【おイシイ農園(ミニトマト専門農家)の石井政輝さん】神奈川県で唯一のミニトマト専門農家。16代目農園主が語る農業と農協と地産池消。
茅ヶ崎の発展に貢献されている方をご紹介する「Think Chigasaki」の第2回は、「おイシイ農園」の16代目農園主を務める石井政輝さんにご登場いただきます。
ミニトマト専門農家であると同時に、さまざまな地域貢献活動をされている石井さんの想いを伺いました。 (全5回)
――― 本日はよろしくお願いします。
石井 よろしくお願いします。「エキウミ」の記事はほぼ全部読んでいると思います。いくらでも喋りますので何でも聞いてください(笑)
――― ありがとうございます!では、いま石井さんはおいくつでいらっしゃいますか。
石井 32歳です。農業専門学校で農業を学びましたが、最初は別の仕事をしていたので、就農は8年前からです。
――― ということは24歳から農業を選ばれたということですね。石井さんは16代目だという記事を拝見したことがあります。
石井 はい。もとを辿ると、武田信玄の配下の武士たちがこのあたりで戦をして、その落ち武者が自給自足したところから始まったと聞いています。
今はミニトマト専門で作っていますが、当時は米や麦なんかを作っていたでしょうね。
―――ミニトマト専門はいつ頃からでしょうか。
石井 30年前、私が生まれた頃に父がトマトに絞ったそうです。
父が当時としては最先端技術だった「水耕栽培」という効率的な農法に切り替えまして、それをもとに私の代でより美味しく作れる農法に改良しています。
ちなみに、30年経った現在でもこの水耕栽培が一般的な農法なので、あまり進化がないですよね(笑)
――― 改良しているというお話がありましたが、効率的に作るだけではダメということでしょうか。
石井 ダメではないのですが、より美味しくする方法があるということです。
わかりやすく言えば、人間だって毎日必要な栄養素だけ摂っていても元気が出ませんよね。趣向を凝らした料理を食べるから元気が出るのと一緒で、ミニトマトもちゃんと手をかけて面倒を見てあげると根の張り方が全然違ってきます。
▼おイシイ農園のミニトマト
――― なるほど。それはミニトマトに特化しているからこそ、集中して改良ができる部分もあるのでしょうか。
石井 そうですね。神奈川県でミニトマトだけで生計を立てているのはおイシイ農園だけなので、うちでしかできないことができていると思います。
――― 素人感覚で恐縮なのですが、ミニトマトだけにすることは逆にリスクもあるのではないでしょうか。
石井 そうですね、ミニトマトならではのリスクというのは確かにあります。
ミニトマトは他の野菜に比べて趣向品の意味合いが強いので、震災のときのような自粛ムードだと売上が落ちたり、お弁当がなくなる子どもの夏休みの時期にも売上が落ちたりします。
――― なるほど。
石井 ただ、私は土の作り方からお客さんの口に入るところまで、理屈に沿って作っているので、そこまで大きなリスクを背負うことなくやれていると思っています。
常に半年先を見据えて動かなければいけない大変さもありますが、一方ですぐにできるわけじゃないからこそ、あと一生に何回収穫ができるか、ということを考えればそれも面白く感じられます。
――― それは農家ならではの感覚ですね。ちなみに、今回こうしてお話を伺えるのも「arecole cuisine クーカイ」のみぽりんさんからご紹介をいただいたのがきっかけでしたが、他にも茅ヶ崎の雄三通りでお付き合いのあるお店などはあるのでしょうか。
石井 ちゃんと調べたらたくさんいると思いますが、「プレンティーズ」さんとはトマトのアイスやシャーベットを共同で作って売っていただいたり、「マシュー」さんや「オジサンチ」さん、あと「けむりカレー」さんにもたまに使っていただいたりしています。
「ewalu」さんとは昨日会いましたし、直接仕事と関係ないところでも繋がりは多くあります。
――― もし差し支えなければ教えていただきたいのですが、ミニトマトの出荷先としては、やはり市場が圧倒的に多いのでしょうか。
石井 全然教えますよ(笑)
おイシイ農園としては、3割が市場で、残りの7割はマルシェ・直売所スーパーさん・飲食店さんです。
――― ということは、7割が指名買いをしてくれているということですよね。それはすごいですね。
石井 ごまかしの効かないマルシェに長年出させていただいて、いまだに行列ができているのを見てくださっている方がいるのかも知れません。
――― 何でも教えてくださるのでどんどん聞いてしまいますが、よくニュースで聞く農協さんってどんな団体なんですか?
石井 農協さんは地域によって大分毛色が違うのですが、私がお付き合いしている農協さんとはとても良い付き合いができています。
おっしゃる通り世間では色々と言われていますが、先ほどのリスクの話ではないですけど何かあったときに農協さんほど頼れる存在はありません。
それこそ福島の原発のときも、農協と付き合いのなかった有機農家は悲惨だったと聞いています。
――― 農家のセーフティネットを担っているのですね。もうひとつ余計なことを伺っても良いですか。「地産地消」ってどう思われますか。
石井 ひとことで言えば、ブームですよね。
本質はお客さまが「新鮮で体に良くて、美味しいものを選んで食べられる」ということだと思うので、PRの道具としての「地産地消」は見直される時期が来ていると思います。
もちろん、「地産地消」そのものを批判するつもりはありません。
――― これからは「地産地消」が本来の意図を損なわずに使わる時代になっていくということですね。忌憚のないご意見をありがとうございます。次回は、農家さんになるまでのお話を伺いたいと思います。
(次回につづく→人生の岐路となったX-JAPAN hideの死去と、農業に活きるギター作り。)
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【Think Chigasaki:おイシイ農園(ミニトマト専門農家)の石井さん】
・第1話 神奈川県で唯一のミニトマト専門農家。16代目農園主が語る農業と農協と地産池消。
・第2話 人生の岐路となったX-JAPAN hideの死去と、農業に活きるギター作り。
・第3話 お客さま目線の農業。販売からスタートしたことが現在の強みに。
・第5話 茅ヶ崎産のブランド価値が高まれば、茅ヶ崎の価値も高まる
▼おイシイ農園
住所:茅ヶ崎市萩園1660/TEL:0467-85-6020/Facebook/Twitter
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。