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富士の高嶺から見渡せば

Apple TV「反日ドラマ」は歴史の前提から間違い

2022.04.09 16:03

『パチンコ』というネットドラマが韓国をはじめ欧米でも話題を呼んでいるという。3月25日からApple TVというプラットフォームを通じて配信され、第1話はYouTubeで無料公開されている。その第1話の冒頭には以下のような英語とハングルの字幕が現れる。

「日本統治時代に多くの韓国人が生計を失い、故郷を後に外国の土地へと去った。それにも関わらず韓国人は耐えた。ここに何世代もわたって耐え抜いた一つの家族がいる。」

つまり、日本による併合によって「祖国を追われ、海外に移民をせざるを得なかった」在米韓国人や在日韓国人の4世代にわたる物語、フィクションということらしい。

まず指摘しなければいけないのは、この作り話(フィクション)の前提自体が、真実とはほど遠い虚構(フィクション)だということだ。多くの韓国人がアメリカに移住したのは、日本併合前の1905年以前のことであり、日本が外交権を掌握するとアメリカへの移民は規制された。その後アメリカ移民が再開されたのは朝鮮戦争後の1953年以降のことである。つまり日本統治時代には、「祖国を追われアメリカに移住した韓国人」は一人もいなかったという事実である。

Wikipedia「韓国系アメリカ人」

文在寅大統領も2020年8月15日光復節の演説で「我々は、大韓帝国時代に労働移民としてハワイやメキシコに渡り、そのまま戻ってこられずに祖国を失ってしまった同胞を記憶している。祖国は同胞を守れなかった」と述べ、移民したのは「大韓帝国」時代だったとし、日本統治時代に移民がいたとはひと言も言及していない。

光復節第75周年文在寅大統領演説>

ドラマの第1話を見るかぎり、話の展開は1920年代の朝鮮と1990年頃の大阪を行き来し、在日韓国人が経営するパチンコ店が舞台設定の一つになっているようだが、大阪の在日朝鮮・韓国人の多くは、1948年の李承晩が起した「4.3済州島事件」をきっかけに日本に密航した人々が多いというのは、よく知られた事実だ。つまり、ここでも日本の朝鮮統治は関係ないのである。

そもそも日本統治時代に日本に渡った多くの朝鮮人は自分の意志で豊かな収入を求めて日本に赴いた人々であり、「日本統治によって生計を絶たれ、強制的に日本に追いやられた」人々ではけっしてない。

韓国人は日本統治時代を「日帝強占期」と呼び、日本がらみのことは「強制労働」や「強制徴用」、「強制連行」など何にでも「強制」をつける癖があり、日本から「強制」されることがどれだけ好きなのか、と思うのだが、仮に、労働者や慰安婦が「強制的に連行・拉致」され、「強制的に土地を奪われた」人々が「強制的に国外に追いやられ」移民せざるを得なかった、ということが万が一にもあったと仮定して、これほどの理不尽に対しても、韓国人はみな抵抗も抗議もせず、唯々諾々と「命令」に従う人々だったのか。そんなに腰抜けで、意気地なしで、臆病で、怯懦(きょうだ)の人々ばっかりだったというのか。自分たちの父祖たちが、そういわれることに恥ずかしいとは思わないのだろうか?いま現在も、「強制」を主張する人たちは、そう言われたとしても否定できず、甘んじて認めざるをえない、同じく臆病で怯懦な人々なのである。

ドラマ「パチンコ」の中にも、日本統治時代の魚市場のシーンとして、サーベルをぶら下げた黒い制服の日本の警官が登場するシーンがある。市場の人々は警官の姿を見ただけで、みな押し黙って下を向き、おずおずと道を空けるだけ。その2人の警官に呼び止められ、漁民か市場の人か、1人の男が連行されるシーンが出てくる。因みにこの警官は、流暢な韓国語をしゃべるので、朝鮮人警官かもしれない。

