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旅のチカラ、旅のカケラ

見上げてごらん、夜空の星を

2008.06.20 12:10


見上げてごらん、夜空の星を


ジャイプールの歴史は、たったの260年しかない。

ムガール朝の衰退に乗じて、藩王(マハラジャ)ジャイ・シンが、

先祖代々の丘陵城砦であるアンベール城を出て、

自らの名にちなんだこの街を建設したのがはじまりである。


街を歩いていると、さながら中世の世界に迷い込んだような…。

壮厳な宮殿、活気あふれるバザール、

そして街を包み込むようにそびえる城砦。

悠然と馬車が走りぬけたかと思えば、

反対方向からはラクダに引かれた荷車が。


ここジャイプールの旧市街は、別名「ピンクシティ」と呼ばれる。

およそ100年前、ここを訪れた王子を歓迎して、

街中をピンクに染めたという。

実際、ピンクではなく、素焼きレンガの茶褐色なのだが。

今日はそんな幻想的な街を、昨日出会った粋なリキシャの彼、

ラッキーと市内観光に出かけた。


行きたいスポットを7ヶ所リクエストし、料金は150ルピー(約400円)だった。

現役のマハラジャが暮らす「シティ・パレス」、

かつての宮廷の女性たちが街を見下ろしていたという「風の宮殿」、

歴代の皇帝により要塞として利用された「ナルガール要塞」。


どれも素晴らしい場所だったが、とにかく暑い。

顔をしかめたまま、とりあえずシャッターを切ったという感じだった。

そろそろ旅の疲れがたまってきたか…。


最近はとにかくガイドブックをなぞっている感が否めない。

インドの広さに圧倒されてか、暑さのせいか、

ここだけは押さえなきゃ!というスポットを回っては

それで満足してしまう。

だって旅立って今日で4ヶ月。

ところが世界地図を広げてみると、

まだ1/4も進んでいないのではないだろうか。


さらに悪いことに、

今いるインドよりも、これから先のネパールやイエメンの

ガイドブックばかり読んでしまう。

足元よりも、目先ばかり気になって仕方ないのだ。

こんな状態じゃ、せっかくの旅が色あせてしまう。

もっとインドを感じよう、今を大事にしなきゃ…。

(って頭じゃわかってるんだけどね…)


よし、お金はないけど、気分はマハラジャに。

もっとゆとりを持って旅をしようと思う。

これがジャイプールの街で悟ったことだ。


マハラジャのジャイ・シンは、優れた占星学者でもあり、

膨大な量の煉瓦やモルタルを使って、

とても精密な天文台「ジャンタル・マンタル」をこの街に築いた。

どんなに忙しくても、夜空を見上げて星を眺める、

そんな余裕が必要であり、なによりの贅沢なのだろう。


見上げてごらん、夜空の星を。