『W旦那+(プラス)』第76話 三代目妄想劇場
臣と隆二が付き合い始めて2回目の冬…
隆二がパーソナリティを務めるラジオを聞いていて、臣は心に引っかかるものがあった。
「赤ちゃん可愛い!」
「若い頃は20歳くらいで赤ちゃん欲しいって思ってた」
「いつ赤ちゃん産まれますか?」
収録スタジオのスタッフに聞く隆二。
「40…40歳?意外と芯食ってる」と言いながら笑う声が、臣にはやけに寂しそうに聞こえた。
臣のマンションにいつものように隆二がやってくる。
合鍵で中に入り廊下を歩きながら、
「おみーっ!酒とツマミ買ってきたよ〜!」
明るい声で隆二が言う。
返事がない。
「はれ?お〜み?寝てんの?」
リビングのドアを開けると、酒を飲んだ後のグラスがあり、臣はいない。
「へ?」
すぐに寝室のドアを開ける。
ベッドカバーの上に、臣がうつ伏せに寝転がっている。
「え?もう酒飲んで寝てんの?ビデオも借りてきたのに…見ないの?」
隆二が近くまできて声を掛ける。
臣は左手だけ上げて、人差し指でくいくいっと隆二を呼ぶ。
「なに?」
近くまで顔を寄せる隆二。
すかさず隆二の両脇に手を入れ、ベッドに引きずり込む。
「おわっ⁉︎」
臣は隆二を下にして上に乗り、しっかり抱きしめてくる。
「ちょっと…いきなり?今日は先にビデオ見るって言ったじゃん…」
臣は何も答えず隆二の唇に吸いついてくる。
長い長いキスの後、やっと解放された隆二が唇を拭いながら言う。
「酒、めっちゃ飲んでるし…」
「俺のこと…好き?」
「今さらなに?」
「好きかって聞いてんの」
「…嫌いだったら来ないよ」
「……」
「俺たち何回したっけ?」
「覚えてないよ…だいたいそんなこと普通聞かないし…」
「隆二…これから500回、1000回したって…」
(げっ…そんなにする気かよ?…こいつ)
「子供は望めないからな」
一瞬…時が止まった…
(今さらなに言ってんの?…臣)
「だから…なに?」
「将来…子供が欲しいんだったら…」
「…すぐに…別れよ」
End