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マヤ

『W旦那+(プラス)』第55~56話 (社長宅)三代目妄想劇場

2017.11.15 05:40

結局その後、臣と隆二は剛典達を完全に見失ってしまい、リタイア出口から退場した。



小一時間ほど何も語らず、外のベンチに座ったままでいる。



突然臣のスマホが鳴り、ハッとする二人。



がんちゃんから、理愛を無事に社長宅へ送り届けたと報告のメールが入った。



隆二「なにやってんの?俺たち…」



臣「……」



隆二「どういうつもりだよ」



臣「お前だって…」



隆二「どうすんの?理愛ちゃんのこと」



しばらく考え込んでいた臣が、



「手っ取り早い方法がある」と言い、隆二の腕を掴み、



「社長の家に行くぞ」と歩き出した。






社長の自宅に行くと、妻が出迎えた。



「あら?お揃いで珍しい」



隆二「夜分にすみません」



臣「理愛、部屋にいます?」



「え、お風呂も済ませて休んでるんじゃないかしら?」



「何か急用?」



臣「はい…すぐ済みますから」



一礼して、廊下の突き当たりにあるゲストルームへと足早に進んで行く。



首を傾げて二人の後ろ姿を見ている妻に、

「あ…もう休んでて下さいね」と臣が声をかけた。



隆二「何する気?」



臣「俺に任せとけって」



ゲストルームのドアをノックする臣。



臣「理愛?起きてる?」



理愛「あ…はい、旦那さま」



臣「中に入ってもいい?」



理愛「え?あ…少しお待ち下さい。」



顔を見合わせる臣と隆二。



隆二「臣…手荒な真似だけは…」



臣「わかってるって」



ゆっくりドアが開き、白い光と共に理愛が姿を見せた。



冷たい空気が顔に触れる。



理愛「隆二さんもご一緒で…」



シルクのナイトウェアを着て、上からカーディガンを羽織っている。



心なしか、少し慌てたような感じがした。



臣「入るよ」



隆二「うわっ…さむ…」



見ると窓が開きレースのカーテンが風に揺れている。



隆二「理愛ちゃん、寒くない?」



理愛「あっ…お風呂上がりで少し空気を入れ替えてました」



室温は10°前後だろうか?



背中がゾクゾクする。



音も立てずに窓を閉める理愛。



カーテンに添えた手は、透き通るように白い。



臣「理愛、ベッドに座って」



臣は近くにあった椅子を二つ並べる。



理愛はベッドに腰掛け、すぐ前に臣と隆二も座った。



隆二「臣…」



臣「お前は黙ってろ」



隆二「……」



臣は肩に下げていたバッグのチャックを開けながら、



臣「理愛、今日がんちゃんと怖ーいアトラクションに行ったんだって?」



理愛「え?…はい」



臣「知らないと思うけど、ああいう作り物のアトラクションでも、稀に実際のゴーストが人間に取り憑いて、家までついてくることもあるんだ」



理愛「……」



臣はクロスと聖水が入った瓶を取り出す。



理愛の細い眉が、少し動いたように見えた。



隆二「臣…ちょっとまっ…」



臣「黙ってろ」



きっ…と、キツい目をして隆二を見る。



臣「だからね。日本で言うお祓(はら)いの意味を込めて、ちょっとおまじないするよ」



理愛「は…い」



隆二(いきなり?)



臣は「これ持ってろ」と、隆二に聖水の瓶を持たせる。



「理愛は目を瞑(つむ)ってて」臣はそう言うと、理愛の額になんの躊躇もせず、大きなクロスを押し付ける。



しばらく沈黙があった。



何も変化はない。



理愛「あの…?」



臣「まだ目を開けちゃダメだよ」



臣は隆二の手から聖水の瓶をひったくるようにして蓋を開ける。



隆二(クロスはクリアしても、聖水は…)



隆二が目の前でしっかりと瞼を閉じている理愛の顔を見る。



隆二(この場で灰になるとか、マジで無理…)



「臣!ちょっと待って…」



隆二が臣の手を掴もうとすると、数秒早く臣が理愛の美しい手に聖水を垂らした。




End