『W旦那+(プラス)』第25話 (社長宅)三代目妄想劇場
「また来月のデート楽しみにしてるね」
そう告げて、隆二達より先に帰国した社長夫妻へ理愛を届け、剛典は雑誌の撮影で、
イタリアへと旅立っていった。
「隆二は今夜の便で帰ってくるから、ゆっくりしてるといいよ」
社長が理愛に言った。
「あの…長くお休みしていましたので、今日は店を開けたいのですが…」
「そうか、あまりじっと部屋にいても気が滅入るだろうから、君がそうしたいのなら、店まで送るよ」
「はい」
「名古屋から帰ったばかりで疲れてないの?」
社長の妻は理愛の手を取り、優しく声をかける。
「はい…大丈夫です」
ふと、理愛の胸元に目をやり、
「あら、可愛いネックレス…理愛ちゃんがアクセサリーって珍しいわね」と妻が言った。
理愛は何も答えず、スッとネックレスに手を伸ばし考え込んでいる。
すると、自らネックレスを外して、
「あの…次こちらに来るまで、ここに置いていてもいいですか?」
「えっ?理愛ちゃん店に出てるんですか?」
日本に到着したその足で、まっすぐに社長宅へ駆けつけてきた隆二に、妻が告げた。
「ずっとお店閉めてたからって、自分で希望して…主人が送って行ったわよ」
「名古屋から帰ったばかりで、無理しなくてもいいのに…」
「私もそう言ったんだけど…」
「あっ…じゃあ俺、店へ行きます」
「あっ!今市くん…」
「はい?」
妻はネックレスの事が気になり、隆二に告げようとしたが、ふと思い止まった。
「あ…ううん、何でもない、ゴメンね」
「あ、はい…じゃ失礼します」
隆二は足早に社長宅を後にする。
(あのネックレス、ここに置いておくってことは、今市くん達に知られたくないのかも?)
(理愛ちゃん、今まで洋服やアクセサリーに興味を持った事がないのに…何か事情があるのかもね…まさか…岩田くんと?)
それ以上の余計な詮索はしないでおこうと、自分に言い聞かせた。
End