俳句の作り方 ルールやコツを初心者にもわかりやすく解説
https://benesse.jp/kyouiku/202107/20210727-2.html 【【小学生・中学生向け】俳句の作り方 ルールやコツを初心者にもわかりやすく解説】より
世界で最も短い詩といわれる俳句。実は、「型」にはめるだけで誰でも簡単に一句詠めてしまうことを知っていますか? ”目からウロコ”の俳句の作り方を教えてくれるのは、TV「プレバト!!」(TBS系)の俳句コーナーでおなじみの夏井いつき先生と、夏井先生と一緒に「日本中の子どもたちに俳句の楽しさを知ってもらいたい」と「日本俳句教育研究会」の活動を続けている八塚秀美先生です。
俳句とは
「俳句を作ってみましょう」と言うと、次のような答えが返ってきます。
「5・7・5のリズムで季語を入れて作るなんて難しい」
「俳句にするような感動的な場面には出会わないから、俳句なんて思いつかない」
「おじいさんやおばあさんが使うような昔の言葉の使い方なんてわからない」
「季語なんてぜんぜんしらない」
だいたいこれが、皆さんが共通に持っている俳句に対するイメージなのだと思います。
ところが、このイメージが実は間違っているのです。
まずは、俳句が、「5・7・5のリズム」と「季語」で詠むものだからこそ、誰もが簡単に作ることができるのだ、というお話からはじめていきましょう。
5・7・5のリズム
俳句の初めの5音を上五(かみご)、真ん中の7音を中七(なかしち)、最後の5音を下五(しもご)と呼びます。
たとえば、今あなたに気持ちの良い風が吹いてきたとしましょう。この風は、「夏の風」「南風」という季語です。「夏の風」を上五に置くだけで、もう俳句の3分の1ほどができあがってしまうのです。
「季語」で詠む
「季語」とは、俳句の季節を表す言葉です。季語は覚えておく必要はありません。まずは、簡単な5音の季語集手元に置いておけば十分です。
https://drive.google.com/file/d/1S_cUyBs7EyzzMg_zTKzSFdAGIN_RJ_YD/view
(参考:YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』「【アーカイブ】登録者5万人ありがとう句会ライブ」より)
季語は、気をつけてみると身の回りにたくさん見つけることができます。さがしてみるのも楽しいですね。
また、季語についてさらに詳しく知りたくなった人は、『歳時記(さいじき)』という季語の解説や例句を載せた本を開いてみてくださいね。
俳句の作り方
I 一物仕立てと取り合わせ
俳句には二つの型がある俳句を作り方によって分けると、1.「一物(いちぶつ)仕立て」
2.「取り合わせ」の大きく二つに分けることができます。
俳句には「季語」が入るのでしたね。ということは、
1は「季語」(一物)だけのことを詠んで作った俳句です。
2は「季語」と、季語とは関係ない「俳句のタネ」を取り合わせて作った俳句です。
「俳句」というと、ほとんどの皆さんが、1の季語だけを詠んでできた句を想像してしまうのですが、実は、世の中にある俳句を見てみると、2の「俳句のタネ」と「季語」を取り合わせる俳句の方がずっと多いのです。
「一物(いちぶつ)仕立て」と「取り合わせ」の違いとは
夏の花「紫陽花(あじさい)」を読んだ俳句を例に、その違いを見てみましょう。
「紫陽花」は、梅雨時を代表する花で、沢山の花が集まって毬(まり)のような丸い形をしていて、咲き始めからだんだん色を変えていくことでもよく知られていますね。
1.紫陽花の大きな毬(まり)の皆褪(あ)せし 松本たかし
2.紫陽花やきのふの誠(まこと)けふ(きょう)の嘘(うそ) 正岡子規
