Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

超人ザオタル(62)宿探し

2022.04.06 23:51

陽に照らされた薄茶色の乾いた道をひたすら歩いていく。

私はまるで風にでもなったような気がした。

遠目に道の傍らで座って目を閉じている若い男を見つけた。

近づくにつれて、それがアムシャだと分かった。


それはあのアムシャよりも若く見えた。

私がその横を通り過ぎようとするとき、アムシャは目を開けた。

そして私を見て微笑むと片手をそっと胸に当てた。

私も歩きながら目を合わせると、同じように手を胸に当ててうなずいた。


まるで昔から知っている親しい友人のような気がした。

そのまま言葉を交わすことなくアムシャの横を通り過ぎた。

私はまたひとり風のように歩いた。

青い空の下、大地に美しく描かれた道を。


こちらに向かってくる男女の二人連れが遠くに見えた。

それが誰だかすぐに分かった。

男は私を見つけて、何か話したそうな顔をしていた。

私はその男と話をする気はなかった。


その男がこれから体験することを尊重したかったからだ。

私は前だけを向いて、ふたりの脇を通り過ぎた。

男は私に話しかけようとしたが、あきらめたようだ。

若い女も不思議そうな顔で私を見ていた。


道の分岐が多くなってきた。

それにつれて人も多くなった。

一緒に歩く者や分岐で分かれる者が幾筋もの時の流れのようだ。

立ち止まる者や道を戻る者、それを横目に私は町を目指した。


町に到着すると、そこは行き交う人々であふれていた。

私は今夜の宿を探した。

一軒の宿を見つけて扉を開けた。

薄暗く狭い帳場に若い痩せた男がいて、威勢よくいらっしゃいと声をあげた。


「今夜泊まりたいのだが部屋はあるだろうか」

私がそう尋ねると、困ったような顔をした。

「ええ、部屋はありますが、その、失礼ですがお金はお持ちでしょうか」

男はそう言って、私を値踏みするように眺めた。


「残念ながら、金は持ってない。

なに、立派な部屋でなくてもいい。

どこか横になれる場所を貸してくれるだけで」

男の私を見る目で、これは望み薄だなと感じた。


「申し訳ないのですが、うちも商売でして、

お支払いできない方をお泊めすることはちょっと」

言い方は丁寧だったが、呆れたような口ぶりだった。

まあ、そうだろう。


「いや、手間を取らせて申し訳ない」

私はそう言って宿を出ようとした。

その時、小綺麗な身なりの若い女が宿に入ってきた。

私はぶつかりそうになって、失礼と声をかけた。


女ははっとしたように私を見た。

私はそのまま外に出て、別の宿はないか通りを見回した。

だが、どれが宿なのかさえよく分からない。

また町を出て、道の傍らで横になるしかないかと腕を組んだ。


「あの、よかったらうちの宿に泊まっていきませんか」

そう声をかけられたので振り返ると、先程、宿ですれ違った女だった。

「ええ、実は先程、その、宿泊を断れましてね。

恥ずかしながら、お金の持ち合わせがないもので」


「はい、それは分かっています。

その宿の主人は私でして、もちろん宿代はいりません」

そう言いながら私を見て微笑んだ。

「それはありがたいお申し出です。


この町も久しぶりで困っていたところなのです。

それではお世話になります」

私はそう言って、胸に手を当てた。

女主人はそれを聞いて、ほっとしたような表情をした。