カメ類の性格特性
久しぶりの投稿となってしまった。
春から初夏にかけては、岐阜でカメ研究を継続していたのに加え、来年度からの進路に関する諸々の準備に追われていた。
その間、カメ研究に関して、様々な方との出会いがあり、、南方に生息するカメ類の研究を始めることとなり、、さらに今年度の研究では研究助成を受けることとなり、、、。
…ちょっとパンクしていた。
とまぁ、嬉しい悩みではあるのだが、いろんなことが一気に降りかかってきて、抱えきれなくなっていた。
最近、やっと落ち着きを取り戻してきたところだ。
野外のカメたちと向き合っていると、気が付くことがいっぱいある。
その楽しくて面白い世界を、誰かに伝えたい。
ただし、伝える(記事を投稿する)ためには、落ち着いた環境に身を置く必要があるようだ。
この春から初夏の出来事を振り返ると、そんな風に思う。
さて。落ち着きを取り戻してきた、今日このごろ。
今回は、昨年投稿した記事「クサガメの魅力」について深く言及したいと思う。
以前の記事で、クサガメはペットとして人気が高い、という内容を紹介した。
果たして、その魅力は何か?
この謎について、最近分かってきたことがある。
現在、研究の一環で、野外のカメ類を一時的に飼育して実験を行っている。
対象種はニホンイシガメ、クサガメ、ニホンスッポン、ミシシッピアカミミガメの計4種。
この4種類の野生のカメを、1~4週間程度、一時的に飼育・実験を行い、実験が終わり次第元の生息地に放流等を行っている。
ペットではなく、自然界で生まれ育ったカメたち。
餌資源は自ら採取する必要があり、また、自然環境に適応する必要がある。
このような野生のカメ類を、一時的に飼育し、観察する。
彼らとは、1ヵ月程度の短いお付き合いではあるが、それでも、その間を一緒に過ごしてみると、それぞれの性格に個性があることに気が付く。
現在までに、100匹近いカメたちと、このような出会い・別れを繰り返した。
そのうちの3匹だけ、ヒトを「恐れなくなった」カメがいる。
さらにそのうちの1匹だけ、この短い期間に「恐れなくなった」どころか「懐いた」カメがいる。
それら3匹のカメは、全てクサガメだ。
カメがヒトを「恐れない」・「懐く」といった感触、これを定量的に表すのは難しい。
今回の場合、「恐れない」とは、私(ヒト)の姿が飼育しているカメに見える状況で、そのカメが「逃げる」「隠れる」「怯える」行動を取らず、「逃げようとしない」「隠れようとしない」「気にした素振りがない」場合を意味する。
「懐く」とは、「恐れない」だけでなく、私(ヒト)に「近づく」ことを言う。
野生のカメを持ち帰ってきてしばらく飼う、という調査・研究を続けていると、種間差を感じることがしばしばある。
排泄される糞や給餌させる餌による食の嗜好性、環境(水域・陸域)の利用頻度、警戒心の違いなど…。
実際、食の好みや環境の利用頻度を調べた研究では、それらカメ類に種間差がみられることが知られている。
しかし、カメ類の「性格」を研究した例は見かけたことがない。
やはり、科学的根拠を提示するのが難しいのだろう。
しかし、野生のカメたちを一時的に飼育し、観察を続けている中で、約100匹のうち3匹が「懐く」という事実。
それら3匹は、全てクサガメ。
これは、種によって性格特性が異なるという表れではないか?
クサガメはヒトに懐きやすい性質をもったカメ種である…。
ならば、ペットとして人気なわけも、よくわかる。
もしこの性質が本当にあるとすると、ある疑問が生まれる。
それは、この性質は、自然環境下でどんな選択圧を受けて残った性質なのか、ということ。
…恐らくそれは、日本に生息するクサガメは江戸時代末期に外来種として移入してきた歴史と深いつながりがあるのではないか、と予想しているが、、、
この話は少し長くなりそうなので、また今度。