『W旦那+(プラス)』第17〜18話 (ロケ先〜名古屋駅)三代目妄想劇場
ロケ当日はリーダーの直己と一緒なので、
臣と隆二も安心したのか、朝からメールが飛んでこない。
(この信頼度の違い…どんだけ?)
剛典は実家に理愛を預けてロケに行くつもりだったが、
新しい環境で心細そうにしている理愛を見て、
一緒に連れて行くことにした。
「理愛ちゃん、ロケが終わるまでスタッフと一緒に横で見ててね!」
剛典に促され、メイク担当の女性の隣にひっそりと佇(たたず)んでいる。
スタッフの中でも一際目立つので、
事前に用意したニット帽とマスクをつけている。
「あそこまでガードする必要あるの?」と直己が聞く。
「理愛ちゃん、立ってるだけでも目立つんですよね」
「預かってる責任もあるので、念には念を…」
「がんちゃんにしては、珍しい気の配りようだな」
二人で理愛の方を見る。
マスクをつけ、ニット帽を目深に被り、
普段はあまり着ない白いパーカーとジーンズを履いている。
銀髪は下ろしたままだが、
原宿にいそうなギャル風のメイクアシスタントにも見える。
剛典が軽く手を振ると、
理愛も唯一外に出ている青い瞳を輝かせて、手を振って答えた。
「がんちゃん、気に入られているようだね」
「そうかなぁ?よくわかんないけど…」
「俺はダメだ。初対面の時に、あの子に気合い入れようとして嫌われたみたいだ」
「何て言ったんですか?直己さん…」
「白い顔してぼーっと立ってたから、ちゃんと肉食ってるか?…って肩を揺さぶった」
「マジで…⁉︎」
「その後ボーカル二人に、優しく接してくれって注意されるわ、あの子は怖がって俺のこと避けるようになるわで…大変だったよ」
「あちゃ…」
「もし俺が理愛ちゃんの身内だったとしたら、迷わず直己さんに預けますよ」
「おーっ!凄い信頼度…お世辞でも嬉しいよ」
「いや、本心ですよ」
理愛に笑顔を向け、爽やかに剛典が言った。
ロケも無事に終了し、理愛を伴って名古屋駅まで直己を見送りに行った。
別れ際に「じゃ、理愛ちゃんまたね!」と直己が言うと、
剛典の後ろに隠れ「失礼します」と小さく答える理愛。
(ダメだ…こりゃ)
少し凹みそうになりながら、直己は東京へ帰っていった。
直己を乗せた新幹線が見えなくなって、
「じゃあ行こっか?理愛ちゃん」
後ろを振り向く剛典。
自分の背中にべったり張り付いている理愛を見ると、愛しくて仕方がない。
「もう直己さんいないよ」
「…はい」
「リーダーのこと苦手?大きくてあったかい人なんだけどね」
「邪心がない…真っ直ぐな人、苦手です」
過去に聞いたことのないようなセリフをはいた理愛だったが、
剛典は特に気に留めることもなく、
「それ、めっちゃ褒(ほ)めてるみたい」と笑って言う。
何も答えず少し眉を寄せ、頬を赤く染めている理愛。
その手を取って、また恋人つなぎをし、
「ご飯食べてから帰ろっか?」
と歩き出す剛典。
「理愛ちゃん、なにが食べたい?名古屋の美味しい店いっぱい知ってるよ」
笑顔で理愛を優しくエスコートする剛典だった。
End