな。夜明け。
430 エドガーＭ：ライラの困った顔を見たのは恐らくこれが最後だった。
431 ラクウェル：……エドガー。
432 エドガー：どうしたの？父さん。
433 ラクウェル：その……すまない、父さんの力不足で。
434 エドガー：ううん。父さんがずっと掛け合ってくれてた事は知ってるよ。……ありがとう。
435 ラクウェル：しかし……！
436 エドガー：大丈夫。……俺達は大丈夫だから。
（間）
437 アリエル：ご準備はいかがですか？ルナ様。
438 ライラ：大丈夫よ。
439 アリエル：そのお召し物よくお似合いで。
440 ライラ：それはどうも。これを作ったのは？
441 アリエル：司祭が作っておりますよ。
442 ライラ：そう。……素敵な刺繍をありがとう、と伝えておいて。
443 アリエル：かしこまりました。……覚悟なさったのですね。
444 ライラ：えぇ。……兄を死なせる訳にはいかないので。
445 アリエル：……そうですか。素敵な兄妹愛だこと。
446 ライラ：命差し出す理由には十分じゃない？
（間）
447 ラクウェルＮ：儀式の為に用意された部屋は神殿の真ん中に位置するステンドグラスの前だった。後ろには太陽の神ソルが、月の神ルナに剣を突き立てる様子が描かれている。……そこに、神と似た服を纏った神子が現れた。
448 アリエル：両者神の前で祈りを。
449 エドガー：太陽の神ソル。我は貴方の遺志を受け継ぐ神子エドガー。貴方の勇敢さを私に、そして正義をこの剣にお与え下さい。
450 ライラ：月の神ルナ。我は貴方の遺志を継ぐ神子ライラ。貴方の聡明さと膨大な力を私にお与え下さい。
451 アリエル：……さぁ、ルナ様。台座の上に。……ソル様。我らの世界をどうか、お救い下さい。
452ラクウェル：すまない、２人とも……。
453 エドガー：（緊張で手が震えている）
454 ライラ：お兄さま。大丈夫よ。
455 エドガー：ちょっと、ライラ。何して。
456 ライラ：……ここ。ここに思いっきり刺して。
457 エドガー：……出来ない。
458 ライラ：……お兄さま、私の代わりに、新しい世界を見届けて。
459 エドガー：嫌だ、できな、
460 ライラ：ちゃんと押えておくから。一思いに、お願い。
461 アリエル：さぁ！皆さん！もうすぐ世が明けますよ……！
462 エドガー：（長く息を吐く）……ごめん。
＜エドガーがライラの胸に剣を突き立てる＞
463 ライラ：う……い゛っ……。
464 エドガー：っ……ごめん……ライラ……ごめん。
465 ライラ：いい、のよ……世界の、ため……言ったでしょう？
466 エドガー：もう喋らないで。傷が……
467 ライラ：お兄、さま……知ってる？
468 エドガー：……っ……なに？
469 ライラ：夜明けの、直前が……一番、暗い…だよ。
470 エドガー：そうだね。……真っ暗でライラの顔が見えない。
471 ライラ：ごめ、んね。……またお兄さま、泣かせ……ちゃった。
472 エドガー：ライラ……（泣くエドガー）
473 ライラ：太陽の、下……お兄さまと、一緒、に……。
474 エドガー：ライラ、？……ライラ！！！！！
475 アリエルＮ：見る見る間に空は赤く染まっていき、一筋の光が差し込んだ。……こうして、人々が待ち望んだ長い夜が明けた。
476 エドガー：見て、ライラ。空は青かったよ。光は……そうだなぁ、ちょっと刺激が強いけど、みんな少しずつ慣れてきたみたい。中にはまだ外に出られない人もいるみたいだけど。……こうやって人間は変わっていくんだね。
477 エドガー：みんな俺の事英雄って言うんだ。みーんな神子様神子様って。ライラの事忘れちゃったみたいに言うんだよ。……なんでかなぁ。こんなに寂しいのに。誰も分かってくれない。
478 エドガー：この右目もさ。見えなくなってきてるんだ。紋様のせいじゃないかってお医者様が言うんだけど。……ライラが右側にいたら何も問題なかったのになぁって。
479 エドガー：あーあー、空。広いなぁ。
480 エドガー：なぁライラ。……太陽の下は俺には眩しすぎるみたいだ。
（終）