『憂鬱⑨』(続•臣隆妄想劇場74)ショートバージョン
2017.11.14 18:15
「はい‼︎カーーット‼︎」
監督のOKが出た。
「登坂くん、お疲れ!今日は気合入ってて良かったよ!」
「ありがとうございます」
臣は、見る人全てを魅了する、いつものとっておきの笑顔で答えた。
すぐ横でマネージャーはホッとした表情をしている。
臣は、誰に言われたわけでもないのに、撮影現場の隅に立つ隆二の姿を見つけた。
機材の片付けで慌ただしく動くスタッフの間を通り抜け、臣はまっすぐ隆二の前までやってきた。
「来てたの?」
「うん…特別にマネージャーが許可を取ってくれてね」
臣がマネージャーの方を見ると、笑顔でVサインを送っている。
臣はひょこっと頭を下げた。
隆二の方を向き直すと、
「一発OKだったね」と満面の笑顔を臣に見せた。
臣「帰ろっか?」
隆二「ん」
言葉は少なくても、お互いの心は通じ合っている。
臣と隆二はダウンジャンバーを羽織り、ニット帽とマスクをつけて、街中を並んで歩く。
臣は隆二の手をしっかり握りしめ、自分の左ポケットの中に入れている。
隆二「あれ?家(うち)こっちだよ」
臣「見せたい物があるんだ」
続く