『W旦那+(プラス)』第77話 三代目妄想劇場
2017.11.26 23:05
全身の血が引いた様な気がした。
随分長い間沈黙があった。
別れを切り出した臣は、ずっと隆二を抱きしめている。
(なんで…今夜急にそういうこと言うかな?)
仕事でへとへとになって帰ってきても、臣との時間があれば、また明日から頑張れる。
今夜だって…ずっと見たいねって言ってたビデオも借りてきて…
臣の好きな酒…臣の好きなツマミ…
一緒に風呂入って…
快楽だって思われてもいい…
俺にとっちゃ、飛びっきりの癒しの時間…
二人で気が済むまで抱き合って…
明日はお揃いのピアス買いに行くって約束してなかったっけ?
天国から地獄に突き落とされた気分だよ…
臣に抱きしめられながら、隆二は泣きそうになる。
「グスッ…」
鼻をすする音がして、臣が隆二の顔を見る。
「泣かせた?」
「ひどいよね…臣…」
「……」
「なんで今日言うかな?」
「だってお前…赤ちゃん欲しいって…」
「あ…ラジオ聴いてたの?」
「毎週聴いてるよ」
「話の流れで言うこともあるでしょ?」
「芯食ってるって言ってたじゃん…」
「そりゃ…」
「それがお前の夢の一つだとしたら…俺にはどうする事もできない」
「そんなの最初からわかってるし…」
「それでもいいんだったら…」
「……」
(俺の気持ち試したのかな?…こいつ)
「隆二?」
(なんか…疲れた…)
「ごめん…おれ」と言って、キスしようとする臣から、顔を背ける隆二。
「今日はやめとこ…」
「えっ?…怒ったの?」
「これっきりっていうのも、なんか呆気ないし…」
「あのさ…」
「臣…海行きたいって言ってたよね?」
「う…ん」
「今度の神戸公演の後ならいいよ」
「それって?」
「最後に二人で海見てさ」
「キスして…抱き合って…気が済むまで求め合って…」
「別れよ」
End