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音楽家の副業は可能か

2017.12.03 03:38

今朝Twitterでこんなツイートを見つけました。

高野氏がおっしゃることはおよそ正しいことだと思うし、「音楽家に俺はなる!じっちゃんの名にかけて!(そこはルフィじゃないんかーい)」と頑張っているのに、音楽活動からの経済的恩恵が十分に受けられていない人にとっては非常に励ましになる素晴らしい言葉だと思いました。


僕自身も「音楽で食っていく!(演奏家として食っていく!)」と中学生の頃からずっと思ってガムシャラに頑張ってはいましたが、全然実現せず、収入は少なく不安定でした。


そして20代後半、そろそろ引っ越しもしたいので、じゃあ1年くらい普通のバイトをして資金稼ぎをしよう、と軽い気持ちで始めました。

僕が選んだのは普通の小売業の接客で、特にこの仕事に愛情も感じず、単なるお金をもらうためだけにやっている、そんなモチベーションでした。

引っ越し資金は予定通り貯まり、もうやめても良いかと思ったのですが、この副収入があるだけで生活がものすごい安定したことに味をしめ、結局4,5年ほど続けることになりました。


仕事は午前中。朝5時に起きる習慣がついたのもこのときからです(それまで究極の夜型でした)。この朝5時起き習慣は未だ健在で、何時に寝ても5時に起きてしまいます。


13時に仕事が終わり、その足で音楽教室へ直行し、トランペットの練習やレッスンをする、という流れが毎日のように続きました。


しかし、そうはうまくいかないんです。バイトは接客仕事。単純作業とは言え、この一切の愛情も持てない仕事で理不尽なクレームやら、上司がめんどくさかったり、無駄に忙しくて息切れしてしまうようなことが毎日続くと、体力的にも精神的にも本当に参ってしまいます。

バイトだけで帰宅できるなら精一杯やるだけですが、この後がメインプログラムなわけです。でもなんだかイライラして、疲れ切っていると、心を落ち着けて自分を見つめ直す練習などできず、「今日はまあ練習はいっかー...」と、適当に流してしまうことも多くなりました。


この頃に感じていたことは、お金に関する安定感は増したけれど、体力的、精神的に不安定になり、さらに、バイトの時間が存在することで、自分が本当にしたいと思っていること、新しくやりたいと思ったことが物理的にできなくなったりクオリティが下がってくる焦りやストレスも相当なものである、という点。


「バイトさえなければ!!」


この思いは日に日に大きくなり、ついに限界がきてバイトを辞めました。

収入を得るための方法は様々ですから、僕の場合この仕事が全然向いていなかった、というのも大きな原因だったと思います。

高野氏の文章は励ましという点ではとても素晴らしいのですが、ひとつ、落ちている点があります。それは、


クリエイティブなスキルを維持、アップさせるために必要な膨大な時間が含まれていない、という点です。

要するに


他の仕事をやっていたら、音楽家と呼べるレベルを維持することは困難である


ということ。

音楽に限らず、クリエイティブな人たちは単にものづくりをしているだけではありません。生み出す作品ひとつひとつを最高のものにするために日々研究、練習、情報収集などにたくさんの時間をかけています。


音大のころに培ったスキルなど、社会に出てからは本当に一瞬で使い果たしてしまいます。クリエイティブスキルは消費するものなので、維持するだけでも常にしっかりした自分と向き合う時間(=練習など)が必要です。それをしなければすぐさま劣化します。


それでは高野氏がおっしゃっている「音楽家としての役割を良く果たしている人」には到底なれません。なれていても数年で劣化して終わりです。


維持するだけでもそれですから、素晴らしい音楽家になるためにもっと新しいスキルを身につけるなど、本当に毎日たくさんの練習、研究、集取時間が必要になります。


レッスンひとつとってもそうです。

他の人のレッスンシーンを見る機会はあまりないのですが、それでも「それって本当に自分の言葉なのかな?自分の師匠の受け売りや、どっかで拾ってきた情報をそのまま伝えてない?」と感じることがあります。

ようするに知識を得るところで終わってしまっているのです。本来であればその後、検証し、実践し、スキルとして身につけて、いつでもアウトプットできるところまで達したことでなければ人に伝えたり教えたりすることなどしてはいけないと思うんです。でもそういう人結構いる。

こういうレッスンて、先生自身のスキルアップがないから、生徒さんも途中で限界を感じて離れていってしまう。

先生自身がどんどん成長して、いつまでたってもたどり着けないレベルアップをしていると、生徒さんは面白いと感じて、次のレッスンが楽しみになるんじゃないか、と思うんです。だから気が抜けないし、常にレベルアップしようと努力する。そのためには結構な時間が必要になる。


フルタイムで仕事をし、仕事のない日に(収入の発生する)演奏活動をしていらっしゃる方も多いと思うので、一概に不可能ではないと思いますが、僕の経験則からの結論は「そんなの無理」。


しかし、高野氏のおっしゃる「これからの時代は「一つの職業だけで生計を立てる」という考え自体が危険」という考えには大きく賛成です。


実際僕は「トランペット」を軸にして現在、演奏、レッスン、執筆、編曲、楽譜浄書のスキルでどうにか生活をしているわけですが、例えば「音楽家=演奏で収入を得る人」とくくってしまうのは、今の時代に合っていないと思います。


僕も本当は活動内容をもっともっと広げていきたい気持ちはありますが、現段階ではそれぞれにについてのスキル不足を感じているので、あまり広げないようにしています。

それに、いままでの経験則ではスキルアップするとともに視界が開けてきて、これから向かう先の指標が自然と見えてくることが多いので、それまではそれぞれを丁寧に続けていきたいと思っています。


慌てすぎず、しかし怠慢には絶対にならず、じわじわどんどん大きくしていこうかな、と思っている今の自分がいます。




荻原明(おぎわらあきら)