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マヤ

『W旦那+(プラス)』第29~30話 (隆二のマンション②)三代目妄想劇場

2017.11.15 04:25

理愛の発した言葉の意味が理解出来ないまま、時が過ぎた。




何か言おうとしたが、急激に逃れようのない睡魔が襲ってきて、理愛を抱いたまま眠ってしまう。




どれくらい眠ったのだろう。




目が覚めると部屋の中は真っ暗で、

月明かりだけが、煌々と部屋を照らしている。




腕の中には理愛がいて、ジッと隆二の顔を見ている 。




深く吸い込まれそうな深海の青…




(俺、何か言おうとして、そのまま眠ってしまったのか?)




(えっと…何を聞こうとしたんだっけ?)




朦朧(もうろう)とする意識の中で、必死に考えようとするが、どうもうまくいかない。





目は開いてるのに、体が動かない。





まるで金縛りにあってる感覚…




(理愛ちゃん…ずっとこうやって俺の顔を見てたのか?)




「旦那さま…どうしても理愛を抱いて下さらないのなら…」




(えっ⁉︎)




ごおっと風が吹き、窓が揺れる。




一瞬にして月が雲に隠れ、部屋は漆黒の闇になる。




暗闇に浮かぶ理愛の青い瞳が真っ赤に変化し、




ピンクの唇がパクッと開き、




鋭く尖った牙が二つ見える。




(えーっ‼︎牙…って…吸血鬼⁉︎)




(嘘でしょ?俺悪い夢でも…)




「どうしても抱いて下さらないのなら…」




さっきまでの美しい声とは異なる、




男とも女とも言えない地の底から響くような声で理愛が続ける。




「旦那さまの血を下さい」




かっと赤い目が見開き、隆二の首にヌルッと牙を立てる。




「や…やめろー‼︎」






咄嗟に理愛を突き飛ばす。




「きゃっ!」




ベッドの端に軽く飛ばされる理愛。




固く閉じていた目を恐る恐る開けると、

部屋の電気が付いていて、




ベッドの隅っこに震えて小さくなっている理愛の姿が目に入った。




「え?」




震える手で首を触ってみるが、噛まれた跡などない。




(おれ…夢見てたのか?)




Tシャツが汗でぐっしょり濡れている。




「理…愛ちゃんごめん、おれ突き飛ばしたりして…」




「うなされていた様なので…悪い夢でも見たのですか?」




小刻みに震え、理愛がやっと言葉にする。




「ごめん…痛かった?どこもケガしてない?」




ベッドの上を膝で歩きながら、ゆっくり理愛に近づく。




「大丈夫です…ちょうどベッドがクッションがわりになって、跳ねただけです」




青い瞳を潤ませている。




「ごめん…酷いことしたね…おれ」




胸に抱き寄せる隆二。





理愛は小鳥のように小さく震えている。





「隆二さん、ひどい汗…」





ハッとして体を離し、





「うわっ…理愛ちゃんについちゃったね、俺ほんとに酷いことばかり…」





お互いベッドに正座をして向かい合ってる。





(彼女が吸血鬼なわけないのに…)





美しく震える顔を左手で包み、





「ごめんね」と言って、優しく口づけをする隆二。





汗で濡れたTシャツの胸に、なんの躊躇いもなく抱きついてくる理愛。





その髪を撫でながら、ふとベッドの上を見ると、理愛のスマホが転がっている。




手を伸ばしてスマホを取った拍子に、

側面のボタンに指があたり、画面に光が灯る。





理愛は目を閉じて隆二の胸に顔を埋めているので、気づいてはいない。





何気にスマホの画面を見ると、





『nnhjhjhlhj nnhjhjhl』





と不可思議な文字が並んでいる。





「理愛ちゃん、どこかにメールしようとしてたの?」





「えっ?」とびっくりしたように理愛が離れ、隆二が持つスマホに目をやる。





「いえ…私もウトウトしてたので、寝ぼけて操作を誤ったのかもしれません」





「メールじゃないの?」





「はい…名古屋で撮った写真を見ていただけです」





「そっか」





スマホを理愛に返す隆二。





(悪夢といい、スマホの不可解な文字といい、今夜はおかしなことばかりあるな…)





(長旅から帰ったばかりで疲れてるのかな?)





などと考えながらも、少し背筋が寒くなるような感覚を覚えた。






結局その夜、隆二は一睡もできず理愛に寄り添い、朝を迎えた。






End