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マヤ

『W旦那+(プラス)』第58~59話 (社長宅前)三代目妄想劇場

2017.11.15 05:50

「隆二!待てよ!」



臣は手を伸ばして隆二のショルダーを掴む。



隆二は立ち止まったまま、こちらを振り返らずにいる。



「臣…惚れた女性相手によくあんな大胆な行動とれるよね…」



「結論は早い方がいいだろ?」



「そういうとこ…変わんないよね」



「……」



「何もなかったから良かったけど、下手すりゃ人権問題だよ。」



「また…大袈裟なんだよ」



隆二は、くるりと振り返り、臣の顔を見て、



「元はと言えば、俺が変な夢の話するからだよね…臣まで巻き込んで悪かったね」



「なに?もう探偵ごっこやめんの?」



「彼女はヴァンパイアじゃない。はっきり結論も出たし…」



「…あの暗号みたいなのは?」



「タッチミスしたんだよ、きっと…」



「二晚とも?」



「携帯ゲームにでもハマってんじゃない?」



臣は答えない。



理愛に限ってそんなことはあり得ない。



隆二もそれは十分にわかっている。



「俺ら二人共精気を無くしてたのは?どう説明すんの?」



「たまたま疲れが出たんだろ?」



じっと隆二の目を見ていた臣は、



「ちょっと付き合え」



隆二のショルダーを持ち、引っ張って行く。



「また…どこ行く気だよ」



社長の邸宅横の路地を、庭がある方へと入って行く。



「この上不法侵入とかやめてよ、臣…」



「しっ!」臣が人差し指を立てる。



庭に植えられた木々の間から、理愛のいるゲストルームが見える。



まだ部屋の電気はついていて、レースカーテンの向こうに、ベッドに腰掛けたままの理愛が見える。



「理…」隆二の口を塞ぐ臣。



「隆二、いい加減にしろよ」



臣に注意され、隆二は自分で自分の口を押さえる。



理愛はしきりに、手にしたスマホを弄っている。



「がんちゃんにメールしてんじゃない?」



臣は何も言わず、剛典にラインを送る。



「理愛ちゃん、スマホのタッチめちゃ早い…」



「これ見てみ!」臣が自分のスマホを隆二に見せる。



剛典とのラインのやりとりが画面に出ていて、理愛とはアドレス交換していない…と

返信が表示されている。



隆二「がんちゃんが嘘言ってるとも思えないし…」



臣「じゃあ誰と?」



隆二「やっぱゲーム…」



臣「アホか」



急に冷たい風が吹き始め、月が雲に隠れた。



隆二「さむっ…」



臣は、すぐに隆二の肩を持ち、ゆっくり撫り始める。



何か言おうとする隆二を臣が止めた。



理愛がカーテンを開け、窓を全開にする。



暗闇にゲストルームが明るく浮かんで見える。



次の瞬間、どこからともなく黒い煙のような物がただよってきて、ゲストルームの窓付近で真っ黒な塊となった。



理愛は何も言わず、その塊をじっと見つめている。



(なんだ?あれ…)



次の瞬間、その塊は細い帯状になってゲストルームの中へ吸い込まれていった。



同時に素早く窓とカーテンを閉める理愛。



ゲストルームの照明も消え、真っ暗になる。



二人が言葉を失い、その場で固まっていると、冷たい風もピタッと収まり、月明かりが照らし始めた。



「おみ…見た?今の…」



「ああ…」



臣が続ける。



「やっぱ…ただ事じゃないよ…」





End