このような成長は続けられない
経済成長はもはや生活水準の向上を意味してはおらず、別の道があるとジェームズ・ミードウェイは述べている。
翻訳:馬場 汐梨
過去2年、新型コロナウイルスが地球上の社会で猛威をふるい、各政府がロックダウンを課す中、資本主義の平時の歴史において最も大きな経済的混乱が起こりました。国内総生産(GDP)は、毎年毎年成長を見るために使うものとなっていましたが、公衆衛生の危機が要求するものに比べ、突然妥当性がないように見えるようになりました。
実際には、いわゆる先進国と呼ばれるイギリスやアメリカにとってGDP成長の妥当性は既に疑問視されていました。第二次世界大戦終結後の数十年間、先進国におけるGDPの安定した成長は、生活水準の安定した向上と一致していました。1940年代の終わり頃から1970年まで、実質賃金はGDPよりもいくらか速い速度で成長していました。西側の資本主義経済は結果としてより平等になり、労働者と中流階級層はどんどん大きい取り分を得ていました。1970年代の終わり以降、その関係はひっくり返りました。経済が実質賃金よりも早く成長するようになったのです。社会の上位数パーセントが先進国経済の全財産のより多くの部分を得るにつれ、格差は著しく拡大しました。それでもなお、一般的な生活水準はこの30年で改善しました。以前よりはゆっくりとしたペースでしたが。
そして、2008年の経済危機以降、GDPと生活水準の改善の関係性は壊れました。先進国経済はたいてい、イギリスの事例のように、成長がより弱くなりました。また労働者の実質賃金は停滞していて、格差は悪化し続けています。GDP成長が多くの人々の生活水準の改善をもたらすという約束は、先進国世界ではもはや一貫して当てはまるわけではありません。
その特権社会の外では、話は変わってきます。特に中国は、人類の歴史の中で過去40年間最も長く、持続して景気がよく、とても貧しい国から世界第二位の(いくつかの指標では第一位の)経済に姿を変えました。7億人もの人々が最もひどい貧困から脱しました。しかし西側が好景気だった1940年代後半から1970年代と違い、中国の並外れた成長は、格差の並外れた拡大を含んでいました。中国は今、地球上で最も不平等な社会の一つです。
西側と東側の経験を結びつけるのは、広く普及した経済成長で、共通して多くの人々の生活水準を改善しましたが、以前は特に石油という形で莫大な地球の資源を必要としていました。
「緑の成長」を推し進める人々の主張は、成長と資源の関係は必然ではないというもの。つまり、成長をもたらし、その恩恵をより平等に分かち合い、成長と環境破壊のつながりを絶つことは可能だということです。「デカップリング」という考え方では、技術が改善すればより効率的になり、効率が改善すればドル、人民元、ポンドあたりのGDP増加に必要な資源の量も減ります。このことから、エコで、効率的で、公平に分配される正しい種類の成長であれば、成長は続けられる(と主張されています)。
ただ問題は、過去100年で確実に技術は進歩して、例えば1979年にはGDP1ドルあたりのCO2排出量は1kgだったのが、30年後には700gになりましたが、もし成長も続けると仮定すると、この効率性の改善割合では1.5℃制限には全く不十分です。生態学者ティム・ジャクソンの2009年の有力な計算で必要とされている、GDP1ドルあたりCO2排出量3gを実現する妥当な技術はありません。私たちは確かに技術的な改善を模索すべきです。ただしそれだけでは不十分です。
しかし、もし生活水準が成長に関わっているとすれば、このことは特に不平等な世界で乗り越えられない問題を生み出すかもしれません。一つには、比較的裕福な国での生活水準は改善されないかもしれないが、その外側にいる80%の人々はどうするのか?という点です。世界的な格差に対応するには、彼らにとってなんらかの成長は避けられないし、北側が100年以上にわたって享受してきた(極めて不平等な!)より高度な繁栄を、いまや南側の国々が共有することを許されるべきではないなどと、裕福な世界の視点から議論するのは非常に困難です。
解決策は3つの部分に見ることができます。1つ目は、地球規模で低炭素技術をできるだけ早く導入することです。2つ目は、南側の成長を促進する、低炭素で省資源の技術を使用すること。これも重要です。そして3つ目は、より平等が確保されるようなベストな方法で、北側の国々において世界の資源を再分配することです。裕福な世界での成長が衰えるということが多くの人々の生活水準ともはや関係ないということが保証されれば、この提案が思ったより急進的ではなくなります。
ジェームズ・ミードウェイ(James Meadway)は経済学者で元政治顧問です。jamesmeadway.substack.comで彼のニューズレター「パンデミック資本主義」を購読してください。
We Can't Grow on Like This • James Meadway
Economic growth no longer means rising living standards