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マヤ

『W旦那+(プラス)』第1~ 2話(理愛の店) 三代目妄想劇場

2017.11.15 03:00

「理愛ちゃん」



店先の小さな窓を開けて、隆二が顔を出した。



「オーナー…いらっしゃいませ」



カウンターの中から、柔らかな笑顔を見せる。



理愛と呼ばれたこの女性。



世の女性本来の特徴である、ふっくらした丸みのある体型ではない。



細い腰にしなやかで長い手足、首も長く透き通るような白い肌をしている。



少し緑がかった銀色の髪が腰まで伸び、全体にゆるいウェーブがかかっている。



胸の厚みもないので、一瞬見た目には男女の区別がつかない。



瞳の色は、深海を思わせる深い青。



長い睫毛と薄いベージュ色の眉、唯一ふっくらした唇は美しいピンク色をしている。



柔らかいベージュ色のシルクシャツを羽織り、カーキ色で薄手のストレッチパンツを履き、薄いグリーンのエプロンを着けている。



4坪ほどの大きさで、カウンターのみがある

「カフェ&バー リアの店」



小窓はテイクアウト用の接客に使用している。



その窓から上半身だけ出し、



「俺の水、まだストックあったっけ?」



「手持ちの全部飲んじゃって…」と隆二が言う。



「はい、すぐお持ちします」



音も立てず、しなやかに冷蔵庫へ向かう。



「今日はショップにいらっしゃってたんですか?」



特に興味も無さそうに理愛が聞く。



「うん…新商品発売の初日でね」



「オーナーお一人で?」



「そう」



「何か召し上がりますか?」



「今からジムだからいいや。また夜に覗くね」



「はい…」



あまり抑揚のない声だが、とても美しく耳に残る。



「理愛ちゃん…何か思い出した?」



「いえ…なにも」



「そっか…焦らなくてもいいよ」



隆二が人懐っこい笑顔を見せる。



理愛はなにも答えず、隆二が好んで飲む、水の入ったペットボトルを手渡す。



理愛の細い指先を包むように受け取り、


「行ってくるね」と言って、軽くキスをする隆二。



理愛は、特に表情を変えることもなく、隆二を見送った。






中目黒にある「カフェ&バー リアの店」



昼はテイクアウトのみの営業で、夜は会員制のバーになっている。



カウンターに7席のみの小さな店舗だ。



夕方近くになって、臣がフラッとやってきた。



「いらっしゃいませ…オーナー」



理愛が静かに微笑む。



「理愛、コーヒー入れて」



「かしこまりました」



営業中は長い髪を後ろで束ねていて、淡いグリーンのバンダナを結んでいる。



なにか動作を起こすたびに、全身が匂い立つよう…



麗人という言葉があるが、こういう人のことをいうのか…



そんなことを思いつつ、カウンターの椅子に腰掛け、理愛をじっと見つめる臣。



理愛はコーヒーを立てながら、同時にカップを温めようとして、誤って指に熱湯をかけてしまう。



「理愛⁉️大丈夫?」



すぐにカウンターの内側に回り込み、手を取る臣。



「あ…はい、平気です」



「平気なことないだろ?赤くなってる…」



水道を目一杯出し、しばらく黙って理愛の指を冷やし続ける。



「オーナー、もう大丈夫ですから」



「…冷たい手だな…理愛」



そう言って、臣は自分の頬に理愛の手を持っていく。



「……」



「後は自分でするから、休憩してていいよ」と臣が言う。



「はい…そうします」



すぐにエプロンを外す。



エプロンを持ったままの理愛の手を掴み、自分の方に引き寄せ、



「理愛は休憩の度にいちいちエプロン外すの?」



「いけませんか?」



「いや…理愛がそうしたいのなら…」



と言って、軽くキスをする臣。



理愛は、特に驚いた様子もなく、



「オーナー、外から丸見えです」と言う。



臣はシンクに腰掛け、理愛の細い腰に手を回している。



臣も、特に気にする様子もなく、



「ほんとだ。カーテンつけよっか?理愛」



「隆二さんがなんと言われるか…」



「アイツはほっときゃいいよ」



臣は優しく理愛を抱きしめる。



店内に入れたてのコーヒーの、いい香りがたちこめてきた。




End