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yoyo

青崎有吾「恋澤姉妹」

2022.03.23 12:30

百合アンソロ『彼女。』まだ途中なのだけれどもぜんぶ面白い!特に青崎有吾さんの「恋澤姉妹」が印象的だった。


孤児だった恋澤姉妹は、ヌードデッサンを活動目的とするサロンに引き取られモデルとして育成される。「見られる」ために育てられた姉妹。サロンメンバーはよりよい作品を仕上げるという名目のもと、姉妹に徐々にきわどいポーズをとらせるようになる。そのとき姉妹は8歳と10歳。

いやいやこれ「百合」と「百合オタク」やん。己の欲を恋澤姉妹で満たすサロンメンバーたち。そのうちの一人は自らの行為を「邪な思いを持っていた者はひとりもいないと断言できる」と語る。どこかで聞いたことのある台詞。


その後、サロンメンバーは全員恋澤姉妹に殺される。そして恋澤姉妹は自分たちを見ようとするものたちすべてを殺していく。

恋澤姉妹の周りには様々な百合もとい恋澤オタクが現れる。金目当ての恋澤オタク。姉妹を手に入れようと人と金を使い捨て、彼女たちの新居を用意する恋澤オタク。ファンだと名乗り殺されないギリギリのところで情報を集めオフ会を開く恋澤オタクたち。


最後、主人公は恋澤姉妹にこう呼びかける。


邪魔する奴はみんな殺せ。誰にも見せるな。(略)あんたたちの関係性は、あんたたちだけのものなんだから。P119


それに対する恋澤姉妹の台詞(ラストの一文)が最高だった。


これは百合の逆襲であり百合からの問いかけ。自分は百合にとってよき観測者であるだろうかと考えたりしたけれど、どうあったとして百合からはラストのあの台詞が返ってくるだろう。百合のことを考えるときはあの台詞をベースに置いておきたいと思う。