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粋なカエサル

ヴィーナスの恐ろしさ①

2017.12.01 00:10

ゼウスに愛された女性に激しい嫉妬心を抱き、時には焼き殺す(ディオニュソスの母セメレ)ことまで行うゼウスの正妻ヘラも恐ろしいが、ヴィーナス(アプロディテ)も負けず劣らず手の込んだ残忍さを示す。ヴィーナスの愛人と言えば軍神アレスが有名だが、美しい男性の代名詞にもなっているアドニスも多くの画家に描かれている。そのアドニスの誕生にまつわる話。

パポス王キニュラスと王妃ケンクレイスの娘スミュルナは目を見張るような美女に成長。母ケンクレイスはつい口走ってしまう。「女神アフロディテよりも、自分の娘が美しい」と。神と人間の間の一線を越えるようなこうした傲慢な人間の言葉を神々は何より嫌う。当然アフロディテは激怒。そして驚くべき行為に出る。ケンクレイス本人に対してではなく、娘のスミュルナにある感情を植え付けたのだ。それは、なんと実の父であるキニュラスへの恋心。道ならぬ恋に悩むスミュルナ。苦しい心の内を打ち明けられた乳母は、スミュルナを自殺させない方法は恋の成就しかないと考えるに至り、間を取り持つ。王に恋い焦がれるさる貴婦人と身分を偽り、灯りをつけないという条件でベッドを共にする父娘。数日後、自分をそこまで深く慕う女性の顔を見たくてたまらなくなった王は灯りをつけてしまう。交わり続けた相手は、なんと実の娘。激怒した王は、剣を抜きスミュルナを切り殺そうとする。逃げるスミュルナ。逃げても逃げても追手はあきらめない。スミュルナはどうしたか。神々に祈り樹木(没薬)に変身したのだ。そして、月が満ちて父親であるキニュラスとの子を産む。これがアドニスである。そしてヴィーナス(アフロディテ)は、みずからの手で近親相姦させてスミュルナに産ませた子アドニスに恋するのだ。そしてヴィーナスとアドニスの関係に嫉妬したアレスが猪に姿を変え、ヴィーナスが止めるのも聞かずに狩りに出かけたアドニスを突き殺してしまう。傷心のヴィーナスも多く絵画に描かれている。ギリシア神話の世界、面白すぎ。