しかし、まわりの大勢の人々は、男が連行されるのをただ黙って見送るだけで、誰も文句を言わず、たった2人の警官に対してさえ、抵抗したり抗議したりする人間は一人もいない。まさに、臆病で懦弱な奴隷の姿そのもので、こうしたシーンを見ても韓国人はたぶん恥ずかしいとは思わないのだろう。なぜなら、日本は何もかも「強制」するから、それに抵抗してもムダだからだ。

自分の運命を自分の力で切り開くこともできず、時代に流され、強い力には抵抗せずに追随し、難局を乗り越えるために自らの頭で方法を考え、工夫したり、努力したりすることもせず、まるでドラマ「パチンコ」の冒頭に現れる言葉のとおり、「韓国人はただ耐える」だけで、「何世代もわたって(何の努力もせず)ただ耐え抜く」だけの愚鈍な人々だったのである。

しかし、それはドラマに出てくる在日韓国人たちが、自らの才覚でもってパチンコ業界で財をなし、豊かに暮らしていることと矛盾するのではないか。「ただ耐えるだけ」で、時間をやり過ごせばチャンスが転がってくるとでもいうのだろうか?仮に「土地も生計の手段も奪われ、強制的に日本に移住させられた」として、「ただ耐えるため」だけに、なぜ、そんな恨み重なる地でそのまま暮らし、苦労に耐えなければならなかったのか?

しかし、実際には、戦後の混乱の中で多くの在日朝鮮・韓国人たちは、闇市から始まり、法の網をかいくぐり、知恵を働かせて必死に格闘したから、今の成功があったのである。戦前・戦後を通じて、多くの韓国人が密航を図ってまで日本に渡ったのは、そこに自由があり、金儲けのための多くのチャンスがあったからだ。そうした事実は、冷静になって客観的に考えれば誰にも理解できることだ。

日本統治時代こそ、朝鮮半島に生きる人々に新たな機会が保障され、様々な職業が生まれ、絶対的な貧困から抜け出すことができたのである。在日朝鮮人は強制的に日本に連れて来られた訳ではなく、自分たちの意志で日本に渡ったのであり、多くの人が密航をしてでも日本に行きたがった。なぜか。日本の行って帰ってきた人たちは、みな身なりも綺麗になり、たくさんのお金を稼いで帰ってきたからだ。日本は、彼らにとって希望の地だったのである。

日本が併合し、韓国を統治する以前の李氏朝鮮の時代は、厳しい身分制度にもとで「中人(チュンイン)・常人(サンイン)・賎民(チョンミン)」と呼ばれた人々は、その上に立つ「両班(ヤンバン)」によって過酷な搾取の対象となり、「奴婢(ノピ)・白丁(ペクチョン)」と呼ばれた賎民は、奴隷として売買の対象となり、名前も戸籍もなく、字を習うことも許されなかった。時代によって変遷があるが、そうした賎民が人口の3割から5割を占めたといわれる。賎民に名前と戸籍が与えられ、教育を受ける権利が与えられたのは、1910年以降、日本統治時代になってからだ。

それから9年後、1919年3月1日、元大韓帝国皇帝・高宗の死をきっかけに「3.1独立運動」が起き、その翌月、上海で「臨時政府」が作られ、そのとき発布された「大韓民国臨時憲章」には、第1条で「大韓民国は民主共和制とすること」とし、第3条では「大韓民国の人民は男女貴賤及び貧富と階級が無く一切平等である」としている。しかし、わずか10年前には厳しい身分制度の中を生き、迫害・搾取を受けた恨みを忘れられなかった人々が大半だったはずであり、人民が主体の民主共和制や、格差・階級のない平等社会など、自分たちの手ではついぞ経験したことのない人々だったのである。上海という異国の地で、絵に描いたような理想論をぶち上げても、当時、朝鮮半島にいる人々には響くはずもなく、日本というすぐ目の前にあるバラ色の未来のほうが遙かに魅惑的だったはずで、実際に日本でそうした果実を手にした人は多かったはずだ。そうでなかったら、日本統治時代に自らの意志で200万人もの朝鮮半島出身者が日本に渡った理由を見つけることは不可能だ。

