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かつての新生フラッグシップ『和夢 彩』

2022.04.12 02:01

このシリーズも第3弾となりました。引き続き、時は介護ベッド戦国時代。パラマウント、プラッツといったメーカーが、新たな介護ベッドを模索する中、老舗シーホネンスが、もうほかの追随は許さんと、渾身の一作として放ったのが、『和夢 彩』(以下『彩』)です。

『彩』は、『純』譲りの堅牢なフレームを継承しながらも、スタイリッシュな直線的デザインを採用、オール樹脂製のボトムは当時まだ珍しく、『純』までの鉄製ボトムから大きく舵を切りました。全体的に完成度が高く、現在でも保険対応機種としてレギュラーで動いています。


発表当時、垂直昇降を備えた主な介護ベッドはパラマウントの『楽匠S』のみ。シーホネンスはそこに着目し、『彩』にも垂直昇降を採用。上昇時の最高床高は、従来品比5.5cm増の67.5cm。当時としては業界最高レベルの高さを誇り、介護者の負担軽減に寄与しました。

更に業界初のヘッドレスト機能で「頸部前屈姿勢」を簡便に設定可能。利用者の目線が前を向くので、視界が格段に広がり、仙骨にかかる圧を軽減。利用者の食事や口腔ケアの際には誤嚥防止・快適な姿勢を作ることができます。

手元スイッチは、当機を象徴するかのようなスクエアデザイン。一定時間操作しないと誤作動防止のため簡易ロックがかかります。また認知症対応策として、背部に強制キーロック機能を装備。安全対策にも抜かりはありません。

アクチュエータも高性能で、背上げや昇降スピードが適度に早く、静かで力強い動きを実現。配線回路も中央部分に設置したため、ベッド配置に制限がなく、垂直昇降も相まって、狭い空間にも配置しやすくなりました。

ただ惜しいかな、組み立てに際して、頭側のアクセサリーフレームの組み難さ、ボトム固定に工具が必要(付属していますが)、ボード固定がノブネジ等、ツメの甘さが残念でした。


ですがこの反省点は、次世代ベッドの『emi』に活かされ、更に完成度の高い介護ベッドとして世に送り出されることとなるのです。『彩』は間違いなく、介護ベッドのスタンダード路線を築き、後のベッドに多大な影響を与えたと言えるでしょう。

文責 佐野 亘