『W旦那+(プラス)』第52~53話 (アトラクション)三代目妄想劇場
アトラクションの入り口まで来て、
「じゃ、入るぞ」と隣にいる隆二の目を見ると、薄っすら目に涙をためている。
臣「えっ?泣いてんの?」
隆二「泣いてなんかいねーよ…」
臣(うそ⁉︎どんだけ?こいつ…)
ぷっと吹き出す。
臣「大丈夫だって!はい、行くよ」
中へ入って行く臣と隆二。
入った瞬間から隆二は目を瞑って、臣の背中に張り付いてくる。
臣「ふ…ふざけんなよ!りゅ…いや、
隆子!」
臣「しがみついてちゃ歩きにくいだろ!」
隆二「み…見捨てないって指切ったじゃん…」
臣「マジか?…お前…」
病院の廊下で、少し先を行く剛典と理愛を見失わないようについて行く臣と隆二。
途中お化け役のアクターが驚かせようとして臣の行く手を阻むが、まったく動じず、
しっかりした足取りで前に進んでいく。
それにしても、背中に張り付く隆二が気になる。
臣「ちゃんと目を開けてんのか?」
隆二「み…見てるよ」
臣「今、何が出てきた?」
隆二「えっ?…なんかね、血がドバーッて出たやつ…」
臣(血なんか出てないわ…)
臣「見てねーだろ?」
隆二「え…バレた?」
臣「お前さぁ…普通背中の方が気持ち悪くなんない?」
隆二「せ…背中?」
臣「お前のすぐ後にサダコっぽいのが張り付いてるよ」
隆二「わぁーっ‼︎うそっ…やめてぇ‼︎」
臣「あ!バカッ!デカい声出すな‼︎聞こえるだろ!」
隆二の口を塞ごうとしたが、すかさず臣の前に回り込み、正面から抱きついてくる。
臣「おまっ…これじゃ余計歩きにくいだろ」
隆二「ムリムリムリ…もう泣きそう…
おれ…」
臣「……」
呆れた顔をして天を仰ぐ臣。
臣「リタイア出口すぐそこだけど…
出るか?」
隆二「そ…それもできない…」
臣「だろ?俺らがここに誘導しといて、がんちゃん見捨てちゃいけないよな」
隆二「う…ん」
すぐ近くに3体ほどアクターがスタンばっているが、
(なんだ、イチャつきにきたカップルか)
とでも思っているようで、それ以上は何も仕掛けてこない。
その様子を見て臣が、「大丈夫、近くにいるけど何もしてこないって…このままくっついてていいから…先行くよ」
「う…ん」
隆二は臣の胸にすりすりと顔を引っ付けて、臣のTシャツで涙を拭いている。
臣(やべっ…こいつ…)
臣(俺の方が違う意味で興奮してくるじゃねーかよ…)
しっかり抱き合ったまま、前へ進み出す。
アクター達もすっかりヤル気を無くしたように、ベッタリ寄り添う二人には仕掛けてこない。
前を行く剛典と理愛は引っ付いてはいるが、特に悲鳴を上げることもなく、順調に進んで行く。
遠くの方で何人かの泣き叫ぶ声がする。
その度に、臣の腕の中でビクッとする隆二。
手術室と書かれた部屋のドアを開け、中に入って行く剛典と理愛。
顔を指すことだけは避けたかったが、ちょうど2組の間を行く、見ず知らずのカップルも手術室に入っていったので、そのすぐ後ろからついていった。
中に入ると、薄暗い手術室で手術台に寝ていたアクターに驚かされ、先に入ったカップルが腰を抜かしている。
臣(あれ?がんちゃん達はどこ行った?)
よく目を凝らし見ると、広い手術室の隅の暗がりで、抱き合っているのが見える。
臣は隆二の耳元で、
「目、瞑ってないで部屋の隅見てみろよ」
隆二「えっ⁉︎どうかしたの?」
臣「二人…キスしてるよ」
慌てて目を開ける隆二。
このアトラクションに入ってから、ずっと目を閉じていたので、視界がボヤけてすぐに状況がわからない。
隆二「見えない」
臣「もう少し近くに行ってみよ」
剛典達から3m位離れた所に、大きめのロッカーが置いてあり、その陰まで足音を立てないで移動する。
臣「声出すなよ」
隆二「ん…」
隆二「もう血を吸われてたらどうする?」
臣「黙って…血を吸う音かよ、これ…」
理愛は剛典の首に手を回し、剛典も理愛の腰を抱いていて、音を立ててキスをしている。
「ちゅっ」と大きな音がして、一旦離れる二人。
剛典「あれからずっと会いたかったよ」
理愛「私も…」
隆二(理愛ちゃん⁉︎)
剛典「ここなら人目を気にしないですむね」
理愛「はい」
「理愛ちゃん…」と言ってまた口づけする二人。
よーく目を凝らして見ると、二人の頬の辺りが激しく動いているのがわかる。
同時に大きな音も聞こえる。
「ちゅ…ちゅっ…」と、聞いてる方が恥ずかしくなるような音を繰り返し、微かに理愛の吐息も聞こえてくる。
隆二「え?ディープキ…」
後ろから隆二の口を押さえる臣。
「お前…いちいち声出すなよ」
片手で隆二の口を押さえ、もう片方の手は隆二の胸辺りに触れている。
隆二の鼓動が異常に早い…
臣「スゲ…ドキドキしてる」
隆二「っせーな!こえーんだよ」
臣は気にもせず、隆二に触れたままで、理愛達を見ている。
End