苦しんだ攻守のバランス
先ず、前提として御承知置きください。この記事は戦術批判が目的ではありません。私は本田美登里監督が大好きです。
選手としても指導者としても日本女子サッカーの先駆者。育ててきた選手の成長。なでしこリーグ1部昇格初年度のチームとしては最上位となる3位にAC長野パルセイロレディースを導いた手腕。そんな本田監督が長野に来てくれて、また2018シーズンも長野を率いてくれることを嬉しく思い、Twitterでは本田監督の契約更新ツイートに片っ端からファボ爆撃していました(笑)
最近では、パルセイロレディースガチャの当たり(非売品)の本田監督キーホルダー&缶バッジを無事コンプしました。キーホルダーに至っては保存用も確保しました。アイドルか(笑)
毎度おなじみ、試合前の選手紹介でも、かかってこいや的な煽り気味に最後にアナウンスされる「監督 本田美登里」のパートが一番好きです。
次に好きな選手紹介は、はるひちゃんです。
話が全く本題に進みませんがw
そんな日本屈指の女子サッカー指導者である本田監督をもってしても、2017シーズンのAC長野パルセイロレディースは苦しいシーズンでした。6月までは3位に付けていたチームの急失速の直接的な原因は、やはり横山選手の海外移籍に起因したものであると言えると思います。
横山選手は単なる「得点源」ではなく、ドリブル突破で相手を引き付けてからのパスなどによるチャンスメーカーとしての役割、中盤に下がってのゲームメーカー的な役割、また正確且つ距離を問題にしない、パスも直接も精度の高いプレースキッカーとしての役割、また、常に表立ってチームを鼓舞するタイプではないにしても、彼女がいるだけでチームに自信を与える精神的な支柱としての役割もあったと思います。
上の画像は、横山選手移籍セレモニーの時の映像の1コマですが、冗談じゃなく皆そう思っていた。選手も、サポも、多分監督も。
だからこそ、2016年のホームINAC戦では前半で0-2とされながら、スタジアムには諦めとは別にそわそわした雰囲気があった。「さすがINACさん強いよねー」とは言いながら、パルLなら、横山選手ならここから何か見せてくれるんじゃないか?という思いが、或る人は漠然と、或る人は強く持っていた。結果はご存知の通りです。横山選手は3点全てに絡みました。本人も後に映像を見て「あんなに角度が無いとは思わなかった」と言う同点弾。そして國澤選手が押し込んだ逆転弾のCK(あれは絶対直接狙っていたと思います)がポストに当たる乾いた金属音。Uスタに渦が巻くような応援。欧州のスタジアムやJリーグ、ACLなどの大舞台でしか見ることが出来ないと思っていたあの雰囲気を長野で、女子サッカーで味わえたことは、私にとって一生忘れられない宝となるでしょう。
そんな2年連続動員日本一のAC長野パルセイロレディースがいる、Uスタにおいでよ!(広告)
どんどん話が脇道に逸れていきましたが、それこそ御伽噺となったレスターのヴァーディと岡崎を足して2で割らないレベルの存在だった横山選手の移籍は、当然大きな大きな影響を生みます。本田監督も手をこまねいていた訳ではなく、恐らく海外挑戦をシーズン開始前から見越して、あれだけ「初年度で客を呼ぶ原動力」となった4-1-3-2の攻撃重視サッカーに手を入れ、プレシーズンキャンプから守備に重点を置き始めた。そして横山選手の離脱直後に発表された、当時無所属の中野真奈美選手の加入アナウンス。パルLの前身である大原学園時代を知る選手であり、リーグ公式ガイドブックの「好きなor目標とする選手」の項目で何人もの選手が名前を上げるほどの素晴らしい選手がシーズン途中で加入というのは、長野にとっては本当に助け舟でした。
そこまで対策を練っていても、夏場以降は本当に厳しい戦いの連続でした。中野選手はもともとトップ下を中心としたプレーエリアで輝く選手だと思うのですが、泊選手をワントップ、その後ろに中野選手というタテ並び2トップの形は、ほとんど機能しませんでした。
前の2人だけの問題ではなく、チーム全体が守備を意識するあまり両サイドMFも含め8人が守備に追われる4-4-1-1の形となり、セカンドボールをほとんど相手に支配される形が多くなりました。いくら守備力を上げても、攻撃を食らう回数が増えればいつかはやられてしまいます。ボールが運良く繋がったとしても、両サイドの位置が低いので2人で何とかするしかなく、例えば中野選手にボールが渡ったとしても、相手側とすれば守備的MFへのバックパスと泊選手へのパスさえ封じれば、中野選手のパスの出し所はほとんど抑えられるので、その数秒のアドバンテージを使って中野選手を囲んでしまうというタスクを多くの相手に遂行されたように見えました。
同じ陣形の中での対処法としては、私は相手攻撃時にボールサイドとは逆のサイドMFを上げるのも一つの手かなと思って見ていました。
上の図であれば、ボールと逆の右サイドの選手の意識をカウンターに向けるということです。守備をしなくて良いという訳ではありませんが、なでしこリーグで一発でサイドチェンジをするチーム・選手はあまりいないので、全力で下がっている必要はあまりないと思います。ボールが中央を経由して右に移動した場合は右の選手が下がり対応、代わって左のサイドMFがカウンターを意識する、という具合です。1トップの泊選手の裏抜けはオフサイドトラップなどで警戒されますが、サイドだとオフサイドに引っ掛かる可能性も少なく、またその後のボールの失い方としても、中央で奪われると再びショートカウンターを食らい危険度が高い(実際、これが何度もありました)のですが、サイドにロングパスを出した場合は失敗しても相手スローインになり、相手のサイドの選手がボールを受けに行く間にこちらは一息入れたり乱れた陣形を整えるわずかな時間が生まれます。
チームが苦しんでいた時が、この「一息」の時間が無い悪循環でした。その中で、カウンターの一手の布石として藤村選手のSBコンバートがあったのかもしれないし、山崎選手の左サイドMF起用があったのかもしれません。途中、神田選手をアンカーに据えた4-5-1などの陣形も試され、リーグ終盤でのノジマステラ戦では4-4-2布陣の中で先発した内山選手が攻守に走り、また時間帯によって逆サイドの児玉選手とポジションチェンジを行うなど、今までなかった部分も見られるようになりました。
ところが、公式戦最終戦となってしまった皇后杯のジェフレディース戦。延長戦で敗れた後の選手のコメントを見ると
「少し後ろに重心が行き過ぎたのかなと。真奈美さん(中野選手)にボールが入っても前にトマさん(泊選手)しかいない場面が多かったので、リーグ後半戦の悪い状態の時に戻ってしまったのかなと思います」(國澤選手)
「まずは自分の特長でもあるキープの部分などを意識してやっていたんですけど、相手も強かったし今までは、私がボールを持った時に前にFWが2枚いたのが、今日は1枚だけだったというのもあって、うまくはいかなかったですけど勝てた試合であったとは思います」(中野選手)
上記の苦しんでいた時期の特徴そのまんまで・・・。通しの試合映像が無いのが本当に残念です。来シーズンに向けて、新加入の滝川選手をはじめとした新戦力と既存戦力の融合、またどんなコンセプト・戦術・布陣で臨まれるのか、本田監督の決断が今から楽しみです。
今回は長くなりましたのでここまで。じゃあお前どうせいっちゅうんじゃあ!という意見には、別の記事で私なりの陣形を書きたいと思います。