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陣痛促進穴について〜経絡治療からみた予定日超過・微弱陣痛の治療と病因病理〜

2017.11.29 01:56

私たちの鍼灸治療室には、妊婦さんが妊娠中の様々なマイナートラブルの治療と予防のために経絡治療を受けに来られます。

その中に、予定日を過ぎても中々産まれず、陣痛促進剤は使いたくない、帝王切開は回避したいといった方々からの依頼を受けることがあります。

そんなときに決まって使うのが「陣痛促進穴」です。


東洋はり医学会京都支部の宮川先生と同じく東洋はり医学会新潟支部の斎藤先生にこのツボを教えていただいたのですが、場所は督脉の際で、普段は消えていますが、本当の予定日の1週間前になると第3胸椎棘突起の高さに出現し日を追う事に下に降りてきます。

最終的に第5胸椎棘突起の際に降りてきたら2日以内に陣痛が始まります。

陣痛促進穴の触覚所見ですが、硬結や圧痛や陥下ではありません。

1ミリも浮かさず1ミリも沈めず圧0の手の重さで督脉の上の方から主に左脊際を軽~く撫で下ろしていくと示指の指腹に何か見逃せない非生理的反応が引っ掛かります。

それが陣痛促進穴です。

予定日を過ぎた妊婦さんが来られたら、先ずこの陣痛促進穴が現れているか?現れているとしたらどの高さかを診て予後を判定します。

第3胸椎棘突起まで降りてきてたら第5胸椎棘突起まで降りてくるように、円皮鍼を貼ります。

いよいよ第5胸椎棘突起まで降りてきたら円皮鍼を貼り直して後は朗報を待ちます。


予定日超過や微弱陣痛の病因病理

命門の陽気不足か肝鬱気滞瘀血です。


生殖を完徹させる働きを「腎臓」とします。

腎が働きを為せば宿った命を十月十日間

大事にしまい込んで決して漏らすことはありません。これを「封蔵」とします。

その間腎臓という海の中で育まれていきますがこの海を「腎陰」とか「腎水」とします。

ただし、水だけだと冷えてしまうので元々陽気が備わっています。これを「命門の火」とします。水中の中の決して消えない火です。この命火が水中を適温に保ちます。


また腎陰は全ての陰気の元締めで「元陰」とします。

命門の火は腎陽、全ての陽気の元締めで「元陽」とします。

陰は冷やす潤す引き締める性質があり、陰気とは静寂鎮静の働きです。

陽は温める乾かす発散する性質があり、陽気とは活動興奮の働きです。


陣痛を起こすためには子宮を活動興奮させなければりません。

つまり腎陽である命門の火がここぞとばかりに燃えなければならないのです。


そんなわけで、陽気が不足している方は中々陣痛が起こらないということになります。


だから『和漢三才図会』にあるように古来より右の至陰の先端(右至陰尖)にお灸をして火=陽気を加えるのはそのためです。

十分な陽気が足りていたとしても気が通じていないと陣痛が起こりません。

気滞です。

気滞の原因はストレスです。

ストレスに耐性を発揮するのが免疫機構「魂」機能を有する肝ですが、繰り返される刺激や抑圧によってついには肝気は滞ってしまいます。

肝気は、人体のあらゆる細胞・組織・器官・臓腑経絡・四肢百骸に気血を巡らして養い活動力を与えています。

これを「疏泄」とします。

当然子宮にも疏泄しています。

肝気が滞ると子宮に気血が通じなくなって陣痛を起こすことができません。



予定日超過や微弱陣痛の鍼灸治療
◎本質治療

証(病因病理)を明らかにし、それに基づいて治療をします。

■命門の陽気不足を改善します。

経絡治療学では腎虚証で本治法をします。

■肝鬱気滞瘀血を解きます。

経絡治療学では69難型肺虚肝実証か75難型肺虚肝実証か脾虚肝実証を見極めて本治法をします。


◎対症療法

■安産灸

肩井・合谷・三陰交・右至陰尖に知熱灸10壮。

■陣痛促進穴

円皮鍼を貼付。


◎予防

■安産灸

妊娠初期から安産灸を行い、あるいはセルフケアしてもらい体を整え、予定日の20日前から肩井・合谷・三陰交・右至陰尖に知熱灸7壮、10日前になれば10壮に増やす。

暇さえあれば肩井・合谷は自宅でご主人にも協力してもらって指圧。

※詳しくは以下を参照してください。

■養生

□ストレスを溜めない。

□適度に動く。

最後に注意事項として、いつまで治療するかですが、僕は最大で満42週目で後数時間で強制入院の方を治療してギリギリ間に合ったことがあります。

絶対に最後まで諦めてはいけないことを学びました。

※症例は以下を参照してください。

ですが、やはり現実問題担当医から告げられたタイムリミットまでです。

それを超えたら入院になりますが、そこまでやってダメなら後は医療機関に委ねましょう。


これも大事なことですが、妊婦さんの治療を請け負うときは、いつ何時何があってもいいように必ず母子手帳を携帯してもらいましょう。

治療中やその行き帰りに破水することだって当然なきにしもあらずです。

前期破水した場合24時間以内に医療機関にて適切な処置を受けるべきですが、以前に治療を請け負ったことがあります。

以下の記事を参照してください。

一番いいのは妊娠初期から定期的に鍼灸治療を受けてもらうことが妊婦さんにおけるリスクマネジメントです。


本治法で生命力を強化することが何よりですが、安産灸単独でもマイナートラブルの治療と予防ができます。

何より妊娠中安産灸を続けていただいて生まれたお子さんのほとんどが肌がきれいです。


これは鍼は気を動かしますが、お灸は血を動かすからです。

先天性の疾患の原因を突き詰めていくと瘀血を抜きには語れません。


聖典『素問』にてんかんの原因は妊娠中のトラブルにあるとありますが、てんかんだけではないようです。


研究を重ねて分かったことは、妊婦がストレスを受けたとします。

強い抑圧は季肋部が緊張してはります。

季肋部の裏には膈兪があります。

膈兪の上には心兪、下には肝兪があります。

心は血脈、肝は蔵血を司ります。

その間に位置する膈兪は血の運行に重要な役目を果たす要所です。

血会とつくのは当然です。

季肋部がはると膈兪がつまります。

血が滞れば瘀血が発生します。

この瘀血は胎盤を通じて胎児に影響します。

これが胎毒です。

ここに、安産灸の伝統を絶やしてはならない理由があります。