「迷ったら押す!『うまぶるな』の精神」 平賀聡彦、RTDリーグ2017優勝記念インタビュー 第3回(全4回)
AbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2017にて、見事優勝した平賀聡彦選手(最高位戦日本プロ麻雀協会)にお話を伺いました。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
日本最高峰のRTDリーグ2017を制した平賀。
ではいったい麻雀とはどのようにかかわっているのだろうか。
ここからは、平賀の素顔を探っていこう。
【群れない平賀】
― そういえば、予選のときって、抜け番もあったんで半荘と半荘の間が空くことも多かったと思うんだけど、どうやって過ごしてたの?
平賀 「けっこう控室で観戦してたよ、みんなと一緒に。でも、2半荘連続で空くときは観ないで大体寝てたね」
― 自由かよ(笑) そういえば、平賀さんって、リーグ戦を戦う人とそんなに麻雀のこと話さないようにしてたよね?あれは今でも一緒?
平賀 「うん、変わらないね。戦う人と何でも話しちゃうっていうのは、やっぱり違うと思うからさ。基本的にリーグ戦が終わるまで選手たちと飲みにいかないっていうのも変わらないね」
これは人それぞれだと思うが、平賀は昔からリーグ戦後の飲みには来ない。これから長期間戦う選手と一緒に話したり飲んだりすることに違和感を覚えるからだ。
おしゃべりな平賀だからわいわい騒ぐのが好きかといえば、こういうところではしっかり一線を引いているのである。
その分、最終日が終わると本当にうるさいのだが。
平賀 「BLACK DIVISIONって、最高位戦はおれ1人だったんだよね。こういう↑自分の中の決めもあって、あんまり話す人もいなくてさ。だから、選手以外で、最高位戦出身の張さん、塚本くん、コバミサがいたのは大きかったね。気軽に話せる人がいるって意味で。あと、聡一郎も観戦記者できてくれて、気軽に話せる人がいたのはほんとよかったよ」
精神的に図太いイメージのある平賀だが、当然ながら平賀には平賀なりの苦労があったわけである。
【小島先生に「平賀は麻雀が忍者みたいだから最高位戦がいいんじゃないか?」って言われたんだよね】
― そもそも、なんで競技麻雀始めたの?
平賀 「元々大学生のときにいっぱい麻雀してたんだけど、好きなことを仕事にしたくないっていうポリシーがあったから、雀荘の店員だけはやらないって決めてたのね」
― えっ!?でも最高位戦入ったとき、小島先生(小島武夫・日本プロ麻雀連盟)の店で働いてたよね?なんかきっかけでもあったの?
平賀 「うん。当時付き合ってた彼女にフラれちゃって」
― ほう。で、なんで雀荘で働くことになるわけ?
平賀 「ん?いや、キレて、もう雀荘で働いてやろう!って」
― センチメンタルジャーニーかよ(笑) で、小島先生の「雀港」に流れ着いたわけだ?
平賀 「うん、そんな感じ。で、店で一番成績よかったんだけど、ある日他の店員がプロ連盟を受けるって言い始めたんだよね。だったらおれも受けようかなと。そいつより成績よかったしね」
― なるほどね。でも、小島先生の店なのに、プロ連盟を受けなかったのはなんでなの?
平賀 「小島先生に相談したら、『平賀は麻雀が忍者みたいでせこせこしてるから最高位戦がいいんじゃないか?』って最高位戦を紹介してくれたんだよね」
― 忍者(笑) でも、確かにルール的にも最高位戦は合ってるよね。さすが小島先生、鋭い。
平賀 「そうそう、自分でも一発裏ドラなし(日本プロ麻雀連盟公式ルール)向いてないのはわかってたしね。飯田さん(故・飯田正人 永世最高位)と金子さん(金子正輝 元最高位)の名前は知ってたから、2人と打ちたいなあって思ってたよ」
― それで、あっさりAリーグ上がって2人と打つことになるんだからさすがだよね。
平賀 「飯田さんと金子さんの本は最高位戦入る前に読んでて、いつか2人と戦えるところまでいったらサインもらおうと思ってたんだよね。そしたら、予想外に早くて自分でもびっくりしたよ(笑) で、Aリーグで初対戦した後にサインもらったんだよね」
【いつも「うまぶるな、うまぶるな」って思ってる】
― 平賀さんって、麻雀に関してポリシーとかってあるの?