1は、「紫陽花」を観察した「一物仕立て」の俳句です。
紫陽花の大きな毬のような花の一つ一つが、全て色が変わって褪せて(元の色がなくなって)しまった様子を詠んでいます。この句からは、色が変わってしまった今の花の様子だけでなく、紫陽花の色の移り変わりに注目しながら、その変化を楽しんでいただろうこれまでの時間を想像することもできます。
2の俳句は、「紫陽花や」と、季語とは全く関係のない12音「きのふの誠けふの嘘」(俳句のタネ)を「取り合わせ」た俳句です。
「きのふの誠けふの嘘」という俳句のタネは、〈昨日まで本当だと思っていたことが、嘘だったと分かった〉という意味にも、〈昨日は本当のことを話していたのに、今日は嘘ばかりいっている〉という意味にも考えることができる、楽しい俳句のタネです。
この俳句のタネに、色を変えていく花「紫陽花」が取り合わされることで、この句を読んだ読者は、〈誠が嘘に変わるとは……、新事実の発見があったのかな? それとも、勘違いに気づいたのかな?〉などとその理由を様々に想像し始めるのです。
簡単に作るなら「取り合わせ」
初めて俳句を作る場合にオススメするのが、2の「取り合わせ」の作り方です。
1の「一物仕立て」の作り方をオススメしないのは、ふだんの生活で、季語をじっくり観察して誰も気がつかないような新しい発見をすることが難しいからです。
2の「取り合わせ」ならば、日常でつぶやいた12音(俳句のタネ)に、季語を取り合わせるだけで簡単にオリジナルな俳句にできるのです。
II 季語を「取り合わせ」る
取り合わせは俳句なの?
俳句のタネに季語を取り合わせるだけで、どうして俳句になるのか? 実際に季語を変えて練習してみましょう。
たとえば「長い手紙を書きたい日」という「俳句のタネ」ができたとします。作者は、簡単なやりとりのメールではなく、長い手紙を書きたくなったのですね。
試しに、「春の星」「夏の星」「秋の星」「冬の星」の季語を取り合わせてみましょう。あなたはどの季語がぴったりだと思いますか? 俳句のイメージはどう違ってきますか?
1. 春の星長い手紙を書きたい日
2. 夏の星長い手紙を書きたい日
3. 秋の星長い手紙を書きたい日
4. 冬の星長い手紙を書きたい日
1. 春の星
春の夜はおぼろげにかすみ、星もぼんやりとして多くは見えず、瞬(またた)きもかすかです。そんな夜に書く長い手紙とは……。ぼんやりと意識し始めた恋の手紙でしょうか。「春」という季節に注目して、新しく始まった生活を報告する手紙……と考える人もいるかもしれません。
2. 夏の星
涼しくなってきた夜に、やっと手紙を書き始めたのでしょうか。夏の星には、昼間の暑さのほてりが残っているようです。もしかすると、心の中に抱えている思いや決意を手紙にしているのかもしれません。「夏休み」の夜に書かれた、楽しかった休み中の出来事が書かれた手紙……と考えることもできます。
3. 秋の星
大気が澄む秋の夜空は、星も美しく見え、「天の川」「流れ星」も秋の季語となっています。爽やかな過ごしやすい秋の夜に、きらめく美しい星を意識しながら書く手紙とはどんな手紙でしょう。外には虫の声も響いています。一方、「秋」とともに深まっていく物思いに注目して、別れを告げる手紙……なんて考える人もいるかもしれません。
4. 冬の星
冬は大気が冷えていて、星も冴えるようで、鋭さだけでなく神秘性すら感じさせます。そんな厳しい冬の夜に書く手紙とは……。どうしても書かねばならない理由があって、突き動かされるように書いている手紙ではないかと思われてきます。その手紙を書かねばならない訳はなんだろう……などとつい考え込んでしまいそうになります。
どうでしたか? 取り合わせる季語によって「手紙」の内容が違ってきますね。あなたはどの季語が好きでしたか?
