東京ごっこ以前の風景
2022.04.03 12:30
『平成函館忘れない』50・51ページの見開き、
平成17年6月の写真である。
今からすれば、気恥ずかしくなるほど派手な店構えだが、
かつて日本の観光地の土産物店は、概してこんなふうではなかったろうか。
筆者の勝手な解釈だが、
たいていの観光客は、地方都市に都会的なものを求めていなかったし
土地の観光業者もそれをよく心得ていた、
ような気がするのだ。
スターバックスコーヒーの日本上陸は、この翌年の平成18年だが、
その後もしばらくは、わが町にスタバがあるかどうかなど
誰も気にかけない時代が続いていたはずだ。
旅に出てまで、わざわざコンビニに寄らなくても…
キャンプに行って、テレビなんか観てどうする…
まだまだこんな感覚が残っていた。
しかし、あるときからその感覚が崩れ始めた。
非日常の旅に日常を求める。
時代の先行く、便利な日常。
その行き着く先は、旅する方も迎える方も「東京みたいに」。
何を求めて旅に出るのか、旅行者に何を提供するのか
どんどんあやふやになっていく。
遠くのものも、たいていは居ながらネットで買えるし、ネットで見られる。
この写真は本日(令和4年4月3日)撮影。
業種が変わり、外観が変わっても、建物は同じ。
銀座通りではないが、昔、丁寧に建てられた建物だけは残り続ける。
それがいちばんの函館らしさか。