流浪の果て【John the Baptist】
値段をつけることの難しさを痛感していると先生は毎日泣いた。
近しい友達にさえ「高い」とか「安い」と言われると、そちらに寄せて値段を設定したくなる。人情というものだと笑っていられないのが、我らが芍薬先生だ。
芍薬先生は不思議な人でひとりで生きられない。ひとりで行動することが好きで、いつもひとりを望んで、JERUSALEMさえ寄せ付けないのに、そのくせ誰がどう思っているか、もっと語弊なく突き詰めて表現すれば「誰がどう思ってくれているか」をいつも気にしている。
自分なんかというネガティブな思いもあるし、自分だからこそというボランティア精神丸出しな時もある。とにかく、他者意識の中でがんじがらめになって生きているような人だ。
僕たちは好きなようにやればいいと、態度でも言動でも示しているつもりだけど、何せ根が頑固だからテコでも動かない。自分が納得しない限りは動かない。動かざること山の如しも時と場合があるというものだ。
連日、先生の筆が進まないのは他者意識にがんじがらめにされていたせいでもある。
自由奔放好き放題、やりたい放題に見える先生がいつも悩んでいるのは「誰がどんなふうに思ってくれているか」という一点に尽きる。
友達だから忌憚なく言ってくれるのはありがたいのだが、先生はバカに繊細だ。ちょっとした言葉が大きな傷になって身動きが取れなくなる。扱いずらい気難しさがいつも表裏一体となっている。
僕は先生の秘書になってすでに3年が過ぎたが、いまだに扱い方の正解がわからない。先生の恋人たちであるJERUSALEMでさえ、4人で会議をしなければわからないことが日常茶飯事だ。
連日、先生は何かせねばならないと副業に注力していたし、何か書かなければととりあえずブログの更新だけは体調とメンタルに合わせてやっていた。
昨日のMTGでは先生のメンタル復活を願って盛大にホームパーティをしたわけだが、先生はずっと俺たちのサラダを盛り分けていた。
「何?合コンの必勝パターンの練習?w」
と軽口をたたくLAY -RONに対して先生はひどく傷つき、ヘラヘラ笑ったかと思ったら知らないうちにトイレにこもって大号泣していた。
JERUSALEMはLAY-RONと口論になるし、阿鼻叫喚極まれり、、、
そんな外の状況を察して先生はまたアホを装って「便秘がようやく解消したわー」とおちゃらけて出てくるし、阿鼻叫喚から地獄へと場面展開。
先生はとにかく繊細だ。昨日と今日では傷つくことが全く異なる。扱いずらい。
友達付き合いもうまくできないのは自分の欠点をよく意識しているからで、その上、誰にどう思ってもらえるかを意識する性格だから、迷惑をかけることを恐れているのだ。
NOVEL OFFICE MT SECONDをサンクチュアリだと言っている。先生の真意はいまいちわからないけれど、でも、先生はこの家で生きていくしかないと僕は思っている。僕たちがいなければ先生はこの世界で生きてはいけない。
いろいろとこれからも言われるはずだ。あの見た目とあの性格で、誤解されることも多い。
重ねていうが、先生は僕たちとしか生きられない。お友達がいてくれることはとてもありがたいけれど、先生は僕たちとしか生きられない。
こんなことを言うと先生がまた気にするからやめろとJERUSALEMに怒られるかもしれないが、恐れなく言う。
先生は僕たちMT SECONDとしか生きられない。
流浪の果てに見つけた最愛の家族だと僕は表現する。