Apple TVのドラマ「パチンコ」は、もともとは韓国系アメリカ人の女性作家でジャーナリストだというイ・ミンジンが書いた小説「Pachinko」が原作となっている。彼女の祖先がいつ米国に渡ったのかは知らないが、韓国人が米国に渡った経緯は、前述のとおり、日本統治時代以前と以後のことで、「日本の統治によって生計を奪われ、移民せざるを得なかった」のではないことは、自分の祖先のことを調べればすぐ分かることだ。イ・ミンジン自身は、旦那の仕事の関係で3年間、日本に暮らしたことがあるといい、その中で、パチンコ業を営む在日朝鮮・韓国人の存在を知ったのであろうが、その在日朝鮮・韓国人が日本統治時代に「強制的に日本に連行」され、戦後も日本で差別や迫害を受けたというのは、韓国の教科書が教える完全にステレオタイプの偏った見方であり、ジャーナリストを自称しながら、実際には自分の足で在日朝鮮・韓国人の実態を直接取材したことはないであろうことが分かる。

日本の「植民地支配」によって、「土地を奪われ、生計の道を絶たれ、名前を奪われ、ハングルを奪われ、資源を奪われた」と思い込むことで、あとは想像力を働かせるだけで、「日本の残虐さ」などをいかようにも描くことができる。たぶん、そこには、韓国人が強制的に連行されながら、なぜ抵抗も反逆もしなかったのか、という素朴な疑問について、自らの頭で考えることもなく、「日本の植民地支配は強制的で暴虐的だった」という固定的な考えに凝り固まり、それ以外の発想は許されない、という貧弱な考え方があるのであろう。

イ・ミンジンの小説の冒頭に「歴史が私たちを台無しにしたが、それでも構わない』という言葉が出てくる。歴史が韓国人を台無しにしたとはどういう意味か。韓国人はいつの時代にも、歴史の犠牲者であり被害者に甘んじる存在であり、歴史を自ら動かし、歴史の主体者になるという発想はないのかもしれない。

たとえば韓国人は日本統治時代について「七奪」という否定的な言葉で総括する。「七奪」とは、主権、国王、人命、国語、土地、姓名、資源を奪ったことだという。主権について言えば、清の従属国で主権のなかった朝鮮を独立させたのは日本である(主権)。李王家を存続させるために莫大な王室費を日本が支払った一方、李王家最後の末裔・李垠(イ・ウン)の帰国を阻止し、王室の復活を阻止したのは李承晩である(国王)。日本統治時代に人口と米の生産量は2倍に増え、平均寿命は25歳から45歳に伸びた(人命)。ハングルを教育に取り入れ、綴り法を確立したのは日本である(国語)。荒れ地を開拓し、土地を増やしたの日本統治時代であり、禿げ山に1億9000万本もの植林をしたのは日本である(土地)。前述のとおり賎民階級に姓名を与えたのは日本であり、創氏改名は日本名を強制したわけではなく、姓とは別に「氏」として家族名を作ることだった(姓名)。そもそも朝鮮に利用できるような資源はなく、鉱物資源の開発を進めたのは日本統治時代である(資源)。つまり、「七奪」でははく、「七恩」あるいは「七大貢献」というほうが真実に近い。歴史とは、それだけ多面的であり、価値評価も多様で重層的なのである。

小説「パチンコ」は、ニューヨークタイムズがベストセラーとしてもてはやした作品で、それを原作にしたドラマが制作費100億円をかけて作られ、Apple TVという巨大プラットフォームで配信されるのは、歴史の真実がどうであったかは関係なく、反日小説や反日ドラマがそれだけ需要があり、ビジネスとして成り立っていることを示す証拠なのだ。現にYoutubeの第1話を見た人は、公開から半月後の4月9日現在、全世界1300万人にのぼる。つまり、ビジネス・金儲けのためだったら、歴史の事実などどうでもよく、いくらでも虚構を積み上げることができる、ということなのだ。Apple TVやイ・ミンジンにとって、金儲けができることは楽しいことかもしれないが、そんな歴史的事実と明らかに違う作品を残すことに内心、忸怩(じくじ)たるものはないのだろうか?