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マヤ

『W旦那+(プラス)』第22~24話 (剛典の実家) 三代目妄想劇場

2017.11.15 04:05

甘い香りが脳まで達してくる。



華奢な体だが、その体重全てが剛典にかかり、そのままベッドに倒れこむ。



剛典を下にして、理愛が上に乗っかるように体を預けているが、重さは全く感じない。



理愛の柔らかい舌が、剛典の口内に侵入してくる。



(り…理愛ちゃん…参ったな)



茫洋とした見た目からは全く想像できない濃厚なキスを、理愛から仕掛けてくる。



(どうしよう…)



数分間溶けるようなキスをして、ようやく理愛が離れた。



「理愛ちゃん…おれ」



「剛典さん…私なら今夜…大丈夫ですよ」



(えっ⁉︎それって…抱いてほしいってこと?)



この世の物とも思えないほど美しい顔が、

目の前で囁く。



強烈な誘惑に負けそうになりながらも、

理性を保とうとする剛典。



「気持ちは凄く嬉しいんだけど、まだ俺達初デートしたばっかだし…」



「なにより、理愛ちゃんの二人の保護者から、くれぐれもって預かってる身だからね…」



「私のこと好きじゃないんですか?」



「好きだよ!好きでなきゃキスなんてしないよ」



(そうなんだ…そもそもあの日、理愛ちゃんの店で俺からキスしたんだっけ…)



「剛典さん…私もあの日から…あなたのことが…」



「理愛ちゃん…凄く嬉しいよ」



優しく抱き寄せる。



「…だったら尚更あの二人に後ろめたい気持ちのまま、理愛ちゃんといい関係になるんじゃなくて…」



「何回かデートを重ねて…さ」



「剛典さん…」



「んっ?」



「私、抱かれてもいい日と…そうでない日があって…」



「えっ?」



(女性の安全日とか…そういう意味かな?)



「う…うん」



「今夜なら…大丈夫なんです」






「そ…そうなんだ」



「でもね、理愛ちゃん…俺は…」



言い終わらないうちに、また理愛から口づけをしてくる。



理愛の細い足が剛典の太ももに絡みつく。



頭の中にモヤがかかり、理愛の誘惑に負けそうになる。



できるだけ傷つけないように、優しく理愛を離し、



「凄く嬉しいんだけど…」



「まだそこまでいくのは、早いよ」



「剛典さん…私そんなに魅力がないですか?」



「そんなこと絶対ない」



「みんなが競い合うほど、君は綺麗で魅力的な女性だよ」



「だったら…今夜抱いて下さい」



「理愛ちゃん…」



『くれぐれも…わかってるよね』



臣と隆二の顔が脳裏に浮かぶ。



(わかってる…わかってるけど…)



(これ、かなりの試練だよ)



(俺の体は理愛ちゃんを求めている)



(密着してるから、彼女にも伝わってるはず…)



(後は俺の理性が持つかどうか…)



突然、静かだった庭に風が吹き始め、



カタカタと窓を揺らす。



先程まで怪しい光を放っていた月に雲がかかり、外が暗闇に包まれていく。






「駄目ですか?」



「ごめん…理愛ちゃん」



「遊びじゃない…真剣だから、きちんと二人にも許しをもらってからそうなりたい」



「そうですか…」



今度は簡単に引き下がった。



剛典は少し拍子抜けしたが、



「側にいるから、ここで眠るといいよ」



理愛の肩を優しく抱き寄せる。



「はい…」



剛典の胸に顔を埋める理愛。



(あー…後悔するなよ、剛典…)



(これで理愛ちゃんの、俺への気持ちが薄れたら、絶対凹むよな…)



「もいっかいキスだけしていい?」



「はい」



少し寂しげな顔を向ける理愛。



「せっかく女の子の方から言いにくいこと言ってくれてるのに、ごめんね」



と言い、剛典から唇を合わせる。



今度は舌を絡ませてこない。



(可哀想なことしちゃったかな?)



(大丈夫な日って月一回位あるんだろか?)



そんなことを考えていると、またあの甘い香りに包まれ、剛典の方が先に眠りに引き込まれる。



唇がゆっくり外れ、寝息をたてるのを確認してから、剛典からそっと離れる理愛。



どこに忍ばせてあったのか、スマホを取り出し操作する。



メールではなく、電話をかけている。



通話口に唇を持っていき、小さく呟(つぶや)く。





「採取できませんでした」






End