オムニバス映画『オトギネマ』試写会レポート
2021年1月に企画を立ち上げた映画『オトギネマ』。一年間かけて、オムニバス全5話を撮影した作品が今春完成し、関係者とご招待客を招いて試写会を実施しました。観客に届けてこそ本当の完成。そういう意味では、まだまだこれからです。それでも、今回初めて披露したことで、一歩完成に近づいたような気がしました。今後とも応援よろしくお願いいたします。
さて今回の試写会のレポートを、「八月の雪」「桃太郎殺人事件」の脚本に参加した脚本家の進藤きいさんに書いていただきましたので、ぜひお読みください。
(監督・プロデュース:難波)
短編オムニバス映画『オトギネマ』が完成し、3月20日(日曜)なかのZERO本館視聴覚ホールにて関係者試写会が開催されました。
関係者はもちろん、SNSでの告知で知った方、以前、仕事でいっしょだった方など多くの方が関心をよせてくださって、当日はなんと70名もの来場者で客席はほぼ満員状態となりました。
当日、仕事終わりに駆け込んで観に来てくれた方もいて、スタッフ一同、うれしさで心の中は沸騰状態でした!『オトギネマ』の上映時間は約42分。会場が暗くなり上映が開始されると、小さな笑い声が聞こえて、リラックスして映画を楽しむあたたかな雰囲気が会場を包みこんでいました。
試写会に行くよと言ってくださる方が増えていったとき、「ちょっとこわいな」とつぶやいた難波監督。それもそのはず、難波監督にとってお芝居をちゃんと監督するのは15年ぶり。しかも企画段階のゴールは「みんなでつくることを楽しもう」というささやかなものでした。
だから短い作品ですが、脚本家はあえてチーム制です。駆け出しの脚本家から、100本以上の作品をもつベテラン脚本家まで、手をあげた人はできるだけ参加できるようにしています。制作担当(金子英恵さん)の指示のもと、ロケハン、小物手配、当日のお弁当も手分けし、現場の緊張した空気と役者やスタッフの高い熱量を浴びながら、まさに「みんなでつくる」ということを体感できた現場でした。
上映は、ポップなエンディング曲とともにエンドロールが流れ終了。大きな拍手が会場中に響き渡りました。上映後は、役者と脚本家の紹介とともに、それぞれの作品への思いから紆余曲折の撮影裏話へと話がはずみ、おおいに盛り上がりました。この裏話を聞いたうえで、もう一度観てみたいという方も!
(2021年7月25日撮影)
「地上300メートルの恋」(かぐや姫)は、屋上が舞台のラブストーリーです。
撮影日はカンカン照りの真夏の太陽が降り注ぐ、撮影としては最悪の状況。逃げる場所もなく倒れそうになりながらの撮影でしたが、この暑さによる汗がかえって死への恐怖という臨場感を醸し出しています!
(2021年9月4日撮影)
「八月の雪」(雪女)は反対に、真夏設定にもかかわらず撮影日は曇天の秋雨。急遽、屋根にあがり照明を組み立て真夏の光をつくりだすという撮影スタッフの裏技に、おおっと感嘆の声が! そして撮影場所の古い学生アパートにずっといたかのようになじんでいく役者のたたずまいに感動しました。
(2021年7月31日撮影)
「浦島の遺産」(浦島太郎)では、遺産の入れ物としてそれらしいものを調達する苦労がありました。大きな財を築いたに違いない浦島の遺産ですからね! 撮影はビルの1室での撮影ということもあり、観て飽きさせない編集の工夫が随所に見られます。一筋縄ではいかない姉妹の表情もまた素晴らしいのです。
(2021年9月25日撮影)
「憐れ、一寸法師!」(一寸法師)は、日々の忙しさから現場で寝てしまった脚本家のお詫びから、そのおかげでリラックスできたという役者のフォローに会場が沸きました。5本のなかで最も動きのある作品で、暗い倉庫を逃げるドレス姿の少女からの導入です。緊迫したアクションシーンからくすっと笑えてしまうシーンまで役者の変幻ぶりが最高です!
(2021年11月13日撮影)
「桃太郎殺人事件」(桃太郎)は、あえて昭和をイメージしたモノクロ映像。桃太郎の派生作品は意外と多いため、観たことのない桃太郎にしたい、最終話なのでオムニバスの代表となる作品にしたいという難波監督の熱い思いもあり、プロット段階から脚本家には相当なプレッシャーが(笑)。しかも短い時間で気持ちの高ぶりや悲しさをどこまで伝えられるか。二人の役者は休憩でも役柄のまま、ラストシーンのカットのあとも涙がとまらなくなるほどに気持ちをつくっていました。
5作品はラブストーリーからシリアスまであり、映像表現もさまざま。1話8分前後のなかで表現できることには限りがありますが、撮影(大坪隆史さん)や録音・編集(増本竜馬さん)の高い技術により、作品の完成度がぐっとあがりました。
(灼熱の屋上でブームを掲げる、増本竜馬さん)
そして10名の役者の個性があってこそ実現できた作品世界でした。
映像に命を吹き込むのはやはり役者です。別件の撮影や、舞台の合間を縫って参加し、なかには滋賀から参加された役者もいらっしゃいました。プロとして撮影に挑む姿勢には学ぶことばかりでした。
試写を観た方からは、「バリエーションが豊富で楽しかった!」「昔話のその後という設定がいい、もっと見てみたい」「映像が美しくて素晴らしい」「編集技術が高い」「エンディングの音楽がかわいい」「役者たちの表情がすごくいい!」などの声をいただきました。どんな言葉も全部うれしかったです。
上映中、始発にのって撮影に向かったこと、長い撮影で疲れているのに妙に興奮していたことなどを思い出していました。そして、もちろん反省もたくさんあるけれど、それもふくめて出来上がった作品に責任をもつということの意味を感じていました。1本の作品を完成させたことで、また次の作品へとつながっていくのだと思います。
あらためまして、大切なお時間のなか短編オムニバス映画『オトギネマ』の完成試写会に足を運んでくださいまして、本当にありがとうございました。
スタッフ一同、感謝で胸がいっぱいです。
以上