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粋なカエサル

「トロイアの木馬」とカサンドラ

2017.12.07 00:25

 トロイア戦争で、ギリシア軍の勝利を決定づけたのは「トロイアの木馬」。難攻不落のトロイアの城塞を攻めあぐねるギリシア軍の智将オデュッセウスの計略だ。木馬の胎内に兵50人を隠して、ギリシア軍は引き上げる(と見せかける)。トロイアの人々が勝利の美酒によって寝静まったころ、城塞内に引き入れられた木馬から兵が出てきて開門し、沖に待機していたギリシア軍も戻り総攻撃を仕掛ける、という作戦。この計略を見破った女性がいた。トロイの王女カサンドラ。アポロンから恋人になる代わりに予言能力を与えられた。しかし、彼女の「木馬の胎内には兵士たちが潜んでいる!」という忠告をだれも受け入れなかった。なぜか。予言能力を与えられた瞬間、アポロンの愛が冷め自分を捨てる去る未来が見えてしまった彼女は、アポロンの愛を拒んだ。怒ったアポロンは驚くべき行為に出る。予言能力は与えたまま、「彼女の予言をだれも信じない」ようにしてしまったのだ。未来を見通せながら、誰からも予言を信じてもらえない苦しみ。精神は異常をきたすことだろう。ここから生まれたのが「カサンドラ症候群」。それにしてもなんともむごいアポロンの仕打ち。

(ティエポロ「トロイアに入る木馬の行進」、イーヴリン・ド・モーガン「カサンドラ」)、「ベルヴェデーレのアポロン」)