体外受精や顕微授精によって 生まれてくる命。その未来に 目を向けていきましょう !…③
はなおかIVFクリニック品川 花岡正智院長と拝郷浩佑培養士のお話
2017年1月発行『i-wish ママになりたい 体外受精と顕微授精2016』
はなおかIVFクリニック品川
拝郷浩佑培養士
精液調整は、CーIVFとICSIでは違いがあるのですか?
精液調整は、人工授精(AIH)とCーIVFでは違います。CーIVFでは、工程を1つ加えてスイムアップをしています。ですが、あまり状態のよくない場合は、スイムアップをしてしまうと精子が本当に少なくなってしまうこともあるので顕微鏡で運動精子を見てICSIをすることもあります。
精子は、1つとして同じものがありません。形のよくないものも多くあり、このほとんどは精液調整中に取り除かれ、CーIVFでは受精できる精子になりません。ICSIの場合には、運動する形のよい精子を選びますので安心していただいて大丈夫です。
卵子を見た目で判断できることはある?
卵子を見た目の状態から判断することは難しいものがあります。
「これはいいな」と思う卵子であっても、受精後、順調に分割して成長してくれなかったり、「これは、ちょっとよくないな」と思う卵子が順調に成長して妊娠していくこともあります。
卵子は、同じ周期のものでも違いがあり、いわゆるキレイな卵子というのは、まん丸で、色も透き通ったようにきれいに見えます。ただ、このような卵子は、あまり数は多くありません。卵子の多くは中に小さなつぶつぶがあったり、水たまりのような小さなものが見えたりします。でも、これらを状態が良くない卵子とは言えず、そう見えるものが多いということです。
このような卵子が不妊症の女性に多いのか、それとも排卵誘発をしているから多いのかはわかりません。
誘発方法の違いは卵子に現れる?
排卵誘発方法の違いで、卵子の質に差が出るとは、一概に言えません。ただ、1つ言えるのは、強い排卵誘発をした卵子にはバラツキがあるということです。成熟度だけでなく、見た目のバラツキも多いという印象です。
これが、排卵誘発をしない、もしくは低刺激での排卵誘発をした卵子には、あまり差がでないように思います。
しかし、受精後の成長に大きな違いがあるかというと、それも一概にあるとは言えません。それだけ卵子を見た目だけから推し量ることができないということなのです。
そこには、もちろん精子の役割もありますが、受精後の胚の成長にはさまざまなことが起こり、簡単に順調に成長するわけではありません。それは、年齢が高い方の卵子だから当然難しいということではなく、最終的にはやはり卵子一つひとつの差ということだと思います。
培養液や培養環境で変わることは?
当院は、シングルメディム(受精後から初期胚~胚盤胞まで同じ培養液で成長させることができるもの)を使っています。受精の翌日に培養液を交換し、その後は同じ培養液で培養します。3日目のおよそ8細胞期で一度観察し、この時培養液を交換します。
インキュベータは、個別培養器を使い、移植するまで、もしくは凍結するまでそのご夫婦の専用となります。これは、取り違えを起こすことや扉の開閉時に起こるストレス軽減となり、大型のものより良い環境で培養ができます。
胚培養士として患者さんに伝えたいことは?
よく患者さんから、採卵できた卵子は全部子宮に戻ってくるのかと聞かれますが、採卵時点ではなんとも言えません。胚培養士として懸命に卵と向き合うだけなのですが、年齢による卵子の見た目の差はあまりなくても、やはり質は低下しますので、赤ちゃんが欲しいと考えたら、少しでも早く妊娠にトライしていただきたいと思っています。
私自身、うまく行かなかった患者さんには、思いが強く残り、何か培養に問題はなかったのかとよく考え、検討しています。そして、胚培養士全員で1組でも多くのご夫婦に赤ちゃんが授かるようにと取り組んでいます。