「食は体を養い、歌は心を養う。」
中国の南西部・貴州省に暮らす少数民族、トン族は、「歌の民族」と言われます。
独自の文字を持たず、自給自足の農耕生活を営みながら、歌で民族の歴史や生活を2000年以上に渡って歌い継いできました。
膨大な民族歌謡があり、中でも多声部合唱の「トン族大歌」はユネスコ無形文化遺産に登録されています。
指揮も伴奏も楽譜もなく、歌師と呼ばれる指導者らによる口伝です。
歌で愛を告白し、歌で承諾を伝え結婚したというご夫妻の話が紹介されていました。
そのご主人が、トン族に伝わる言葉として仰っていたのがこれです。
「食は体を養い、歌は心を養う。」
私も歌ったり鍵盤を弾いたりするので、とても響きました。
体と心は両輪。
どちらか片方が弱ると、進めなくなります。
歌が生活と融合しているトン族の人たちにとって、体には食、心には歌が必要で大切で掛けがえのないものなのですね。
弱った心をどうすれば強くできるだろう。
心を育てるにはどうすればよいのだろう。
ケアの中、暮らしの中で、いつも考えるテーマです。
その答えの1つが、この言葉にありました。
トン族にとっての心を養う「歌」とは、歌ったり聴いたりという行為だけはない気がします。
今ある想いを歌に紡ぐこと。
受け継いできた人々の想い。
日々の鍛錬。
師匠や仲間と創りあげていくもの。
空気を感じ人々や自然と共鳴すること。
体と心の連動。
呼吸や声の振動で呼び覚まされていく感覚…。
言葉ではうまく言えませんが、きっと色々な大きなものを含んでの「歌」ではないでしょうか。
感じて表現して伝わってフィードバックを貰って、また感じて…。
そういう循環の中で、心は育ち強く豊かになっていくのかもしれません。
心も体と同じで、使って動いて鍛えられるのでしょう。
きっと、歌や音楽だけではなく、他の色々で心を養っておられる方もいらっしゃるでしょう。
皆さまのそんな話も聴かせていただけたら嬉しいです。
トン族大歌 動画