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とある冒険者の手記

A.不満

2022.03.26 05:41

バルデシオン分館にクリスタルを持ち帰ったアリス。

その表情は明らかに不機嫌であった。

原因は、義姉のガウラが自分を戦闘から遠ざけようとしていること。

身軽な服装に着替え、ベッドにうつ伏せに倒れ込む。


「俺ってそんなに信用無いのかなぁ…」


実力を認めていると言葉で言われても、これではその言葉も疑わしい。

彼女が嘘など吐く性格ではないのは重々承知しているが、自信を失う。


「帰ってきてたのか」

「ヘリオ…、ただいま、そしておかえり」

「あぁ、ただいま」


アリスの様子に、現状を察したヘリオ。

アリスが横になっているベッドに腰掛けた。


「なぁ、ヘリオ」

「なんだ?」

「俺ってそんなに信用のないかなぁ…」

「……」


そんなことは本人に聞けと言う様に、沈黙するヘリオ。


「義姉さんの考えてる事は何となく分かるんだ。身内を危険に晒したくない、失いたくないって気持ち。俺も同じだからさ…」


アリスの言葉を黙って聞くヘリオ。


「ヘリオを護れって言われたこともあるけど、ヘリオは今、賢学を学んでて危険とは程遠いし。俺は義弟として、1番危険と隣合わせの義姉さんを護りたいのに…」


アリスは枕をギュッと掴む。


「頼る事をしない義姉さんが、そのうち周りの期待に押し潰されないか心配で仕方ないよ…」

「…それを本人に言ってやれ。ぶつかるかもしれないが、言わなきゃ伝わらんだろ」


ヘリオの言葉に、アリスは顔を上げる。


「俺は、姉さんの気持ちも、あんたの気持ちも理解してるつもりだし、口は出すつもりは無い。自分でそれを伝えろ」

「…うん。分かった。ありがとう」


アリスは体を起こし、ヘリオに抱きついた。


「もし喧嘩になって、俺が凹んだら、慰めてくれる?」

「…それは面倒だな…」


ヘリオの返事に“なんだよー!“と頬を膨らませるアリス。

小さく笑うヘリオ。


ヘリオに愚痴をこぼした事で、少し気が晴れたのか、その後は調べ物を再開し、ガウラの帰りを待つのであった。