No02： へー！

建築に詳しい人ならこの家が移築であることはすぐにわかると思います。

でもほとんどの人はこの家が昔からこの土地に建っていたと感じるようです。

『実は古民家を移築再生したものなんですよ。』

と説明をするとへー！と気持ちのよいリアクションが返ってくる。

元々建てられた時期を数えると築150年を越すこの家は

これまでどれだけの人を雨風から守ってきたのだろう…

伊勢湾台風の時は屋根が半分吹き飛ばされて

その後台風がくる度に家族総出で家に綱を張ったのだと

この家で育ったおあばあちゃんが教えてくれた。

玄関の横の敷居のねずみがかじったような跡について尋ねたら

『あぁ…懐かしいなぁ…末の弟がよくここをかじってたなぁ…』

という予想をこえた答えが返ってきた。

すべての風景はそれぞれに物語を持っている

僕らがそのちいさな声に耳を傾けたときにだけ静かに語りだす。

そんなとるにたらない物語が

たまらなく愛おしい。