カノッサの道11-教皇の暴走を止め得た男
2017.12.03 06:34
グレゴリウス7世は頑固で強硬な姿勢がかえって反発を招いたきらいがあるが、彼を止められた唯一の男と言われる人がいる。教皇の朋輩だった聖ペトルス・ダミアニヌス教会博士である。教皇より10歳年上ながら、修道院時代にヒルデブラントと友達となり、共に改革をめざした。
ペトルスは貧乏貴族の子供で、豚飼いとして酷使された後教育を受けた。25歳にもなるとラヴェンナで著名な教授となったが、フォンテ・アヴェッラーで鞭打ちを含む厳しい戒律を立て、モンテカッシーノに取り入れられるほどの声望を博し、修道院は繁栄した。
聖職者の堕落を批判した「ゴモラの書」などで有名となり、1057年枢機卿に任命され、ヒルデブラントと一緒になった。彼は交渉担当者として各地へ派遣されたが、ヒルデブラントよりも穏健であり、ミラノに派遣されたときは、厳粛な誓いを要求するも、悔悛した者はすべて復帰させている。
ハインリヒ4世は強制結婚だったため頑固な彼は離婚しようとしたが、このときペトルスが行き、夫婦仲を良くした。しかし運命のいたずらか、ヒルデブラントが教皇になる前年に逝去し、ペトルスの死で、皇帝と全面対決になったのである。神学原理の著書もあり、「哲学が神学の侍女」と最初に言ったのは実は彼である。