Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

yoyo

地方の観光

2022.03.20 16:38

実家から少し離れたところにある観光地へいく。お堀が巡らされお屋敷が並ぶ城下町。風情はあるがひなびた田舎の、さらに駅から離れた場所なのだけれども、何年か前から観光に力を入れ始めたとのこと。大正時代に建てられた洋風建築があり、そこが観光案内所と物産品売り場を兼ねた場所になっていた。コンクリート打ちっぱなしの内装に、木箱を積み上げ無造作な感じを出しつつも、きちんと導線が考えられたディスプレイ、値札や商品説明のフォント一つにも気が配られていて、統一感のある、プロでないとできない空間演出。おそらくイベント会社なり外部の手が入っているのだろうと思った。


昼食を取るため併設されたカフェへ行く。ランチのメニューは弁当一択。事前精算制。水はセルフサービスで、弁当の入れ物は使い捨て。回転率を上げるこのシステムもおそらく外部の手によるものだろう。


そんな効率の良いシステムを導入していながら、実際の手際は最悪だった。11時半開店だが10分経っても開店する気配はない。店の前には5人ほど人が待っていたが何の説明もない。開店したかと思えば、予約客10人が先に入り弁当が足りなくなったという。席は空いているが弁当ができるまでは外で待っていてほしいという謎ルール。そもそも開店時にたった一種しかないメニューである弁当がないというのはどういう状況なのだろう。

事前精算時に申し訳ございませんと言われたけれども、そのとき以外、またその人以外に謝られることはなかった。この場所にやってきた人間が食べ物が欲しいと言っているからただ与えているだけ、そしてただ与えられた仕事をこなしているだけという感じだった。もちろん店を回していたのは地元の人間だった。


途中、おそらくイベント会社の人が来たのだろう、店員のひとりはものすごく人が来て大変だった、メニューの作り方が複雑で時間がかかるとその人に愚痴をこぼしていた。もともと分かってはいたが、この弁当は地元の食材を使ったものではあるが、メニューを開発したのは外部の人間なのだ。そしてそんな愚痴を聞きながら彼女たちが作ったものを食べているこの状況。店員は5人ほどいたが、審査をして雇ったとは思えなかった。

私が言いたいのは、外部の人がすごくて、地元の人間はすごくないということではない。外部に任せるのが、ファストなやり方が良くないということでもない。どれだけ外部がお膳立てしても、地元がやる気なければ意味がない。手を組まねば意味がない。外部の人々が持ち込んだパッケージに、地元の人間が使役されているこの感じ。全国各地に、その土地ならではのふりをしたフランチャイズができているのかと思うと虚しくなる。


そして観光される側からする側に回って思ったことは、おしゃれな店作りをすれば、おしゃれなメニューを作れば、こういうものを提供すれば客は喜ぶだろうという安易な行為は、つまり客を見下すことなのだということ。


愛のないものを差し出すことの残酷さに自覚的でいたい。