『肥後の城』の書評
https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12711226840.html 【永田満徳氏の第二句集『肥後の城』書評。寺井谷子さん。】より
11/17の朝日新聞九州版に、永田満徳さんの第二句集『肥後の城』の書評がまた載ったようです。評者は寺井谷子さん。
読みやすいように活字に致しました。
〜傷つけるのも自然 癒やすも自然〜
熊本市在住の永田満徳 (秋麗)の第2句集『肥後の城』(文學の森) は、2016年の熊本地震と、20年の熊本県南部の大水害という甚大な被災下の日々を二本の柱とする。
★本震のあとの空白夏つばめ
★居住地が震源地なる夜長かな
★わが身より家鳴動す夜半の秋
熊本地震の激しさは、九州各県を揺らした。
シンボルであった熊本城の崩壊の様に言葉を失いながらも復興の努力が続けられる。
★尺取の身も世もあらぬ身を上ぐる
この一句に、被災地の姿と思いを重ねる。
地震より4年後、県南部の大水害。殊に著者の郷里人吉は深い傷を負った。
★一夜にて全市水没梅雨激し
★むごかぞと兄の一言梅雨出水
「ムゴイ」という一言の後の沈黙を思う。
自然の脅威の中、被災の心を癒やし、力付けたのもまた、その自然でもあった。
★阿蘇越ゆる春満月を迎へけり
★石垣のむかう石垣花の城
包み込み、心を撫でるようなやさしさ。
俳句という短詩形が持つ「伝達性」と「記録性」、「慰撫の力」とを改めて思う。(寺井谷子さん)
※この評について、著者永田満徳さんは、
《寺井谷子(「自鳴鐘」主宰)氏の句評の最後の一行は私の拙句集『肥後の城』、或いは、「俳句」という文芸を的確に言って頂きました。》
と言っておられます。その部分とは、最後の2行の部分、
《俳句という短詩形が持つ「伝達性」と「記録性」、「慰撫の力」とを改めて思う。》
ですね。
※続々と『肥後の城』の書評が書かれています。
私の知っている人たちも句集を出されてますが、これほどの数の書評が書かれているのは近来珍しいことです。皆様も是非ご一読下さい。
https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12710840921.html 【桑本栄太郎さんの【永田満徳氏著第二句集『肥後の城』一句鑑賞】】より
桑本栄太郎さんという方がフェイスブックに、永田満徳さんの第二句集『肥後の城』の中の俳句を【一句鑑賞】という形でその句評を投稿されていました。
①立冬や大丼の男飯(「城下町」より)
嘗て、若手新進女優のテレビによる談話を聞いた事がある。
司会者の「貴女は旦那様のどこが良くて結婚なさいましたか?」との質問に対して「とにかく、食べ物を如何にも美味しそうに食べる人なのですよ!」と応えて居りました。
若い女性に取って、食欲があり美味しそうに食べる相手も魅力のひとつのようである。
挙句、立冬と云っても11月初旬の事であり、秋たけなわの季節で紅葉、黄葉もこれからの活動的な時季でもある。
「大丼の男飯」との措辞が効き、丼飯を搔き込み如何にも生活力があり、頼もしい健康的な男性が想われるではないか!。(桑本栄太郎)
➁北風に御身大事と踏み出しぬ(「城下町」より)
日毎に寒さが募り、遂に木枯し一番も吹く寒い季節がやって来た。
人々が寒さを感ずる事は、絶対温度ではなく、個々人の寒さに対する心構えのようなところがある。
その為、急激な寒さには未だ身体が慣れて居らず身構えてしまうようである。
北風の吹く時の外出に襟を立てて身構え、「御身大事」と戸外へ一歩踏み出す様子が、ありありと見えて来る。(桑本栄太郎)
フェイスブックなどに永田氏の『肥後の城』の一句鑑賞的なものが投稿されればこのようにブログに載せたいと思っています。
私(すえよし)の感銘句①
★水俣やただあをあをと初夏の海(「城下町」8p)
水俣病という苦難の歴史、いや今でも苦しんでいる人がいる、その水俣湾。見た目には静かに穏やかな「ただあをあをと」した海。その海を見ている作者の思いは深い。(すえよし)
https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12711225821.html 【桑本栄太郎さんの【永田満徳氏著第二句集『肥後の城』一句鑑賞】(2)】より
桑本栄太郎さんの【永田満徳氏著第二句集『肥後の城』一句鑑賞】(2)
桑本栄太郎さんという方がフェイスブックに、永田満徳さんの第二句集『肥後の城』の中の俳句を【一句鑑賞】という形でその句評を投稿されています。
③ストーブの触れたき色になりにけり(「城下町」より)
日毎に寒さが募り、特に冷え込む朝夕は暖房が欲しくなって来た。手足も冷たく、背中もぞくぞくする程の寒さを感ずれば、ストーブに火を点け、赤くなれば直接触れたい心情になる。
厳寒の時季は勿論、特に今頃の時季の日中と夜の気温差が激しい時に、そのように思える事がある。
更にストーブと云えば小学生の頃、学校では「達磨ストーブ」があり、ストーブを囲んで先生も一緒に昼食の弁当を食べた、懐かしい光景が想い出されるのである。「ストーブ係り」などの言葉も懐かしい。(桑本栄太郎さん)
④みづからを叱るごとくに咳き込みぬ(「城下町」より)
これからの季節、寒くなれば咽喉や気管の粘膜がおかされ、急激に咳き込む事があります。又、年齢的な理由にもより寒い時は嚥下の力が落ち、急激に咳き込む事もあるようだ。
一瞬の事に、「あれ!どうしたのだろう?」と思い、「何か悪い事でも行った所為だろうか?」と、自らを返り見て戸惑うことがある。その瞬間を「みづからを叱るごとく」とはとても納得のゆく所である。これも寒さのなせるわざであろうか?(桑本栄太郎さん)
私(すえよし)の感銘句②
★我が一生(ひとよ)蟻の一生に及ばざる(「城下町」12p)
読んだ瞬間ドキッとした。確かに蟻を眺めていると蟻は一時も休むことなく一心不乱に働いているように見える。その様を見てて、ふっと「我が一生蟻の一生に及ばざる」という気がしたと言うのである。私も大いに心当たりがありますね。(すえよし)