年々神戸が好きになっていっているという話
春服を買いに三ノ宮へ出かける。時間があったので先日読んだ「漱石全集を買った日」に出てきた三ノ宮駅前古書店へ寄る。ずっと行きたい場所にブックマークしていて、実際店の前も何度も通ったと思うのだけど中に入るのは初めて。店前の棚には雑貨店のガイドブックなど若い女性向けの本が並んでいたり、絵本が面で置いてあったりして入りやすい。入ってすぐ右手には暮らしや料理に関する本、その奥には演芸やアイドルなどのカルチャー本。左手には文庫(主に小説)、その奥には歴史、さらに奥には思想。文系分野の本が請求記号順に固めておいてあって整然としている。そして三ノ宮という立地だからか話題の本が結構あるし、それがちゃんと面で陳列してある。沢村貞子さんの献立手帖、もう何度も借りては読めずを繰り返してるし買ってしまおうかと思うもいやいや積読あるしと我慢する。
滞在時間10分程度にもかかわらず読みたかった本がたくさん見つかった。出かける前に、家に帰る前に、ちょっと寄ろうかと思える、三宮駅前という立地ならではの古本屋さんだと思う。
地下鉄で県庁前へ。前から行きたかった中華料理杏杏へ。お店を仕切るおかみさん、お母さん、お父さん。店内はほぼ満席で、それぞれがそれぞれへ怒号を飛ばしながら料理をさばく。カウンター越しにそれを目の前で見ている客たち。隣に座っていた常連らしきおじいさんはさっと中華粥を召し上がりさっと店を出る。反対の隣に座っていた若いカップルも食べ終えるなりつり銭のでないよう現金を事前に用意してさっと席を立つ(私学生の頃そんな配慮できなかったよ……えらい……)。殺伐とした空気だったが心地よいと思う。それはお店の人も客も、その場にいる人々のことを各々考えて行動していて、それがかっちりと合っていたからだと思う。システムではなく人がその場を動かしていた。私も黙々と目の前の中華粥と焼きそばをいただく。焼きそばは油で揚げた(焼いた?)パリパリのかたい麺にあんかけがかかったもの。おかゆもほんのりコーンの味がして美味しかった。
隣のエメラルドブックスへ寄ろうとするもグーグルマップで見たのよりも開店時間が遅く寄れず。また今度。海側へ下りトアウエストへ。レトロビルに入るセレクトショップたち。細かな路地を歩きながら、神戸好きだなとしみじみ思う。とある服屋さんでは店員さんとお客さんが物件の話をしていた。ファッションビルの店舗ではまず見ない光景。路面店のいいところ。好みの服には出会えず大丸前のビュルデサボンまで下り白いシャツを一着買う。丸い襟でかわいい。大切に、できれば10年後も着ていたいと思う。
センター街へ上がりジュンク堂内のナガサワ文具店へ。店内では絶えずこの後行われるイベントのアナウンスがされており、マスキングテープを眺めていたら裏から万年筆売り場の店員さんの丁寧な説明が聞こえた。レジは行列。手帳売り場へ行くと、インスタの著名な手帳アカウントの方々が実際にデコレーションした手帳が展開されていて、レジは有名な店員さんだったのか、女性が次々と挨拶にやってきていた。なんという活気!文具という小さな単位の商売にこれだけの人数と手間暇がかけられていてそれが成功している光景に嬉しくなる。
エヘカソポでまたシャツを1着買う。今日は本当はカーディガンを買いたかったのだけれども、そもそもカーディガンが売っていなかった。季節はもう夏らしい。
少し時間があったので花隈へ足をのばし、「漱石全集を買った日」で知った古書ノーボへ。河井寛次郎の「六十年前の今」という函入り、しかも挿画が棟方志功という本があり気になったのだけれども、積読が……と思い買わず。少し後悔している。松本清張の京都ガイド本があったのでそちらを購入。
次にハニカムブックスへ。かたいものもやわらかいものも本当に好み。今日も読みたい本がたくさん見つかる。くどうれいん「わたしを空腹にしなほうがいい」岡崎武志「読書の腕前」のなんとか2冊に留める。訪れたのはまた2回目だけれども、絶対にまた来る、というか三宮へ出るときはここまで足をのばすことになるだろうと思う。
家に帰り子どもを連れて図書館へ。予約していた尾形亀之助「カステーラのような明るい夜」島田潤一郎「古くてあたらしい仕事」を受け取る。積読がまた増えた一日。