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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派の時代21-風刺画家ドーミエ

2022.04.01 10:47

一見華やかに見える7月王政の裏では激しい対立が隠されていた。かつて時事問題を描いたドラクロワは、政府お抱え画家となって政府建築の装飾をせっせと描いていた。しかし大衆誌にそれを描いた画家がいる、オーノレ・ドーミエである。彼は当時の新技術だったリトグラフを習得して政治風刺を行う。

挿絵による風刺は、印刷術が起こった宗教改革の頃からある。しかしドーミエは、政治風刺と都市庶民の貧困をリアルま目で描いた。その彼が、34年に起こった反乱をテーマに描いたのが「トランスノナン街1834年4月15日」である。これは暴動で兵士が殺された復讐に、市民を虐殺した事件である。

このリトグラフは、リアルな殺人現場であるが、静謐で崇高な雰囲気も漂う。中央の死んだ男には光線が当たっている。ダヴィッドは、「マラーの死」で殉教者のように描いたが、ドーミエも殉教のように描く。シーツにくるまれた遺体はまるでキリストのようだ。

実はドーミエは油絵で「キリストとその弟子達」という絵を描いている。弟子は本当に貧しい庶民のように描かれ、身を乗り出してキリストの言葉を聞いている。ドーミエも庶民の貧困を描きながら、キリストに問いたかったのだろうか?彼の絵はゴッホに大きな影響を与えた。