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マヤ

『W旦那+(プラス)』第3~4話 (回想~理愛の店) 三代目妄想劇場

2017.11.15 03:05

理愛との出会いは突然だった。



2012年、三代目がアリーナツアーで全国を駆け巡っていた時のこと。



11月の神戸公演が滞りなく終了し、その日の夜遅くに、「海が見たい」という臣の提案で、隆二と二人で須磨海岸を訪れた時の事だった。



肌寒い夜の浜辺に横たわる、美しい人影があった。



月光に照らされて、暗闇に白く輝いている女性。



そのあまりの美しさに、一瞬で心を奪われた。



特に目立ったケガもなく、意識もしっかりしていたが、完全に記憶を失っているようで、自分の名前や住所など、一切覚えていなかった。



そのまま警察まで同行して、身柄を引き渡し、二人の連絡先を告げて、翌日後ろ髪を引かれる思いで神戸の地を後にした。



数日後、警察から連絡があり、警察庁が管理する行方不明者のリストにも該当がなく、身元不明のまま、四国にある救護施設へ引き渡すことになったという。



海外の行方不明者まで調査するとなると、膨大な時間がかかる。



身元が判明しなければ、一生をその施設で過ごすことになる。



「せめて身元がわかるまで、俺たちで引き取らないか?」



臣の提案に、隆二も二つ返事で承諾した。



警察で、身元引受け人の申請が受理され、二人して東京へと連れて帰った。



東京駅に降りたってすぐに、



「名前はどうする?」と、臣が言った。



「困ったね…」



「ねぇ、君本当に名前も覚えてないの?」



隆二が尋ねた。



その美しい女性は、しばらくぼうっとした表情を浮かべていたが、



急に瞳に光が宿り、細い腕を優雅に上げ、指を指した先に、



《ミュージカル リア王》



という看板があった。



隆二「リア…リアっていうの?」



「わかりません…ただ何となく…」



美しい声で女性が答える。



臣「いいんじゃないの?リアで…」



隆二「字はどうする?」



スマホで文字をいくつか打ってみる。



隆二「利亜…理亜…理愛…」



理愛…理性を持って愛する



臣「いいんじゃない?これで」



これからの、三人の未来を予言するような、



その命名は、偶然の出来事だった。





理愛は、記憶を失っていること以外は、健康面でどこも悪いところがなかった。

アーティストとして多忙な毎日を送る二人が留守の間、安心して暮らせるようにと、環境作りを始めた。



中目黒のJ.S.B.ショップ近くに、二人で資金を出し合って、



「カフェ&バー リアの店」を立ち上げた。



コーヒーやカクテルの作り方は、飲食店を経営している友人に手ほどきしてもらったが、元々器用なのか、特に苦労もせず、何でもこなす理愛。



決して愛想が良いとは言えないが、じっと見ていると、夢を見ているようなその美貌が口コミで拡がり、昼のテイクアウトもそこそこ繁盛している。



夜は、客のほとんどがLDH関係者で、客層も良く、二人が長期不在の時も安心だった。



閉店後は日替わりで、それぞれの自宅マンションに連れて帰った。



仕事が終わり何もすることがないと、夢を見ているようにぼうっとしているので、常に誰か信頼できる人の目につく環境で生活させる必要があった。



一人暮らしをさせる…当初から二人の頭にそれは無かった。



一人にしておくと、どこかに行ってしまうかもしれない。



「今夜は俺ん家だよ、理愛ちゃん」



グラスの片づけが終わり、エプロンをゆっくり外す理愛に、隆二が声を掛けた。



「変なことすんなよ」と、臣が言う。



隆二「お前と一緒にすんな」



なんの感情も持たず、二人の顔を交互に見る理愛。



「理愛、明日は連れて行きたい所があるから、早めに店閉めるよ」



理愛の手に触れながら、優しく臣が言う。



隆二「どこ連れていくの?」



臣「お前には関係ない」



隆二「臣、言っとくけど、常に理性を持ってね!」



臣「同じセリフ、そのままお前に返すよ」



その後の隆二の反論に全く耳を貸さずに、



「理愛、また明日ね」



優しく頭を撫でる臣だった。




End