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言葉を実態に近づける

2021.04.01 03:03

http://www.asahi-net.or.jp/~nu3s-mnm/ko-su_satori.html 【悟りのコース】

https://www.sakigake.jp/special/2020/haiku/article_05.jsp 【詩情を突き詰めれば】より

 俳句は十七音の小さな器です。この小さな器を使って何かを表現しようとするわけですが、使える言葉はとても少ない。作者が感じたことを読者に伝えようにも、何をどう言ったらいいのか、なかなか難しい。

 今回は、俳句という器を使いこなすための頭の整理のしかたを提案します。それは「この句の本質は何だろうか」と問うことです。ある作品にはその作品固有の詩情(気分、雰囲気)があって、その詩情は一体どこから湧き出てくるのだろうか、と考えるのです。

 たとえば、芭蕉の「荒海や佐渡によこたふ天河」の詩情は、「荒海」と「よこたふ」という二つの言葉の響き合いから出てくるものです。試しにこの二つの言葉の一方を弱くしてみましょう。――海荒れて佐渡によこたふ天河、荒海や佐渡の上なる天河――これでは力が抜けてしまいます。「荒海」と「よこたふ」が揃(そろ)わないと、この句はサマにならない。「荒海」&「よこたふ」という強力なコンビがこの句の本質です。以下、その句の本質は何かを考えながら投稿作を検討します。――別の書き方と比較して頭の体操をすることが目的です。欠点のある句を直すわけではありません。

対象を具体的に示す

突き放す手の感触や西日射す

 高橋文哉さん(東北公益文科大2年)の作。「突き放す」というキッパリした言葉と季語の西日(夏)との響き合いがこの句の詩情の本質です。「頼ってきた後輩を突き放す」という用例もありますが、「手の感触」とあるので「突き放す」は肉体の動作でしょう。「突き放す手の感触」をどう読むか。手で何(誰)かを突き放したわけですが、相手がモノか人かも不明。突き放したときの「手の感触」だけを詠んだ。謎めいた句としてそのまま楽しめますが、読者としては何を突き放したかが気になります。

 勝手な想像ですが、たとえば

跳び箱を突き放す手や西日射す

とすれば具体的です。放課後の部活。体育館の窓に西日が射している。突き放す対象が人だと、ちょっと不穏ですね。またもや勝手な想像ですが、兄弟喧嘩をして

弟を突き放す手や西日射す

というような場面も考えられます。

「行動」と「結果」に着目

明かり消す花火の音に耳澄まし

 熊谷京香さん(秋田北高2年)の作。遠くで花火の音がした。見えるかなと思って灯を消した。無駄な言葉のない、すっきりと出来た作品です。暗い所にいると聴覚が研ぎ澄まされる感じがします。この句の詩情の本質は、遠くの音に耳を澄ますという感覚と、暗さという明暗の感覚との微妙な関係だと思います。

 ここで頭を切り替えて、灯を消した後の状態に着目すると、

暗がりや花火の音に耳澄まし

という案も考えられます。灯を消すという行動によって周囲が暗くなるという変化が生じます。変化の結果、「暗い」という状態が生じます。抽象的な言い方をしますと、物事を説明しようとするとき、原因となる行動や変化を述べる方法(灯を消す、暗くなる)と、結果として生じた状態を述べる方法(暗い、暗がり)とがあります。このような頭の働かせ方は、俳句の表現を検討するとき役に立ちます。今回は頭の体操のために「暗がりや」という別の案を考えましたが、作者の居場所(室内)が具体的に想像される「明かり消す」のほうが、すぐれた表現だと思います。


https://www.sakigake.jp/special/2020/haiku/article_03.jsp【言葉を実体に近づけよう】

より

 美しい「花」がある、「花」の美しさという様なものはない(小林秀雄)。この名言は、俳句を作る上でのヒントになります。「美しさ」は感覚です。印象です。その実体は何かといえば「花」そのもの。感覚や印象を俳句に詠むのは当然ですが、もう一歩踏み込んで言葉を「実体」に近づけてゆく。そこが肝腎です。

