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マヤ

『二度目で…ラスト』(続・臣隆妄想劇場2)修正版

2017.11.14 14:10

あの日、あいつの後を追ってマンションまで行ってみたけど、帰っていなかった。


電話もつながらない。


合鍵は持ってる。


でも、さすがに勝手には入れないし…。


翌日は映画の番宣で、一日中仕事だった。


TAKAHIROさんと一緒だし、不機嫌そうな顔なんかしたら失礼になる。


何とか笑顔は作れたけど、あいつのことが気になってしょうがない。


夕方になってインスタを開けると、赤いシャツを着て笑ってる隆二がいた。


そっか…居酒屋覗くって言ってたっけ?


全てのスケジュールを終えて、TAKAHIROさんと軽く飲みに行き、別れたのが夜中の1時…。


その足で、隆二のマンションまでやってきた。


インターホンを押しても、応答はない。


こんな時間にレコーディングもないだろうし、ひょっとして健ちゃんの所かな?


電話してみよ…


臣「健ちゃん?あっ…おれ!ごめん…寝てた?」


健二郎「そろそろ寝よかなって思ってたとこや。臣ちゃんどうしたん?」


臣「隆二そっちに行ってないよね?」


健二郎「来てへんで?ここしばらくおーてへんし」


臣「そっか…ならいい…いや、特に急用でもないから。ごめんね!健ちゃんおやすみ!」


そうだよな。


俺くらいだろ?


あいつと頻繁に会ってんのは…


地元のツレん家でも行ったかな?


何気なくドアノブを回してみると、簡単に開いた。


え?いるのかな?


臣「隆二?いるの?…入るよ〜」


返事はない。


玄関からリビングへ続く廊下を歩きながら、囁くように、


臣「隆二?いないの?」


リビングに入ると、赤いシャツとジーンズが、無造作にソファの上に掛けてあった。


あれ?これ今日の昼間に着てたシャツじゃ…


臣「隆二?」


そっとベットルームのドア開けてみると…


ダブルベットの上に、白いTシャツに赤い半パンを履いた隆二が、仰向けになって寝ている。


臣「いるんじゃん…お前電話くらい出ろよ」


上から覗き込んでみると、大量の汗をかき、荒い息を吐いている。


臣「具合悪いのか?すごい汗…」


隆二「誰?…臣?」


薄っすら目を開けて、臣の顔を見る。


隆二「久しぶりにずっと外にいたら、気分が悪くなって…」


臣「熱中症じゃないの?救急車呼ぼうか?」


隆二「いや…いい…ツアー前だし…マスコミにでも知れたら、大ごとになる…」


臣「うわっ…Tシャツびしょびしょ…」


臣「とりあえず着替えて体冷やさなきゃ…」


クローゼットから着替え用のTシャツと短パンを取り、ベットの上に置くと、


臣「俺、ペットボトル取ってくるから」


キッチンの方へ向かおうとして振り返り、


臣「ちょっと着替えるの待って…タオル濡らしてくる」



キッチンで、氷を入れた水桶にタオルを浸しながら、臣は少し苛立ちを感じる。


あいつ…ほっといたら危なかったんじゃ?


具合の悪い時くらい、俺に頼ればいいのに…


キュッと下唇を軽く噛み、眉間にシワを寄せる。


タオルと、水の入ったペットボトルを3本持ちベッドルームへ戻ると…


上半身ハダカで、力尽きたように横たわる隆二の姿があった。


臣「隆二!大丈夫か?」


隆二「ごめん…起きてTシャツ脱いだら…頭がクラクラして…ちょっと…無理…」


臣はスマホを手に取り、


「救急車呼ぶぞ!」


すると、汗で光る手で、隆二が臣の手首を弱々しく掴む。


隆二「ほんと…大丈夫だから…」


隆二「今度のツアー…どれだけのファンが楽しみに待っててくれてるか…わかるでしょ?…臣」


臣「体調不良だったら、それどころじゃないだろ?」


隆二「…ほんとにヤバかったら言うから…」


臣「わかんなくもないけど…ほら」


隆二の上半身をゆっくり起こし、肩を支えてタオルで汗を拭き取る。


隆二「変な気…起こすなよ」


臣「言ってる場合か?」


臣「ほら!水」


ゴクゴクと一気に水を飲む。


臣「下は?」


隆二「いい…自分で拭く…」


臣「ん」


手にしたタオルを隆二に渡す。


隆二「タオル…冷たくて気持ちいい」


臣「氷水につけて、絞ってきた」


隆二「へー…気が効くんだ」


手を止めて、ジーッと臣の顔を見る。


臣「ん?何?」


隆二「下脱ぐから、あっち向いててよ」


臣「はいはい」


まるでオオカミ扱い…


隆二「ん…いいよー!」


ちょこんとベットに座って、こっちを見てる。


臣「横になれ」


隆二「なんか怖い」


臣「何もしねーよ!冷やすから横になれって」


隆二「何かしたら…ぶっ飛ばす…マジで」


臣「具合悪いんなら、大人しく言うこと聞いてろ!」


隆二はブーっとムクれた顔をして、仰向けになる。


熱が篭ってるような、赤い顔をしている。


臣はおもむろに、よく冷えたペットボトルを両脇に差し込む。


隆二「つめてぇ…!」


臣「体冷やすには脇の下と…足広げろ!」


隆二「⁉️…ヤダよ‼️」


臣「足の付け根にもペットボトル入れるから早く!」


臣「えーっ⁉️股間も冷やすの?それって臣の趣味じゃ…?」


臣「人をなんだと思ってんだよ!早くしろ」


隆二「じ…自分でやる」


臣「好きにしろ!…ったく」


よく冷えた別のタオルを、隆二の額にそっと乗っける。


隆二「冷たくてほんと気持ちいい…」


臣「だろ?」


隆二「ん…ちょっと眠くなってきた」


臣「寝ていいよ」


隆二「信用してっからな…臣」


臣「バカ…」


静かに寝息を立てる。


あのまま帰らなくて良かった…



しばらくして、額のタオルを取り、そっと手をあててみる。


もう大丈夫かな?


臣「隆二…寝てる?」


安らかに寝息を立てている。


これは…俺に心配かけた分のペナルティーな…


…臣が軽く唇を重ねる。


隆二「ん…」


ビクッとして唇を離す。


薄っすら唇を開き、うわ言のように、


「臣…次のツアーだけど…」


と言ってまたすぐに寝息を立てる。



二度目で…ラスト…かな?



よく冷えたタオルを優しく額に乗せ、フッと溜息をつきながら窓の外を見る。


どこかで鈴虫が鳴いてる。


さぁ!


俺たちのツアーが始まる…



END