【プレスリリース】地層処分事業推進の前に、信頼の獲得と将来世代への 負担軽減のために徹底した検証と情報公開を ~NUMO意見交換会における「不適切動員」を受けて~
2017年11月27日(月)、国際青年環境NGO A SEED JAPANは、下記の提言を発表いたしました。
2017年11月27日
原子力発電環境整備機構 理事長 近藤 駿介 殿
経済産業大臣 世耕 弘成 殿
【提言】
地層処分事業推進の前に、信頼の獲得と将来世代への
負担軽減のために徹底した検証と情報公開を
~NUMO意見交換会における「不適切動員」を受けて~
国際青年環境NGO A SEED JAPAN
私たち国際青年環境NGO A SEED JAPANは、未来世代である青年としての立場から、環境問題の中に内在する社会的不公正の解決を目指して活動をしています。
2017年4月に、プロジェクト『核ごみプロセスをフェアに!』を立ち上げ、放射性廃棄物の処理・処分をめぐり、真にフェアなプロセスはいかにあるべきかを追求し、未来の社会を担う世代に対して、より負債を残さない方法を探るための調査活動や議論を行ってきました。
プロジェクトとしては、日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターの訪問のほか、放射性廃棄物の処理・処分事業を巡って、国内地域でどのようなことが行われてきたかを、地域に足を運びながら、その歴史を学び、また、現在活動するさまざまな市民グループへのヒアリングなどを行ってきました。
当プロジェクトのメンバーは、2017年に原子力発電環境整備機構(以下、NUMO)が開催した『全国シンポジウム「いま改めて考えよう地層処分」~科学的有望地の提示に向けて~』にもメンバー複数名(大学生含む)が参加し、また、2017年10月17日に東京で開催された『科学的特性マップに関する意見交換会』にも、当団体事務局長の西島(30)および協力者(34)らが参加し、NUMOが行おうとしている地層処分事業とそのプロセスなどに関して、NUMO職員らとの意見交換を行いました。
そうした中、2017年11月6日にさいたま市で開催された『意見交換会』で、大学生に対して、1万円程度の謝礼の支払いやサークル活動への支援を約束するなどといった「不適切動員」により、『意見交換会』への参加を呼びかけていたことが発覚しました。11月14日のNUMO理事らによる記者会見では、さいたま会場のみならず、当プロジェクトメンバーが参加した東京会場をはじめ、愛知、大阪、兵庫でも同様のことが行われていたと発表され、一同、驚くとともに、あらためて地層処分事業推進のプロセスへの不信感を抱きました。
本件は、「意見交換会の公正性」のみならず、過去40年以上にわたって続けられてきた放射性廃棄物の処理・処分事業そのものに対して極めて深刻な不信感を増幅させるものだと考えます。こうした原子力事業者による不公正な行為は、本来追求すべき公正なプロセスづくりを阻害するものであり、膨大な放射性廃棄物を生み出し続ける現在の原子力政策と同等の、未来世代への背信であると考えます。
記者会見でNUMOの宮沢宏之理事はこの「不適切動員」について、「意見交換会の公正性に不信感を招きかねない」との見解を示し、「委託先の管理が不十分だった」と釈明しました。またNUMOは11月20日発表のプレスリリースにおいて、「経産省の指示を受け、調査チームの設置と再発防止策の検討を行う」としています。
つきましては、今回の『意見交換会』での「不適切動員」と11月20日のNUMOのプレスリリースを踏まえ、高レベル放射性廃棄物処理・処分事業について、未来世代への負債を少しでも軽減していくために、NUMOおよび経済産業省資源エネルギー庁に、以下の4点を提言します。
【提言】
1) 本「不適切動員」について検証委員会を立ち上げ、検証を行うこと。また、NUMOのこれまでのシンポジウムやイベント等において、同様の「不適切動員」「サクラ行為」などが行われていなかったかを徹底的に検証すること。これらの検証を踏まえ、報告書を作成し、公開すること。
その際、検証委員会の委員からは、NUMO、経済産業省、資源エネルギー庁、電力会社、原子力関連事業者、原子力研究機関の在籍者・出身者、およびそれらから資金供与を受けたことのある者を除外すること (※1)。NUMOおよび資源エネルギー庁は、検証委員会の検証に対して、あらゆる情報を公開して検証に協力すること。委員名簿は公開すること。
2) NUMOおよび資源エネルギー庁としての地層処分事業のみに限らず、これまでの放射性廃棄物の処理・処分関連事業(研究を含む)に関わってきた、政府・事業者(旧動力炉・核燃料開発事業団や旧原子力環境整備センターなど改廃された組織を含む(※2) )が行ってきた事業で、国民および地域社会に対して不信感を抱かせるような行為にはどのようなものがあったかについての検証委員会を立ち上げ、検証を行うこと。また、報告書を作成し公開すること。
検証委員会は、NUMO職員および外部有識者(NUMO、経済産業省、資源エネルギー庁、電力会社、原子力関連事業者、原子力研究機関の在籍者・出身者、およびそれらから資金供与を受けたことのある者を除外する)、および青年世代を含む一般市民によって構成されること。委員名簿は公開すること。
3) 1)および2)の検証結果に基づき、放射性廃棄物の処理・処分関連事業における不適切な行為や不信感を増大させる行為の再発防止策を検討し、周知・徹底すること。再発防止策については公開すること(※3) 。
4) 1)および2)の検証結果に基づき、公開の報告会を行うこと。とりわけ、2)に関する報告会は、今後の高レベル放射性廃棄物の処理・処分事業における理解活動と表裏一体のものとし、各地で、継続的に開催すること。また、NUMO職員や資源エネルギー庁職員への研修、および外部事業者への業務委託の際の資料とすること。
未来世代である青年としての立場から、国際青年環境NGO A SEED JAPANは、環境問題の中に内在する社会的不公正の解決は、過去の歴史や経緯を検証することなしにはありえないと考えます。すでに生み出してしまった高レベル放射性廃棄物の処理・処分について、将来世代への負債を軽減するために現在求められているのは、拙速な地層処分事業および候補地の選定ではなく、将来世代が、高レベル放射性廃棄物の処理・処分について検証し、適切に判断できるための材料および公正さを確保することだと考えます。公正さの確保をこれ以上先送りしないために、今後、地層処分事業の推進の前に、上記提言を実行することを求めます。
以上
※1:なお、2017年11月20日のプレスリリースでは、「外部有識者による評議員会に調査チームを速やかに設置」とされていますが、NUMOの評議員会(https://www.numo.or.jp/about_numo/hyogiinkai/)には、こうした除外すべき条件に該当する評議員が複数含まれていると考えられます。よって、本件の調査チームを設置するには不適切であり、そうした構成の調査チームでは、信頼を得ることは不可能だと考えられます。
※2:NUMOや資源エネルギー庁など、現在、地層処分事業を推進する組織にとっては、こうした旧組織は別の組織であり、過去に行ってきたことは、自らの責任ではないと考えるかもしれませんが、国民にとっては、放射性廃棄物処理・処分事業に携わってきた事業者として、事業の信頼性を判断するにあたって、現在事業を行う組織と区別されるものではありません。
※3:たとえば「委託先の管理が不十分だった」とのことであれば、委託の仕様書などはすべて公開すること。
【提言書のダウンロードはこちらから。】
【プレスリリース版はこちらからダウンロードできます】
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