 高浜虚子に「待たれたる葭簀の雨を見上げけり」という句があります。夏の日、一雨欲しいと思っていたら、葭簀(よしず)=窓などに立てかける日除け=に雨の音。思わず空を見上げたのです。

 この句は当初「うれしさの葭簀の雨を見上げけり」でしたが、推敲(すいこう)して「うれしさの」を「待たれたる」に変えました。「うれしさの」の実体が何かといえば、待ち望んでいた雨が降って来たときの気持ちです。そこで「うれしさ」より、もう一歩実体に近い言い方を探した結果「待たれたる」という表現が得られたのです。今回はまず、この虚子の句に似た作例の添削を試みます。

実体を強調する

辞書たどる指の細さよ春の夕

 加藤菜々さん(由利本荘市、会社員23歳)の作。辞書の文字を指でたどるように読んでいる。春の日がしだいに暮れてきた。そんなときに指の「細さ」を感じたのです。ここで「指」という実体を強調する添削を試みます。まず思いつくのは

辞書たどる指細くして春の夕

「春の夕」の柔らかい感じに合うと思います。辞書をたどっている状態を強調するなら

辞書たどりつつ細き指春の夕

「指」そのものを強調するならば

辞書たどるその指細し春の夕

「その」は、目の前にある「その指」という意味です。作者もきっと、いろいろな言い方を試みたことと思います。


https://www.sakigake.jp/special/2020/haiku/article_04.jsp 【文語を使ってみよう】より

 俳句には多く文語が使われます。私たちがふつうに使っているのは口語です。文語には口語と違う文法があります。学校で習う文法なんて無味乾燥だと思っている人が多いと思います。たしかに教科書を読んで理解しようとすると面白くない。

 俳句を作るときおすすめなのは、どこかで聞いたことがある用例を思い出すこと。「君が代」の「巌(いわお)となりて」は文語。口語なら「巌となって」。「燃えよドラゴン」の「燃えよ」は文語。口語なら「燃えろ」。「三国志」の「死せる孔明生ける仲達(ちゅうたつ)を走らす」は文語。口語なら「死んでいる孔明が生きている仲達を走らせる」。「死なばもろとも」「毒を食らわば」の「死なば」「食らわば」は文語。口語なら「死ねば」「食らえば」。「兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川」は文語。口語なら「兎を追ったあの山、小鮒を釣ったあの川」です。

 百人一首も参考になります。たとえば「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」には文語の助動詞が使われています(傍点)。助動詞なんて寒気がすると言う人もいるかもしれませんが、「たる」は「遠山に日の当りたる枯野かな 高浜虚子」と同じです。

 さて今回の添削では、文語の助動詞を使ってみたいと思います。

文字を減らしてみる

真夜中の水面に映る星月夜

 佐高夏輝さん(湯沢翔北高雄勝校2年)の作。星月夜は月がなく、星の明るい秋の夜。真夜中の静かな水面に星空が映っている。完成度の高い句です。もう一工夫、文字を減らしてみましょう。「水面に映る」を「水に映る」にすると、よりスッキリします。しかし一字余ってしまう。ここで

真夜中の水に映れる星月夜

とする手があります。「映れる」は「映る」の已然形(映れ)に存続の助動詞「り」の連体形(る)を付けたもの。水に映っている状態が持続しているのです。「映れる」は百人一首の「郭公(ほととぎす)鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる」の「残れる」と同じ形です。


