Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

KANGE's log

映画「TITANE/チタン」

2022.04.03 02:41

【怪奇エログロものかと思いきや…、なんだかんだで愛について】

Filmarksさんのオンライン試写会に当選して視聴。公開も始まったので、感想をこちらにも転載しておきます。

幼い頃、交通事故で頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。それ以来クルマを性の対象とするようになり、また衝動な殺人欲求に駆られるようになる。捜査から逃れるために、10年前から行方不明の息子を探している消防隊長ヴィンセントのもとに、息子になりすますことで転がり込むが…という話。

…と、あらすじを書いてみると、なんとなく、物語として納得感があるように見えますが、実際のところ「何なんだこれは?」という展開の連続。しばらく「何を見せられているんだ?」という困惑と、目を背けたくなるような痛々しいシーンの連続で、それでも展開に引き込まれていきます。

消防隊長との共同生活は、例によって、いつ殺人衝動が現れるのかと、ドキドキしながら観ていくのですが、どうも流れが違う。ここからが、また予想もできない展開でした。

ぶっとんだ話ではありますが、いろんなものが詰め込まれていますね。

まず、「事故で頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれてから、クルマに異常な執着を」ということになっていましたが、私には、事故前の段階で、その片鱗は見えていたような気がします。

後部座席で、「ぶーーーん、ぶーーん」と、エンジン音を真似するアレクシアは、クルマと1対1のコミュニケーションをとっていたのではないでしょうか。そう考えると、運転している父親は、アレクシアにとっては邪魔者。だから、わざと父親をイライラさせているように見えました。

この父娘は、血はつながっているのかもしれませんが、どうも、心がつながっているようには見えません。その対比として、行方不明の息子を持つ消防隊長と、(どう見ても無理のある)息子の振りをしたアレクセイの疑似父子があるのでしょう。

また、アレクセイの体の変調は、自分の体の中に、別の生命がいるという女性だけが持つ機能を、極端に表現したということだと思います。それは、時に苦痛であり、恐怖を感じるようなこともある一方で、アレクセイでさえ、お腹の中で動くものに対して、少し微笑んでいたりもしました。

そういう意味では、消防隊長が抱える悩みも、自分では自分の体を制御できないという意味で共通しています。極端にマチズモ社会である消防隊のトップに立つものが、どうしても避けることのできない「老い」です。

そして、消防隊員に対して、「ここでは自分は神」「神の子はイエス」と言ったりするところを考えると、彼の息子がそのまま育って消防隊に入ったとして、果たして幸せいなっていただろうかと疑問に思うところ。行方不明は、事故でも事件でもなく、ただ逃げ出しただけなのかもしれません。

そんな問題ばかりの偽の父子でも、思いがあれば家族となり得るという話でした。

今回、オンライン試写会でしたので、自宅のPCで見ましたが、やはり圧倒的に痛い画面、一時停止やスキップで逃げることの出来ない環境、つまりは劇場で観る方が楽しめるでしょうね。

印象的だったのは、数名を殺害した後で、椅子に座って一息つくところ。まあ酷くて、でもなんだか達成感があって、最悪で最高でした。