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真冬のバカンス-2-

2021.03.26 12:01

バンコク市内での暇潰しを終え、スワンナブームへ向かう。保安検査を抜け、数キロは歩いているのではないかとすら思うバカ長いコンコースを歩き搭乗ゲートへ。普段はファイナルでのんびりボーディングすることの多い自分だがこの日ばかりは一番乗りを狙う。

ボーイング747、そのアッパーデッキ。タイ航空の場合そこはビジネスクラスが配置される。

ともすればそれなりの金額が“普通は”必要なところ、バンコク⇔プーケット間については精々+1万円くらいだったかで乗ることができる。

風前の灯で辛うじて残る旅客型747のその一角。今まで4発機そのものに縁のなかった私にとってその大型機の2階席は夢の存在だった。隠し切れぬ喜びと共にアッパーデッキへの階段を上がり、屋根裏部屋のような2階席へ。リュックサックですら入らぬ小さな収納棚。バリアフリーなどという立派なものはそこには一切存在しない前時代的で狭苦しい空間はプライベートなど存在しない機内にあって却って安心感をもたらす。

プーケットまでは2時間もかからぬ短い空の旅。人生初めてのアッパーデッキ、それどころか初のB747を満喫するにはあまりにも駆け足な時間ではあるものの、かつて高嶺の花であったものが大衆に降りてきた頃の航空旅行のシグネチャーであった時の面影を感じるその2時間は今後も自分の記憶に深く残るような気がしている。

空港に隣接するホテルに陣を張り、翌朝パンを齧りながらビーチへ向かう。2月とは思えぬ強い日の光と活動を始める蝉の音に頭が混乱する。

空港ランウェイエンドにあるそのビーチは当然ながらその真上を飛行機が通過する。

カリブ海のプリンセスジュリアナがもっとも有名なところだが日本にほど近いプーケットでも楽しむことができる。しかも、昨日乗ったとおりバンコクとプーケットの間をB747が日に数便往復する。今回の遠征の目当てはこれだった。

但しプーケット空港でのジェネリックプリンセスジュリアナを実現するには一つ問題がある。風向きに恵まれなければビーチ上空から滑走路へアプローチすることが無いということ。冬時期であれば可能性が高いと聞くがそれでも空振りで帰る例も調べる限りではそれなりに数があった。

と、いうことでプーケット滞在を3泊4日も設定して3回ものチャンスを用意して万全を図ったところ…

初日で目的達成。昼以降は陸側で撮影するもこれが毎回肝心所で曇るなどして上手くいかず、ロシアからの747で特別塗装が来ることなど願いながら残りを消化していくことに。

折角のプーケット、空港から離れて観光するのもやぶさかではないものの…朝ビーチをお散歩してホテルに帰って2度寝して自転車借りてまた撮影して昼寝して、涼しくなった夜に近所の小さな繁華街に出て行って晩飯を食べて寝る。この自堕落生活があまりにも心地良く、最後の最後まで空港近辺から離れることなく3泊を過ごした。

チルだかデトックスだか何だか知らないが兎角そういった癒しが持て囃される昨今。休みだろうがなんだろうが意識しても我慢できずに忙しなく激しく動き回る人種に属する私には縁遠い行為だったが今回プーケットの地で図らずも実現する。他にやれることがある状況にあって再びこんなことするかと言えば恐らくNoだがこのバカンスが最高に心地良かったことは認めざるを得ない。

そんなことを考えながら迎えた最終夜。尿意に起こされついでにふとメールを確認すると不穏な通知が一通。

“(帰国便)が欠航となりました”

あらゆる思考が暖気なしで一気にレブまでブン回り忙しい現代社会へ引き戻されていく。

結局スケジュールを変えることなく、当初の航空券と費用ほとんど変わらずに帰るチケットを見出し、表向きは何もなかったような顔をして平然と帰国して何事もなかったかのように社会に戻っていった。

ウィルス騒ぎは収まるところを知らず日毎にそのパニックはエスカレートし、遂に国際移動はほぼ完全に停止することに。必然的に航空業界の収益は困窮し飛ぶことも出来ない大型機は良くて保管、引退する機体も数多出ることとなった。

今回プーケット遠征の目当てであったタイ航空B747も早期退役に。

情勢・被写体動静、全てがギリギリのタイミングで今回の遠征が実現完遂出来た幸運に感謝したい。