平賀 「うーん、東1局は基本的に押すかな。だから、起家が好きだよ。起家引いたらうれしいね。先行したいんだけど、先行できる可能性が一番高いのは起家だからね」
― へえ、そうなんだ。そういえば、今回の決勝でも起家多かったよね
平賀 「そうそう。だから、その時点でけっこう気持ちよかったんだよね」
平賀 「あと、迷ったら押すようにしてるよ。さっき話したラス落ちの放銃(※インタビュー記事第2回参照)とかもそうだよね」
― ああ、それはわかりやすい
平賀 「おれは、意識的にバランスを取ろうと思ったらダメなんだよ。たぶんバランスを取らないことでバランスを取ってるんだろうね。打ってるとき、いつも『うまぶるな、うまぶるな』って自分に言い聞かせてるもん。例えば・・・」
そう言って、平賀が挙げたのが決勝初戦でのこのリーチだった。
平賀は他家の8sポンを見ると、ここから両面待ちを拒否したシャンポンリーチをかけ、狙い通り7sをツモアガった。
平賀 「7m引いてテンパったんだけど、4m引きならゴツゴツ感が薄れるから迷うんだよね。両面リーチしてたかも。手牌のイメージの話ね」
― ほう。それは面白い。その感覚に従うために、うまぶらないってことなんだね?
平賀 「そうそう。一見不格好じゃん、これ両面でリーチしないんだからさ。おれだって、できればかっこよくありたいけどね(笑) でも、おれは、見た目がプロっぽくなくても、自分が勝てると信じる一打を打ち続けたいんだよ」
― でもそれって、強さを証明するのが本当に勝つことしかなくなるから、いばらの道だよね?
平賀 「そうだね。勝つしかないってのは間違いない。でも逆に『勝てばいいんでしょ?』って思ってるよ」
完全に自身の感覚に従って押す。不格好でもいい。絶対にうまぶらない。
それが平賀の信念なのだが、麻雀という結果が出にくい競技でこれをやり続けるのは相当にしんどい。
それを続けてついにタイトルを勝ち取ったからこそ、この1勝には大きな意味があるというわけだ。
【麻雀教室では楽しさを教えてもらっている】
― 平賀さんって、普段どんな生活してるの?
平賀 「週3日か4日は雀荘勤務で、麻雀教室が月4回だね。あとは対局」
― そっか、教室やってるんですよね。そういえば、教室でも早口なの?
平賀 「そうだよ。必ず聞き返されるから、新しい生徒さんがいる授業の前には『麻雀の用語がわからないときと、私が早口すぎて聞き取れないときはすぐに言ってください』って言ってるよ」
― で、やっぱり聞き返されるの?
平賀 「そうだね、すぐ聞き返されるよ」
― だろうね(笑) 生徒さんたちも応援してくれたりするの?
平賀 「そうそう。RTDリーグは観てくれてて、いつも応援してくれてるよ。この前教室に行ったら、『平賀先生、優勝おめでとうございます』って貼ってあってうれしかったなあ」
― それはうれしいね!
平賀 「今回決勝残ったときにも、『平賀先生、がんばれ』って横断幕持っていきますねって生徒さんたちが言ってくれたんだけど、さすがに勘弁してくださいって断ったよ。野球とかサッカーじゃないんだからって(笑)」
― 確かにそれは無理だね。。。
とは言うものの、私はそういうのがあっても面白いかもと思ってしまった。対局場の各選手の後ろに横断幕やのぼりが立っているイメージだ。AbemaTV麻雀番組関係者のみなさま、ぜひご検討を!
