Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

とある冒険者の手記

A.焦る気持ち

2022.04.15 11:44

義姉のガウラがサベネア島から帰還し、頼まれたクリスタルを渡したアリスは、ナップルームで一人頭を抱えていた。

ヘリオの強くなっていくエーテルが、ガウラにも影響を及ぼしている。

気がついてはいたが、ガウラ本人から直接聞いてしまえば、気が気ではなかった。

受けるエーテルをクリスタルを使って制御するため、ネックレスを作り、ヘリオにも渡してくれと言われた。

だが、日に日に増していくヘリオのエーテルを視ていると、そのネックレスもいつまで保つか分からない。


「はぁ……考える事が増えたな」


頭をガシガシと乱暴に掻き、溜め息を吐く。

ヘリオのエーテルが何処まで増えるかも分からない。

これがもし、留まることを知らず、増え続けるものであれば、ガウラの体質を変える方法を見つけるか、ネックレスよりももっと効果の強い、エーテルを制御出来る物を作るしか無い。


「調べるにしても、ヌーメノン大書院で本を借りてきてもらう事が出来なくなったしなぁ……」


行動を制限されてしまっている今、個人的に調べていた記憶の複写の方法も、魔力と武力の枷の事も、八方塞がりになってしまっている。


「あっー!!くっそ!!これじゃ、母さんの時と同じじゃないかっ!!」


ダンっ!とテーブルに拳を叩き付ける。

看病しか出来なかった自分の過去。

悪くなっていく状況を変えられなかった無力感。

そして、笑顔で冷たくなっていった母親の体温の感覚が思い出された。


「なんとかしなきゃ……っ」


アリスは奥歯を強く噛み締めた。