この本に載せた、唯一の昭和
2022.03.19 06:59
函館の繁栄の基礎を築いた、淡路島出身の高田屋嘉兵衛。
地元淡路島でも、当然、郷土の生んだ偉人として
尊敬の眼差しを注がれ続けていることと思う。
実際に昭和60(1985)年、大鳴門橋が完成したことを機に、
嘉兵衛の持ち船だった辰悦丸を復元するという偉業を、
淡路島の造船所が自費で成し遂げた。
そして翌年、江差からの呼びかけが発端となり、
何とも粋な取り組みが実現される運びとなった。
昭和の辰悦丸が、北前船ゆかりの港を結ぶ航海に乗り出したのだ。
淡路島の津名港を発ち、北前船時代の港だった18港に寄港して
江差に無事到着した辰悦丸はその後、函館に入港する。
星野さんの写真には、その様子をとらえたカットもあるが、
一昨年に制作した星野さんの写真集
『あのころの函館を旅する 昭和40年代から昭和の匂いの残る平成のはじまり』には、
その写真をうまく収める場所がなく、泣く泣く掲載を見送った。
弊社の資金力では、星野さんの昭和の写真集の第二弾を出すなど困難。
そんなわけで本年3月の新刊、星野勲著『平成函館忘れない』にて
昭和の写真ではあるが例外的に掲載した。
下の写真はその1つ。背後には今はなきゴライアスクレーンも見える。
星野さんはこのとき、江戸時代の函館繁栄の礎となった辰悦丸と、
近代函館の発展を支えた青函連絡船がすれ違う「夢の交差」も
16ミリの動画で撮影されていた。
本冊には、その16ミリフィルムを切断して、スキャンしたものも収録してある。