季語の「取り合わせ」に正解はない
「取り合わせ」る季語に正解があるわけではありません。あなたのつぶやいた俳句のタネに似合うなと思う季語を「取り合わせ」るだけで、その季語が俳句の気分を決めてくれるのです。
「取り合わせ」る季語は、俳句のタネに近すぎない方が素敵な句になります。近すぎると、当たり前の「一物仕立て」の句のようになってしまい、オリジナリティがなくなってしまうので、注意しましょう。
III 取り合わせの俳句を作ろう
「取り合わせ」の一番簡単な型
ここでは、取り合わせの中でも一番簡単に作れる型、「12音の俳句のタネ」+「5音の季語」の作り方を紹介します。
1. 俳句のタネを探そう。
先に、12音の俳句のタネを見つけましょう。
5音+7音でも、7音+5音でもどちらでもかまいません。ふとつぶやいた言葉でも、日記の中から12音のフレーズを見つけてもかまいません。5音のものを見つけて、それを7音で説明してみるのもよいでしょう。
2. 俳句のタネは、季語を含まなければどんなものでもOKです。
出来事・記憶・もの……他の人が思いつきそうにないことをなんでも12音にしてみましょう。
大切なのは、自分のオリジナルの俳句のタネを見つけることなので、12音にこだわりすぎる必要もありません。1音多くても、少なくてもかまわないので、自分らしい俳句のタネを探してみましょう。
音数の数え方は、「チューリップ」を覚えておけば大丈夫です。「チュ」「-」「リ」「ッ」「プ」で5音です。
3. 最後に俳句のタネに似合うと思う季語を取り合わせれば完成です。
5音の季語集から選んでみましょう。
俳句のタネに似合いそうな季節から、これだと思う季語を選ぶと、季語が俳句のタネをよりあなたらしいオリジナルな俳句にしてくれます。
季語は、上五においても、下五においてもかまいません。俳句のタネのリズムに合わせて、ぴったりくる方に置きましょう。
5音の季語以外にも、4音の季語を使いたい場合は「や」をつけることで、上五に置いて使うことができます。
例 春風や、ひまわりや、満月や、こがらしや
4. 最後に、できあがった俳句を、575の間をあけずに一行で書けば完成です。
IV 俳句でやっていけないことはない
ここまで読んできた皆さんには、もう、はじめの
「俳句にするような感動的な場面には出会わないから、俳句なんて思いつかない」
「おじいさんやおばあさんが使うような昔の言葉の使い方なんてわからない」
が、間違ったイメージだったことに気づいていることでしょう。
「取り合わせ」では、俳句の気分を「季語」が語ってくれるのでしたね。日常の小さな体験やつぶやき(俳句のタネ)が季語の力を借りて、その人らしい一句に仕上がるのですから、俳句を作るために先に感動する必要はないのです。
また、オリジナルな自分らしい俳句のタネを見つけることが大切なのですから、昔の言葉を使う必要もありません。話し言葉をそのまま使ってもかまいません。俳句にやっていけないことはないのです。
俳句を投句する
作った俳句は、投句してみましょう。
インターネットで簡単に無料で投句できるものから、はがきなどで投句するもの、また投句料が必要なものなどいろいろです。新聞にも俳句の投稿欄がありますから、ぜひチェックしてみてください。
まずは、気軽に投句できるものからはじめてみましょう。
投句先のご案内
インターネットで応募できる投句先(夏井いつきが選者をしているもの)
夏井いつきが選者をしていて、インターネットで無料で応募できる投句先は、以下の通りです。(それぞれ、ページ内の投句フォームから応募ができます。)
1. 【Web】俳都松山 俳句ポスト365
2. 【Web・連載】『通販生活』俳句生活~よ句もわる句も~
3. 【ラジオ】南海放送 夏井いつきの一句一遊
4. 【テレビ】NHK『ギュッと! 四国』
俳句大賞
小中学生を対象としたものから、大人と一緒に応募するコンクールまでいろいろあります。募集時期が様々ですので、これぞ! という俳句ができた時には、興味があるものをぜひ検索してみてください。
(募集が開始されると、HP上の応募フォームが利用できるものも多いです)
1. 「おウチde俳句大賞」
2. 「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」
3. 「佛教大学小学生俳句大賞」
その他、地域限定の俳句大賞もたくさんあります。ぜひ応募してみましょう!