― 教室やって麻雀について考えが変わったこととかもある?
平賀 「ある!競技麻雀って、短期戦に人生がかかってるから、試合中は鬼みたいになるじゃん。勝つか負けるかしかない。でも、試合の翌日に教室に行くと、楽しさを教えてもらえるんだよ。それでバランスが取れてる感じ。勝つか負けるかしかなかった今までの麻雀生活の中で、触れたことない感じだったんだよね、教室」
― なるほど。逆に楽しさを教えてると同時に、楽しさを教わってもいるってことだね!
平賀 「そんな感じ!ほんと楽しいよね、麻雀」
― ちなみに、教室をやろうと思ったきっかけってあるの?
平賀 「元々教室やりたいなあとは思ってたんだよね。で、上野さん(故・上野龍一 元最高位戦Aリーグ)からやってみないかって言われて、引き継いでやってるのが今の教室なんだよね」
― そうか、上野さんから引き継いだ教室なんだ
平賀 「そう。上野さんが亡くなる1週間ぐらい前に、『次の教室行ってくれないか』っていう電話もらって、引き継いだんだよね。で、直後に入院先に会いにいったら、上野さんもうしゃべれなくなってたんだけど、上野さんのご家族にも『とにかく教室のことを気にしていた』って言われて、気合入れて引き継ごうと」
― 上野さん教えるのうまそうだし、その教室を引き継ぐのとか、不安もあったでしょ?
平賀 「引き継ぐとき、元々上野さんを教室に誘った阪元さん(阪元俊彦 最高位戦日本プロ麻雀協会)が『平賀、できるか?わかんないことあったら相談しろよ』って言ってくれたのもあって、特に大きな不安もなく入れたんだよね」
― ほんとに良い先輩たちだね
平賀 「ほんとにね。でも、上野さんに言われたことはあんまり守れてないんだよね」
― えっ!?何を守れてないの?
平賀 「教室引き継ぐとき、上野さんに『教室は生徒さんにアガってもらうためのものなんだから、自分でアガっちゃだめだぞ』って言われたんだけど・・・普通にアガりまくってるんだよ(笑)」
― それでよく教室やれてるな!
聞くと、『おおっ!またアガリ?先生強いね!』と盛り上がる空気感ができてしまっているらしい。そういう空気が作れるのも、この男の不思議な魅力なのかもしれない。
― ちなみに、おすすめの入門書ってある?これから始めてみようかなという視聴者の方に向けて。
平賀 「教室始める前に入門書20冊ぐらい読んだけど、横山竜介さんの『いちばんわかりやすい麻雀入門』が一番わかりやすくて、それをよくおすすめしてるよ。新版じゃないほうね」
これから麻雀を覚えようという方や、ご家族ご友人におすすめである。
【一番観る選手は自分】
― 平賀さんって戦術本とか読むの?
平賀 「知り合いの本は一通り読んでるよ。一馬(石井一馬 最高位戦日本プロ麻雀協会)、村上さん(村上淳)とか、知り合いの本は大体読んでる。誠一さん(近藤誠一 前最高位)の本も今日買ったね」
― へえ。気に入った本とかあるの?
平賀 「うーん、自分ではないんだけど、やっぱり教室で評判がいいのは土田さん(土田浩翔 最高位戦日本プロ麻雀協会)の『運を育てる』だね。やっぱり精神論はわかりやすいんだと思う」
― あと、麻雀放送って観る?
平賀 「自分が出てるのは観るよ」
― 自分好きだな!じゃー、よく観る選手も当然・・・
平賀 「そうね、よく観る選手はおれだね(笑) 他の人は全く気にならない」
― さすがです。
競技麻雀で独自路線をいく平賀。その感覚も独特なものであった。
では、その感覚ができあがったルーツはどこにあるのだろうか。
第4回(最終回)、平賀のルーツに続く。
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)