Facebookいい言葉は人生を変える投稿記事

「島唄」

「島唄(しまうた)」は、本当はたった一人のおばあさんに聴いてもらいたくて作った歌だ。

91年冬、沖縄音楽にのめり込んでいたぼくは、沖縄の「ひめゆり平和祈念資料館」を初めて訪れた。

そこで「ひめゆり学徒隊」の生き残りのおばあさんに出会い、本土決戦を引き延ばすための「捨て石」とされた激しい沖縄地上戦で大勢の住民が犠牲になったことを知った。

捕虜になることを恐れた肉親同士が互いに殺し合う。

極限状況の話を聞くうちにぼくは、そんな事実も知らずに生きてきた無知な自分に怒りさえ覚えた。

資料館は自分があたかもガマ(自然洞窟<どうくつ>)の中にいるような造りになっている。

このような場所で集団自決した人々のことを思うと涙が止まらなかった。

だが、その資料館から一歩外に出ると、ウージ(さとうきび)が静かに風に揺れている。

この対比を曲にしておばあさんに聴いてもらいたいと思った。

歌詞の中に、ガマの中で自決した2人を歌った部分がある。

「ウージの森で あなたと出会い ウージの下で 千代にさよなら」という下りだ。

「島唄」はレとラがない沖縄音階で作ったが、この部分は本土で使われている音階に戻した。

2人は本土の犠牲になったのだから。

(みやざわ・かずふみ。66年生まれ。歌手)

2005年8月22日 朝日新聞(朝刊)

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でいごの花が咲き 風を呼び 嵐が来た

(1945年春、でいごの花が咲く頃、米軍の沖縄攻撃が開始された。)

でいごが咲き乱れ 風を呼び 嵐が来た

(でいごの花が咲き誇る初夏になっても、米軍の沖縄攻撃は続いている。)

繰り返す 哀しみは 島わたる 波のよう

(多数の民間人が繰り返し犠牲となり、人々の哀しみは、島中に波のように広がった。)

ウージの森で あなたと出会い

(サトウキビ畑で、愛するあなたと出会った。)

ウージの下で 千代にさよなら

(サトウキビ畑の下の洞窟で、愛するあなたと永遠の別れとなった。)

島唄よ 風にのり 鳥と共に 海を渡れ

(島唄よ、風に乗せて、死者の魂と共に海を渡り、遥か遠い東の海の彼方にある神界 "ニライカナイ" に戻って行きなさい。)

島唄よ 風にのり 届けておくれ わたしの涙

(島唄よ、風に乗せて、沖縄の悲しみを本土に届けてほしい。)

でいごの花も散り さざ波がゆれるだけ

(でいごの花が散る頃、沖縄戦での大規模な戦闘は終わり、平穏が訪れた。)

ささやかな幸せは うたかたぬ波の花

(平和な時代のささやかな幸せは、波間の泡の様に、はかなく消えてしまった。)

ウージの森で 歌った友よ

(サトウキビ畑で、一緒に歌を歌った友よ。)

ウージの下で 八千代に別れ

(サトウキビ畑の下の洞窟で、永遠の別れとなった。)

島唄よ 風に乗り 鳥とともに 海を渡れ

(島唄よ、風に乗せて、死者の魂と共に海を渡り、遥か遠い東の海の彼方にある神界 "ニライカナイ" に戻って行きなさい。)

島唄よ 風に乗り 届けておくれ 私の愛を

(島唄よ、風に乗せて、彼方の神界にいる友と愛する人に私の愛を届けてほしい。)

海よ 宇宙よ 神よ 命よ

(海よ 宇宙よ 神よ 命よ 万物に乞い願う。)

このまま永遠に夕凪を

(このまま永遠に穏やかな平和が続いてほしい。)

島唄は 風に乗り 鳥とともに 海を渡れ

(島唄は、風に乗せて、死者の魂と共に海を渡り、遥か遠い東の海の彼方にある神界 "ニライカナイ" に戻って行きなさい。)

島唄は 風に乗り 届けてたもれ 私(わくぬ)の涙(なだば)

(島唄は、風に乗せて、沖縄の悲しみを本土に届けてほしい。)

島唄は 風に乗り 鳥とともに 海を渡れ

(島唄は、風に乗せて、死者の魂と共に海を渡り、遥か遠い東の海の彼方にある神界 "ニライカナイ" に戻って行きなさい。)

島唄は 風に乗り 届けてたもれ 私(わくぬ)の愛を

(島唄は、風に乗せて、彼方の神界にいる友と愛する人に私の愛を届けてほしい。)

https://www.youtube.com/watch?v=jIBS2wHx0pc